クリスマスの東京・新宿駅前は統一協会一色。40年前の統一協会と今を見つめる

40年前にも、統一協会は都心の街頭で熱心にクリスマス集会への勧誘をしていた。チラシを受け取って、そこに案内された貸しホールに行ってみると、数百ある席は若者たちでギッシリ。舞台にはクリスマスらしい飾り付けがあり、やがて登壇した講師が語ったクリスマスのメッセージは・・・

24日、新宿西口の路上で十数人の統一協会関係者が勧誘活動を行なっていた(写真:異端・カルト110番)

(以下、クリスチャン新聞編『ドキュメント異端』p47-48から再録)

1980年12月24日、東京・牛込公会堂で統一教会(新宿教会)の“クリスマスの集い”が行われ、会員、家族、求道者など約300人が集まった。イエス・キリストの贖いを否定する彼らが、どのように救い主の降誕を祝うのか不思議に思って行ってみたが、そこで語られた小山田秀生氏(統一教会会長代理)のクリスマス・メッセージは、「だれの子ともわからず生まれたイエス様は、義父ヨセフや周囲の冷たい目の中で育たなければならなかった。この悲しい心情を知って、我々はイエス様の成し遂げられなかった御旨を実現しなければならない」という内容だった。

「他人も救わなければならない。世界も救わなければならない。また神も救わなければならないのが我々である」(『みことば篇』141頁)と文鮮明氏のメッセージはエスカレートする。“忠実な”統一教会の伝道師はそれにこたえて、「私は『神様、天のお父様』と思うとなんと可哀想な方だろうと力が自然に出て来るのです。私の場合は先生(文鮮明)の写真でもにこにこしている写真ではなく、涙を流している写真をみると『ようしやらなければ』と思います。私は体が弱いのですが、『神様は本当に可哀相な方であり、お父様は可哀相だなあ』と思うと、弱い自分の肉体にむち打って家を飛び出して行きます」(『伝道ハンドブック・あかし篇』27頁)という“心情”になるのだ。

ここで注意しなければならないのは、彼らの、神に対する同情と同質の感情が、文鮮明氏に向けられていることである。

(以上、)

  • 文中の引用文献『みことば篇』は文鮮明氏の語録集、『伝道ハンドブック・あかし集』は統一協会員の証言集。
  • 同書では当時、世界基督教統一神霊協会が正式な略称と発表していた表記「統一教会」を使用している。

罪人の救いを成就した救い主イエス・キリスト降誕の物語さえ利用し、巧みな心理操作によってそこに「迫害されるメシア」のイメージを強調して刷り込むことによって、親や世間から理解されず批判される自分たちは「迫害されている」という心情に重ね合わせる。そうやって「かわいそうな神様を自分たちが救わなければならない」「我々はイエス様の成し遂げられなかった御旨を実現しなければならない」という壮大な使命感を鼓舞し、組織の意のままに操るマインドコントロールの心理テクニックが透けて見える。

参考記事:《メディアリテラシー3》「迫害されている」と同情を買う

 

現在の統一協会は教理が次々と変わり、食口(シック)と呼ばれる信者たちは追従するのが精一杯だという。再臨のメシアとして多くの信者に信仰された文鮮明(ムンソンミョン)氏は2012年9月3日、92歳でこの世を去った。イエス・キリストが失敗した使命を終末のこの時代に完成させるはずの救い主が人間として息絶えたことがそもそもの矛盾だといえる。

この時、文鮮明と妻、韓鶴子(ハンハクジャ)氏の実子で七男文亨進(ムンヒョンジン)氏が父から宗教部門の継承を受けたと主張した。つまり、「自分が統一協会の後継者だ」という意味だ。ところが、母親である鶴子氏は7男を教団から追放した。そして夫である文鮮明氏には「原罪(生まれながら罪がある)があった」と批判し、夫の権力のせいで自分の真のお母様としての摂理(教理)が隠されてきてしまった、と主張しはじめたのだ。統一協会がひっくり返るような問題発言だ。

「自分こそ王だ」、「いや、私こそ再臨主だ」という親子同士の紛争に発展した。追われた文亨進氏はアメリカでサンクチュアリ協会(正式名称=世界平和統一聖殿)を設立。文鮮明をメシアと崇め、自身は世界を統治する王だと主張し信者を増やしている。武装化を肯定しトランプ大統領を再選させるために悪の勢力(共産主義)と一戦交える覚悟があると宣言した。国内でも東京水道橋や国会議事堂周辺で過激な演説を続けている。https://cult110.info/unification-church-touitsukyoukai/sanctuary-20201207/

鶴子氏が事実上の2代目再臨のメシアになると韓国の聖地「清平(チョンピョン)」の関連施設に自分の石像をつくり、博物館も新設するなど権力を誇示。神格化はエスカレートする一方だという。

40年前、「迫害されるかわいそうなイエス様」と教え、代わりに再臨したメシア文鮮明氏を崇拝させた統一協会は、そのメシアのために印鑑や掛け軸、壺などを法外な価格で売りつけて資金を荒稼ぎした霊感商法事件を日本で引き起こした。「騙してでも相手を救うためなら正しいことなんだ」と信者たちは信仰という名のもとに活動に従事した。その被害額は底知れない。文鮮明というメシアによってカップルになった見ず知らずの信者は本物の救いを得るために合同結婚に参加した。信者たちはすべてを文鮮明という自称メシアに注ぎ込んだ。しかし、彼が死去すると妻、鶴子氏がそのメシアを否定してしまった。霊感商法における信者の命がけの犠牲も合同結婚も多額の献金ノルマも「メシアではない罪がある男のために」費やしたという結末である。今度は自分がメシアだという。

統一協会は混迷を極めている。教えによる矛盾、混乱、変わらぬ献金ノルマ、2世信者問題、40年前も今も信者は深刻な人権侵害にさらされているのだ。その家族も同様に被害者でもある。24日クリスマスイヴの新宿の街で「本物の福音をあなたに届けます」とマイク片手に弱々しく語る統一協会関係者の姿は喜びの知らせ=福音とは名ばかりで憔悴しきっているようにみえたのは私だけだろか。

関係者によれば「統一協会はコロナ感染防止で路傍活動を自粛するよう指示が出ている」という。統一協会の動きが一枚岩ではないことがよくわかるシーンだった。