イエスの誕生はあくまで教祖神格化の通過点にすぎない

 現代宗教| 2020年12月14日

一般の教会でクリスマス(生誕節)といえば救い主イエス・キリストの誕生を祝う記念日であり多くの教会で礼拝が献げられる。では、キリスト教を名乗る異端、カルト集団(*)はこのクリスマスをどう位置づけ祝うのだろうか。グループごとに解説する。

*)韓国主要教団による総会決議に基づく規定

統一協会にとってクリスマスとはイエス・キリストが失敗した悲しみの日

故・文鮮明(ムンソンミョン)氏が設立した旧・統一協会(正式名称=天の父母様聖会・世界平和統一家庭連合)は12月25日クリスマスを祝わない。統一協会の経典「原理講論」にはイエスが2千年前にメシアとして地上に生まれたが結果として失敗し十字架刑で殺されて死んだと教えている。つまり失敗した「悲しみの日」なのだ。文鮮明は自叙伝で次のように説明している。「私たちはイエスが来た目的を知っている。彼は天において御子(みこ)であり万民にとって真(まこと)の父母様であり(中略)天の国の御座がこの地上に存在して神の至聖所になるであろう。(中略)イエスは地上で神殿を築くはずだった。イエスの血統を中心として直系の忠実な万民を成すためだった。それが神のイエスを地上に送った目的だったからだ。ところがイエスはこの地上で成すべき使命があるにもかかわらずそれを果たさなかった。イエスは失敗したのだ。(中略)だからイエス直系の子を私たちは見ることはできない。クリスマスは祝うものではなくこれを覚え悲しむ日にしなければならない」(文鮮明先生の御言葉名言集)。

李英善(イヨンソン)牧師(韓国キリスト教統一協会対策協議会)は「クリスマスを大きな行事に定めていない。イエスは使命を果たせず死に、その代わりに文鮮明が再臨主として地上に来たので真の父母様になったと信じている」と説明する。

今年の初めに開催された統一協会真の父母様生誕100周年記念大会(出典:統一協会公式サイトより)

統一協会はクリスマスの代わりに8大祝日の一つである真の父母様生誕記念日を盛大に祝う。妻である韓鶴子(ハンハクジャ)氏も真のお母様と称えられ、文鮮明氏が死去すると「神の独り子である再臨主をこの地に送られ独生女(トクセンニョ)を確かにするため摂理が進められてきた」と主張。自分こそ再臨のメシアだと宣言し、統一協会の教理的概念を180度ひっくり返した。1代目再臨主と2代目再臨主が混在する統一協会は「教えの矛盾」で混乱が起きている。

神様の教会は教祖安商洪氏の生誕を祝う(画像:現代宗教)

神様の教会世界福音宣教協会は自称再臨のキリスト安商洪を守る

故・安商洪(アンサンホン)氏を自称再臨のキリストと公言し信仰する宗教団体「神様の教会世界福音宣教協会」では12月25日クリスマスを祝わない。彼らの主張によれば、12月25日はローマ帝国時代の太陽神の生誕日だという。「世の中では25日をイエスの誕生日だと主張する。しかし教会史をみると25日はローマ帝国の太陽神聖誕祭だ。キリスト教が世俗化しイエスの誕生日にすり替わってしまった。我々はイエスと関係ない日を祝わない」と説明している。神様の教会は安商洪氏が再臨のキリストとして信仰されており1981年1月13日(旧暦12月1日)、教祖の誕生日を記念して祝う。旧暦で決めるので毎年誕生日が変わる。

キリスト教福音宣教会はクリスマスより自称再臨のメシア鄭明析氏の誕生日が大切

キリスト教福音宣教会(通称:摂理)は過去に12月25日をクリスマスとして記念していた。しかし、自称再臨のメシア鄭明析(チョンミョンソク)氏によって新しく教理変更がなされたことでクリスマスの意味が色褪せてしまった。25日に各種行事を開催することはあっても鄭明析氏の誕生日である3月16日を「聖者昇天日」と定め特別に祝っている。摂理の元副総裁で脱会後、異端やカルトの被害者を救出する活動に従事しているキム・ギョンチョン牧師(韓国基督教異端相談所協会・安山支部)によれば「摂理にとってイエス・キリストは過去のメシアにすぎない」とし、「クリスマスは習慣的な行事として祝うだけで特別大きな意味はない」という。脱会者によると「以前の摂理ではイエスの霊と鄭明析氏が重なって現れたと教えていたので25日は大きな意味があった。

教理が変わり、鄭明析氏がこの世に再臨したメシアだと教えたので彼の誕生日である3月16日がこの時代のクリスマスだ」と証言した。「信者たちはクリスマスが新約時代のイエスが生まれた日。初臨を記念して過ごそうという程度の位置づけ」と説明する。摂理では25日に芸術祭などさまざまなイベントを開催する。ただ、宗教的に深い意味を持つわけではなく新しく人を連れてきやすいからだと考えられている。ある脱会者は「内部では25日を重要視する人は信仰的に弱いと批判され3月16日教祖の誕生日を祝うことが正しいとされている」と語った。

万民中央教会では施設内を派手に飾り付けクリスマスを祝いながら教祖李載禄氏を称える(画像:現代宗教)

万民中央教会のクリスマスは 自称聖霊、李載禄氏を称える

李載禄(イ・ジェロク)氏を自称聖霊、神同格の方と信仰する万民中央教会のクリスマスはとても華やかだ。25日も普通の教会のように礼拝を献げるがプログラムの中身に大きな違いがある。ある脱会者は「昼食後、聖殿(教会)に数百人から1000人程の信者が集まる。ここでイ・ジェロク氏が1、2時間近く説教を行なう。その内容は間接的に自分を偶像化させるものだ。終わると信者は各自封筒に献金を入れ「贈り物」と言って教祖に手渡す」と説明する。また25日はイ・ジェロク氏から特別な祈りを受けることができるという。しかし、実際には事前に決めたメンバーが教祖の前に立つというのだ。表向きにはイエス・キリストの誕生を記念するが実際は教祖への贈り物を献げより神格化させる日なのだ。

李載禄氏は9人の女性信者に性的暴行を加えた罪で2019年9月8日に懲役16年の実刑判決を言い渡され現在も服役中だ。教祖不在のクリスマスをどう過ごすのか。

新天地は自称約束の牧者(救い主)、李萬煕氏を崇拝。「クリスマスは意味がない」

新天地(正式名称=新天地イエス教証拠〈あかしの〉幕屋聖殿)は世の中をサタン、腐敗した牧師たちと既成教会を敵視しながら教祖である李萬煕(イマニ=89)氏だけが勝利者で約束の牧者として救い主同然に信仰する宗教団体。ここではクリスマスを特別な日として祝わない。過去に大きなイベントを開催したり特別な礼拝を献げたりした記録もない。チョウ・ハナ幹事(現代宗教編集顧問委員)によると「新天地にとってイエスの存在は初臨したというだけで大きな意味はない。再臨したこの時代のイ・マニが彼らにとってすべてだ」と指摘する。だからイエスは教祖を神格化させるための通過点にすぎない。彼らは聖書を見る焦点も異なっている。ただ、新天地信者がクリスマスを祝わないわけではない。彼らも社会から違和感を抱かれないために慣例行事の一つとして考えている。イム・ウンギ牧師(韓国基督教異端相談所協会・光州相談所所長)は「新天地ではイエスという存在は旧約時代の約束を成し遂げた存在だ。だから救い主として祝う価値がないと捉えている。代わりにこの時代の救い主であるイ・マニ氏こそ約束の牧者だと信じている」と説明する。間もなく90歳を迎える教祖の誕生日が盛大に祝われているのかといえばそうではないようだ。密かに幹部だけを集め毎年祝われている。

ヨハネ黙示録(啓示録)の預言を一つひとつ勝利しながら成就していると教え、その勝利者はイ・マニ氏だと信じられている。現在89歳の教祖は肉体も滅びず霊も滅びない「不死身」だという。しかし、教祖を含む18人の教団幹部らは感染症予防法違反、横領など多数の容疑で逮捕起訴され1月に判決が言い渡される予定だ。