逮捕後56日ぶりに保釈されたチョン会長を巡る内部での新たな動き。非常対策委員会が記者会見「本来の設立目的に立ち返って活動したい。チョン氏の職務停止処分決定を歓迎する」
今年、2月24日に違法集会を扇動した「公職選挙法違反」の罪で逮捕された韓国基督教総連合会(韓基総=CCK)代表会長チョン・グァンフン氏は4月20日、逃走の恐れがない等の理由から56日ぶりに保釈された。
チョン氏の逮捕を受け社会的信用を失った韓基総を立て直そうと、共同副代表を務める牧師を含む有志らで立ち上げた非常対策委員会(以下、非対委)は裁判所に対し、チョン氏の代表会長職務停止を求める「仮処分申請」を行なっていた。5月19日、裁判所はチョン氏の代表会長職務停止を命じる仮処分決定を言い渡した。「会長選のプロセスに不正行為が認められる」という理由からだった。
チョン氏を巡っては2018年、前大統領選で特定の候補者に投票するよう促すメール等を送った「公職選挙法違反」の罪で逮捕され、執行猶予付の実刑判決を受けた過去がある。彼は執行猶予中の身でありながら韓基総会長選に立候補し当選を果たした。この選挙について多くの問題を指摘する声が当時からあがっていた。続けて今年1月30日に再選を果たすが、ここでも不正行為を指摘する内外からの批判を受けていた。
チョン氏を巡るトラブルこれだけではない。違法集会を扇動した容疑や献金横領疑惑、韓国主要教団から異端認定を受けている「愛する教会」牧師、邊承祐(ピョン・スンウ)氏を会長特権と称して「異端解除」し、連合会の重役に就任させるなど問題行為を続けた。さらにピョン氏から異端解除の見返りとして多額の賄賂を受け取った疑いがあるとして内部の牧師らから告発されている。現在も告発を受理した警察は捜査を続けている。
チョン氏の牧師、また連合会代表会長としての品位と良識を疑問視する声は日に日に強まる一方だ。反政府集会を主導した演説の中で現大統領に対し「暴言」「放送禁止用語」を使い罵倒する騒ぎを起こしている。2019年10月22日に行われた某キリスト教地方集会で「私の手で聖書は二千年ぶりに開かれた」などと発言。集まった牧師らの前でチョン氏自身を批判する牧師の個人名をあげながら「あの野郎」「この野郎」と批判した。
興奮したチョン氏は声を荒げながら「私に反抗するなら神は私に殺されるぞ!」と発言した。また「自分は神から権威を受けた特別な存在であり、全ての牧師が自分にひれ伏すだろう」「次期大統領になれと神から啓示された」とも発言し、キリスト教界から大反発を受ける結果となった。他にも異端研究の専門家が賄賂を受け取っているなど虚偽発言を繰り返し、チョン氏に対する一連の疑惑を報じた韓国主要キリスト教メディア各紙を「異端メディア」と批判するなど物議をかもした。
主要教団の中にはチョン氏のこうした一連の問題行為だけでなく、神学的に異端性の強い発言を繰り返していることから「異端審問委員会」を発足させ本人を調査するべきだという動きもある。かつて韓国を代表する保守プロテスタント連合だった「韓国基督教総連合会」は異端による買収、その信者たちが職員となって実務のコントロール、重役らの政治介入、不正行為と数々の疑惑が浮き彫りとなり事実上、その立場と信頼を失ったことは確実だ。多くの主要教団は同連合会から脱退しており機能停止状態にある。
チョン氏の妄言は問題であり職務を停止すべきだと声をあげた牧師たちで構成されたのが今回声明を読み上げた非対委だ。韓基総の正常化を目指す非常対策委員会(委員長=オム・ギホ牧師)は、ソウル中央地方裁判所第51民事部が言い渡したチョン・グァンフン牧師の代表会長職務停止仮処分決定に対して「歓迎する」とコメントした。
非対委は5月21日午前、ソウル鍾路区の韓国キリスト教連合会館14階にある韓基総事務所前で記者会見を開き、集まった報道陣を前に声明を読み上げた。開始直前になって韓基総の職員らが入り口を閉鎖するという事態が起きた。職員の中にはチョン氏の支持者や異端認定を受けている教団関係者も多く在籍している。非対委が求める同連合会の正常化に強く反発する勢力が妨害したかたちだ。
取材陣が中に入れないことから非対委は急遽事務所の前で会見を行なった。委員長のオム・ギホ牧師は声明を読み上げ、「韓基総は名実共に韓国と教会のために尽力し社会の地の塩世の光となって職務を果たすために先頭に立って活動を続けてきました。しかし、最近になって誤った方向に向かっています」と述べた。続けて、「その結果、多くの人々に深い悲しみを与え、社会から問題視される団体に転落してしまいました。教会は一致して社会に良い影響を与える存在であるべきです。教会が今回のように政治介入するべきではありません」「韓基総は社会が正しくない方向に流されそうなときに助言できる存在であるべきです」と述べた。
声明文の要約は3つだ。
1 韓基総が本来の設立目的に立ち返って活動すること
2 本連合会から政治活動に傾倒する牧師が輩出されないよう努めること
3 国民と近隣の国との和合のために力を注ぎ、派による摩擦、争いをせずイエスの心に従って国民に仕えていくこと
今後、裁判所が指定した弁護士が派遣され、韓基総代表会長に適任な人材を選出できるよう内部調整を行なうという。しかし、正常化への道のりには多くの課題が残されている。なにより今回の仮処分決定でチョン氏は法的に解任されたわけではないからだ。内部調整、選挙を行なうまで職務を停止されるだけである。擁護派、反対派により内部対立が激化するのか、裁判所の介入により新体制が発足するのか、韓基総の今後の動きに注目したい。