在米韓国人牧師ダビデ張こと張在亨(ジャン・ジェヒョン)氏が2000年に設立したオリベット大学が、昨年12月にニューズウィーク誌の発行人、編集者、記者を相手取り、名誉毀損で1億ドルの損害賠償を求めて連邦裁判所に提訴した。これを受け、ニューズウィークのCEOデヴ・プラガド氏は1月5日付で声明を発表し、報道の正当性を主張している。

オリベット大学とダビデ張氏の疑惑を追及してきたニューズウィークの記事
ノースカロライナ州に本拠を置くキリスト教ネットメディア「ミニストリーウォッチ(Ministry Watch)」2025年12月23日付によると、訴状でオリベット大学は、ニューズウィーク誌の発行人デヴ・プラガド氏と複数の社員が、2022年からオリベット大学に“組織的な”攻撃を行ってきた、と主張。同誌は23本のオリベット関連記事を掲載し、マネーロンダリング、留学生ビザ詐欺、労働搾取といった深刻な犯罪を主張しているが、大学側は被告がこれらの主張が虚偽であることを“知っていた”としている。
記事中で「オリベットがマネーロンダリングを認めた」「人身取引の捜査を受けている」などの記述は虚偽であり、「名誉毀損的な」表現だとオリベット側は主張している。訴状では具体的な「名誉毀損」表現を羅列し、それらの言説は本質的に非常に有害であり原告は評判の毀損や金銭的な損害を証明する必要がない、とも主張。陪審員裁判の実施と、これ以上の「名誉毀損的な」記事の差し止め命令も求め、「悪意のある」名誉毀損記事に対して少なくとも1億ドルの懲罰的損害賠償を求めている。
オリベット大学は2023年にも、ニューズウィーク誌を名誉毀損で提訴したが、連邦判事は2024年に訴えを棄却。オリベット大学が「マネーロンダリング」で有罪答弁をしたというニューズウィーク誌の主張は「実質的に真実」であるとの見解を示した。
(注:2020年2月、ニューヨーク州裁判所がオリベット大学および関連企業とその責任者らに対し、3500万ドルに上る詐欺企図、マネーロンダリングの罪等で有罪判決を言い渡したことを、ニューズウィークほかのメディアが報じた。)
ビザ詐欺と人身取引については、オリベット大学のカリフォルニア州アンザ・キャンパスの留学生が民事訴訟を提起したもので、現在審理中。
留学生の被害届に基づき、米国国土安全保障省と連邦検事局も捜査していたが、昨年9月にオリベット大学および大学関係者を起訴しないことを通知した。
またオリベット大学は2024年12月、教員と指導の欠陥を理由にカリフォルニア州消費者庁私立高等教育局(BPPE)から認可を取り消された。調査と訴追の費用として64,432ドルの支払いも求められている。オリベット大学のジョナサン・パーク学長によると、大学はこの決定に対し控訴している。パーク学長は「BPPEの調査はニューズウィーク誌による虚偽の人身取引疑惑に基づくもので、学生や消費者からの苦情に基づくものではない」と述べ、控訴手続き中もオリベット大学は、BPPEによって正式に確認された宗教的免除の下で運営を継続している、としている。
これに対し、ニューズウィークのデヴ・プラガドCEOは1月5日に声明を発表し、次のように述べた。「これらの訴訟はニューズウィークのジャーナリズムに関するものではなく、オリベットとその関連会社に関する正当な報道を隠蔽しようとするものです。これは、裁判所が既に棄却した申し立てを、同じ原告団が繰り返し再審理させようとしてきたことを反映しています。当社の報道、所有権、そして事業運営を攻撃する申し立ては、これまで幾度となく却下されており、今回の訴訟でも同様の結果がもたらされると確信しています。」

ニューズウィークのCEOデヴ・プラガド氏
グローバルニュースワイヤー(Global Newswier)のプレスリリースによると、ニューズウィークは、今回の訴訟は裁判所が既に審査し棄却した申し立てを改めてまとめたものであり、新たな事実または法的根拠は示されていない、としている。
裁判所は、同じ原告が以前に却下された訴訟を新たなタイトルや関連会社名の下に再パッケージ化しようとする度重なる試みを認定し、却下してきた。裁判所はまた、これらの訴訟が個々の記事への異議申し立てにとどまらず、ニューズウィークの経営陣、ガバナンス、そして事業運営全体を標的としていることも認定しており、この戦略は司法の審査において繰り返し失敗しているという。
ニューズウィークは、これらの訴訟は、オリベットとその関連会社が経営陣への個人攻撃を通じてニューズウィークのジャーナリズムを抑圧しようとする継続的な取り組みの一環であると指摘。以前に却下された訴訟を新たな訴訟で繰り返し蒸し返しても、結果は変わらない、と述べた。
「ニューズウィークの報道は、検証可能な公開記録、裁判所への提出書類、そして公共の関心事に関する規制当局の資料に基づいている。当社はこれまで、オリベット大学とその指導者に関する報道は、これらの問題が公共の関心事に関わるものであり、公開されている裁判所の記録、規制当局への提出書類、その他の検証可能な情報源に基づいており、編集基準に準拠していることを説明してきた。オリベット大学とその関連団体に関する報道は、編集室がジャーナリズムとして正当な根拠があると判断する限り継続される。」
ニューズウィークは、独立した事実に基づくジャーナリズムを提供するという使命に引き続き注力しつつ、これらの申し立てに対して断固たる防御策を講じていくという。
ニューズウィークは2013年から2018年、張氏のグループ企業IBTメディアに買収されて傘下に置かれた。デヴ・プラガド氏はその際、共同経営者に就任したダビデ張共同体の元信者。しかし2020年4月にニューヨーク州裁判所で、オリベット大学、IBT、CMCなど張氏の関連企業が3500万ドルに及ぶ詐欺・マネーロンダリング事件で司法取引により有罪の判決が確定。その後プラガド氏は社内に向けて、自分がすでにオリベットのメンバーではないことを表明した。
CMC(クリスチャンメディアコーポレーション)は、日本でも張氏の異端・カルト疑惑を追及する根田祥一・本紙編集顧問らジャーナリストや牧師・信徒に数件の名誉毀損訴訟を提起してきた自称キリスト教メディア「クリスチャントゥデイ」の上部団体。
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