米国のオリベット大学の元学生らが、国際的な人身取引の被害を受けたとして同大学の創立者ダビデ張こと張在享(ジャン・ジェヒョン)氏と大学を訴えている。2月2日、ニューズウィークが伝えた。

学生らは2000年に張氏が設立したオリベット大学で学ぶための奨学金を提供すると言われた。カリフォルニア州リバーサイド郡で起こされた訴訟によると、彼らは大学を通じて取得した学生ビザでベネズエラ、インド、スペインから米国に到着すると肉体労働を要求され、賃金は一切支払われなかった。オリベット大学は申し立てを否定し、詐欺行為および虚偽だとして学生たちを反訴した。張氏はコメントの要請に応じなかった。

オリベット大学の複数の元学生らが英・韓・中・日の各国語のビデオで彼らの受けた被害を証言していた

オリベット大学をめぐっては、マンハッタンのマネーロンダリング事件では2020年に数件の有罪判決が確定。ノースカロライナ州での偽造品事件、テキサス州での恐喝訴訟、そして国内各地での税金やビジネスに関する数多くの紛争などがある。

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今回の訴訟は、現在オリベット大学に対して行われている連邦捜査と同じ分野に及んでいる。国土安全保障省の調査部門は、オリベット大学とジャンの弟子たちが労働者人身取引、ビザ詐欺、マネーロンダリングを行ったかどうかを調べている、とニューズウィーク誌は報じている。

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民事訴訟の原告の一人であるレベッカ・シン氏は、連邦捜査官の注意をオリベットに引きつける上で重要な役割を果たした。20183月、シン氏は911(緊急通報番号。日本の110番)に電話し、カリフォルニア州アンザにあるオリベット大学のキャンパスで自分の意思に反して拘束されていると語ったと、ニューズウィーク誌は以前報じた。その通報とその後のオリベット大学からの脱走が、最終的に数年にわたる連邦捜査につながった。

原告であるシン、ダウィン・リランゾ・ガラン、ローランド・ブロッコ、ミネルバ・ルイスの4氏は、「授業料、部屋代、食事代、教材費を含む全額支給の奨学金を約束されていた。彼らは夢を叶えることを期待して入学したが、経験したのは悪夢だった」。カリフォルニアの高地砂漠地帯にある人里離れたアンザ・キャンパスに入ると、何人かの学生はパスポートやその他の身分証明書を取り上げられた、と訴状は主張している。彼らはコンテナの荷降ろし、家具の組み立て、ペンキ塗り、造園、そして張氏の住居の掃除までさせられた。

学生たちによれば、この労働に対する賃金は支払われておらず、訴状に添付された文書には、オリベット大学が彼らを週40時間働く従業員として扱っていたことを示すと思われる署名入りのタイムシートが含まれている。もしそれが事実なら、ほとんどの学生ビザに課せられている1週間の労働時間制限に違反することになる。

「被告は各原告に、労働サービスを履行または提供しなければオリベットに借金があると信じさせるつもりだった」と訴状は主張している。

学生たちは事実上、アンザ・キャンパスに閉じ込められていた、と訴訟は述べている。車で40分離れたテメキュラの町への週1回の買い物は常に監督されていた。学生たちは、オリベットのバンに乗って、オリベットに運賃を支払った。その他の学外への外出には、オリベットの従業員の承認が必要だった。

訴状によると、20183月、シン氏は電話で通報するまで何か月もアンザ・キャンパスから出ることを許されていなかった。国土安全保障省(HIS)の捜査官は20214月、オリベットのキャンパスを急襲し、ビザ詐欺、労働者人身取引、マネーロンダリングの捜査のためコンピューターを押収した。

「オリベットに対する捜査は進行中だ」と、国土安全保障省捜査局の広報担当者は21日、ニューズウィーク誌に語った。

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張氏は米国での過去の刑事訴訟では名前を挙げられていないが、HSIの調査官は、張氏に批判的なグループがネット上で流したビデオに登場する元オリベットのメンバーに関する情報を証人に求めた。ニューズウィークは、証人と調査官とのやりとりを確認した。ワールド・オリベット・アセンブリーは、ビデオの申し立ては虚偽であり、名誉毀損であると述べた。

オリベット大学は、原告らが同大学の学生であることは認めたが、無給で働かせたことは否定した。

証言ビデオでは数人の元信者らが人権侵害の被害を訴えている

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「真実は、問題の学生たちが学生クラブでボランティアをし、私物を買うための小遣いを求めていたことであり、あなた方が広めようとしている深刻な疑惑とはかけ離れている」とオリベット側は言い、原告を詐欺罪で反訴すると付け加えた。内部調査の結果、タイムシートは偽造であるとの結論に達したという。オリベット大学の反訴は、「入学と奨学金のためにオリベット大学に出願する際、(原告らは)宣教や聖職に就く目的で教育を受けるつもりであると保証した」と述べている。

この訴訟は、法的な問題が起こる前に北米で急速に拡大していたオリベット大学にとって重要な時期に起こった。同大学は現在、少なくとも10の州と地域で閉鎖されたり、審査下に置かれたりしている。そして、今後数か月で2つの重要なテストに直面することになる。

オリベット大学の認可が2月末で切れる。唯一のアクレディターである聖書高等教育協会は、11月に同大学に警告を発し、2月までに「倫理基準を厳守し、すべての実践と関係において誠実さを示す」証拠を提出するよう命じた。

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4月には、カリフォルニア州が14の州規則違反の疑いで同校を閉鎖するかどうかを決定する行政審問が行われる。オリベット大学に対するカリフォルニア州の苦情は、カリフォルニア州私立高等教育局の代表者が2022年後半にオリベットのキャンパスを視察した後、ロブ・ボンタ州司法長官が同州消費者庁に提出した。

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