繰り返す暴言、陰謀論、中国武漢の細菌テロ説を力説。刑事事件で保釈中の立場 異端性濃厚で暴走する牧師

韓国では首都圏を中心に再び新型コロナ集団感染が広がりはじめた。今年2月、コロナに感染した新天地信者を通じて教会クラスターが発生。そこから韓国内に感染拡大する大惨事を招いたことは記憶に新しい。8月1日には新天地教祖イ・マニ被告を逮捕。組織的に防疫検査を妨害し、信徒名簿を偽造したなど4つの罪で14日起訴された。韓国政府は宗教活動における集団感染の危険性を警戒。数千人規模で礼拝を行なう韓国教会(メガチャーチ)はとくに感染リスクが高いことからオンライン礼拝に切り替えるなど対応を迫られてきた。その最中にまたしても韓国基督教総連合会(韓基総:通称CCK)会長が問題を起こした。彼が牧会するソウル市のサラン(愛)第一教会でクラスターが発生、315人の信者の感染が確認された。(16日午前現在)

韓国基督教総連合会の会長が引き起こすトラブルの数々

公職選挙法違反の罪で逮捕され起訴された全光勲(チョン・グァンフン)牧師が再び大暴れした。チョン牧師は保守プロテスタント系の愛第一教会で牧師を務め、かつて韓国を代表した連合団体「韓国基督教総連合会」(韓基総:通称CCK)で代表会長を務めている人物だ。チョン氏は大規模反政府集会を主導し、CCK会長の立場を利用して極右政党への支持を求めた。結果、公職選挙法違反の疑いで逮捕。その後、体調不良などを理由に保釈が認められ現在も公判中である。

チョン氏の逮捕を受け社会的信用を失った韓基総を立て直そうと、共同副代表を務める牧師を含む有志らで立ち上げた非常対策委員会(以下、非対委)は裁判所に対し、チョン氏の代表会長職務停止を求める「仮処分申請」を行なった。5月19日、裁判所はチョン氏の代表会長職務停止を命じる仮処分決定を言い渡した。「会長選のプロセスに不正行為が認められる」という理由からだった。

その後、裁判所が派遣した法律関係者が会長代行を務めている状態だ。彼の問題行為は目を見張るものがある。公職選挙法違反による逮捕は2018年に続いて2度目だ。政治に傾倒し、極端な思想を広めるなど所属教団の規定に違反したとして大韓イエス教長老会白石大神教団から2019年8月30日、牧師職を解任されている。彼は無所属の牧師なのだ。

その他にもCCK会長の権限を無断で行使して主要教団から「異端」規定されている邊承祐氏(ピョン・スンウ=愛する教会牧師)の異端解除を実施した。その際、ピョン氏側から見返りに金品を授受した買収の容疑でも捜査中である。セクハラ、パワハラ、詐欺行為、不正行為・・・。チョン氏は数え切れない告発を受けている。CCKはチョン氏を異端調査委員会にかけ、異端性が濃厚だとする最終報告をまとめたばかり。つまり、CCKは制御不能に陥っているのだ。それでは今回、改めて何が起きたのか報道を追ってみたい。

8月15日 光復節を記念して大規模反政府集会が行なわれた。反政府集会は違法集会と見なされる。(画像:ニュースアンドジョイ)

韓国キリスト教界紙ニュースアンドジョイの報道を中心に本紙異端・カルト110番で経緯をまとめた。8月15日、韓国にとって重要な日が今年も訪れた。日本では一般に「終戦記念日」とされるこの日は韓国にとって日本の植民地政策から解放された「光復節」。例年は祝賀ムードに包まれ、政治団体による集会が各地で行なわれる。今年はコロナ集団感染防止から政府、ソウル市からもこうした集会を自粛するよう求められていた。特に光化門周辺で行なう反政府集会は違法集会として条例で禁止されている。

大規模反政府集会にあの男がまた現れた

そこに現れたのがあの男だった。韓国基督教総連合会(韓基連:CCK)会長チョン・グァンフン牧師だ。彼は今年2月24日、文在寅大統領を糾弾する大規模な反政府集会を主導し、特定の極右政党を支持するよう参加者に呼びかけた公職選挙法違反の罪で逮捕されている。その後、保釈され公判中の身だ。保釈が認められた正式な理由は不明だが、本人は「健康上の理由」を述べていた。保釈直後、取材陣に対し「集会は行なわない」とコメントしていた。

8月15日、大規模反政府集会を主導したチョン・グァンフン氏(画像:ニュースアンドジョイ)

ソウルの光化門(グァンファムン)には数千人の極右キリスト教政治団体、市民団体、その支持者が集まった。光化門は大勢の人が入り交じり大騒ぎになった。参加したメンバーは大声で「文在寅(ムン・ジェイン)大統領をやめさせろ」と叫んで行進した。参加者の大多数はマスクを着用したが互いに距離をおくことはできない状態だった。この大規模集会は事実上、保釈中の身であるチョン氏が主導していた。彼は事前にYouTubeや関係者が発行する媒体を通じて「反政府集会に全国から集まってほしい」と促していたのだ。反政府集会を呼びかけ、主導したことが明らかになればチョン氏は再び拘束される可能性がある。政府は違法行為と見なしているからだ。

チョン氏の教会でクラスターが発生 細菌テロと陰謀説まで主張

チョン氏が牧師を務める愛第一(サランチェイル)教会で新型コロナのクラスターが発生。8月16日時点で315人の感染が確定している。今後も増加していくと思われる。教会側は防疫センターの調査を一時的に拒み自覚症状があるにもかかわらず発覚を恐れてか隠蔽と思われる対応をしたとされる。新天地大邱教会のクラスター発生状況とよく似た現象が起きてしまった。しかし、教会側は、責任は国にあると非協力的な姿勢を崩そうとしない。ある捜査関係者は「感染症予防法違反の疑いがある。チョン氏の再逮捕はありえるのでないか」と述べている。

クラスターが発生した教会の牧師が大規模集会で大声を張り上げて、大統領を糾弾する、この様子に市民から感染拡大を不安視する声が広がった。チョン氏は不可解な発言を繰り返した。まず、この集会に自分の教会員や関係者は参加していないと断言した。

愛第一教会は国の防疫方針を守らなかった。8月9日、教会内で信者が密集し賛美集会を催したことがわかっている。政府は宗教活動で密集した環境の集まりを禁じている。防疫センターはこの集会がクラスター発生の原因だと公表した。しかし、チョン氏は「クラスターは外部からのテロ行為によるものだ」と主張。教会には一切非がないと反論した。

暴言とコロナ感染拡大が止まらないチョン・グァンフン牧師と愛第一教会(写真:KBS)

15日の反政府集会でマイクを握ったチョン氏は、「何者かが私の教会に中国武漢ウイルスをまき散らした。これは教会に対するテロ行為だ」と発言。「我が教会はこれまでさまざまな集会を行なってきたが徹底した予防に努めたので感染事例は1件もなかった。この反政府集会を中止させるために誰かが細菌をまき散らしたのだ」と声を荒げた。興奮冷めやらないチョン氏は「敵に批判材料を与えないために信者には完璧な防疫体制をとるよう指示したところだ。ウイルスにどう立ち向かえばよいか、私が手本を見せてやろうではないか」と述べた。チョン氏は以前も新型コロナを「中国産の細菌」「中国武漢ウイルス」と断言し、「雲にのって中国から韓国へ飛んでくる。空からまき散らされる」と発言し物議をかもしたことがある。

しかし、チョン氏自身もコロナ感染の疑いがある。防疫センターは検査を受けるよう手配中だという。「私は熱もない。無症状だ。しかし(国)彼らは私を隔離対象者に含めると言っている」とし、「15日間自宅療養せよと言われた。あなたがたはそんな約束を守るだろうか?」と集会参加者に問いかけた。参加メンバーは一斉に「いいえ。守る必要はない!」と叫んだ。

止まらない暴言 陰謀説まで飛び出す始末

再び暴言を繰り返した。彼は今年4月15日の総選挙が不正だと主張。「あれを不正選挙と規定する」と述べた。「人類史上最も詐欺的な選挙を行なった。これは総選挙ではなく詐欺だ」と繰り返し発言した。「大統領が大韓民国を北朝鮮に捧げようとしている」。これはネット上に横行するフェイクニュースを引用した発言と思われる。「大統領は自分から大統領府を出て辞任すべきという判決を下さなければならない。ひとつ忠告しておこう。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領のまねをして自殺はするな。おまえが死んだところで国民が同情するとでも思っているのか。生きているうちに引きずりおろしてやる」と暴言を吐いた。チョン氏は公の場で暴言を吐くことで有名な牧師だ。韓国内で禁止されているいわゆる放送禁止用語を連呼したり、卑猥な表現で相手を批判したりすることがある。

チョン牧師と追従者たち 矛盾する説明

チョン氏を支持する極右キリスト教政治団体のメンバーも陰謀論をぶちまけた。KBS公営労働組合のソン・チャンギョン委員長は愛第一教会のクラスター発生について「私は愛第一教会に6ヶ月以上も通った。礼拝のたびにマスクを着用し消毒も徹底した。この集会直前にコロナ感染が発覚した。まともな教会からなぜクラスターが発覚するのだ。おかしいと思わないか?」と述べた。さらにソン氏は「大統領は不正選挙もまだ物足りず、検察までコントロールして大韓民国を北朝鮮化させる準備をしている。ただちに大統領を引きずりおろすべきだ」と述べた。

この発言も奇妙だ。チョン氏は冒頭で「自分の教会信者、関係者は集会に参加していない」と断言した。ところが、ソン氏は「愛第一教会に6ヶ月以上通っている」と発言した。

未来統合党のミン・ギョンウク元議員もステージに上がり発言した。「4月15日の総選挙は最先端デジタル犯罪だ。この犯罪を主導した大統領を厳重に処罰せよ」。ここでも陰謀論をぶちまけた。総選挙が不正だったという報道はどこも行なっていない。

事実上、崩壊した韓国基督教総連合会

極右系キリスト教牧師、シム・ハボ氏(恩平第一教会)もマイクを握った。「ソウル市と韓国政府はコロナ感染予防ではなく、自分たちに有利な政治目的のために集会を制限した」と発言した。シム牧師は数千人の参加者を前に「今日、この集会でコロナ感染者が出たら政府に損害賠償請求をしようではないか」と述べ、参加者は拍手喝采(かっさい)だった。

韓国基督教総連合会の行く末はどうなるのか。チョン氏は公判中だが今回の言動が彼に有利に働くとは到底思えない。主要教団は韓国基督教総連合会の早期解体を求めている。