平和大使協議会、CARPを名乗る団体や書籍、チラシの配布などに旧統一協会と銘記されていないので、気づかない

旧統一協会(正式名称=天の父母様聖会・世界平和統一家庭連合、以下「統一協会」)が関連団体を通じて既成教会に急接近している。本紙に複数の教会関係者から情報が寄せられた。

統一協会は過去の宗教団体ではない。もう存在しないと思っている牧師もいる。彼らの実態を知ることは重要だ。

統一協会は故文鮮明氏(ムン・ソンミョン)を再臨のメシアと崇める韓国発祥の宗教団体だ。日本では過去に芸能人らが合同結婚式(祝福式)に参加し、派手な演出を行なったことで有名だ。一方で信者らは教団からの厳しい献金ノルマを課せられ、統一協会であることを隠した関連ビジネスを通じ多くの詐欺的被害を起こした、いわゆる霊感商法問題でも広く知られている。

統一協会に関連した過去の刑事事件

今回、統一協会関連団体から複数の教会にイベントの共催の要請があったとの相談が本紙宛に寄せられた。確認したところ、統一協会関連団体である平和大使協議会(東京都新宿区)が統一協会との関係性を隠して既成教会に講演会やイベント共催を呼びかけていたことがわかった。実際に関係者が教会を訪問した例もあった。同協議会の公式サイトを見るとUPF・JAPANのバナーが大きく掲載されている。UPFはUniversal Peace Federationの略で国連NGOを名乗る統一協会の政治団体の一つ。故文鮮明氏と韓鶴子氏が創設者として紹介されている。また、統一協会の事業として計画を進めている「日韓トンネル」についても紹介されている。このような内容から統一協会傘下にあることは確かだ。また、同じく「人づくり、家庭づくり、国づくり国民運動」とも連動している。この名称で地域活性化や社会福祉関係の講演を教会で開催しようと持ちかけているという。十分に注意したい。

CARPは全国大学連合原理研究会の公式サイト(画像:ワールドカープ・ジャパンより)

同じく、統一協会の中核組織「CARP(カープ)」も教会に関わりを持とうとしている。CARPは全国大学連合原理研究会 (Collegiate Association for the Research of the Principle)を指し統一協会の学生信者を育成する組織だ。有名大学を拠点にサークルというかたちで活動を続けている。専門家によると統一協会のエリート信者を育てる機関だという。2世信者らが過去の統一協会の問題を表向きには清算し、新しく健全な宗教であることを示そうと既成教会と連携を模索していると考えられる。

また、首都圏の教会を中心に統一協会の支部から「平和の母」という書籍が郵送で届き始めている。「平和の母」は、統一協会の出版社(光言社=東京都渋谷区)が発刊した教祖の自叙伝だ。

2代目再臨のメシア韓鶴子氏の自叙伝。教会関係者に配布されている。

統一協会は日本のキリスト教界では一般に「異端」であり反社会的「カルト」として広く認識されている。ほとんどの教団や団体において同様の理解であるはずだ。しかし、最近はメディアなどの報道が減り、文鮮明が死去したことも統一協会が名称変更したことも知らない教会関係者は少なくない。韓国では主要教団が「カルト宗教」「異端」「キリスト教を装ったカルト集団」などと総会規定を下している。

文鮮明氏死去後、統一協会は衰退するどころか、妻の韓鶴子氏(ハン・ハクジャ)が夫である文氏に「原罪があった」と発言。先代の再臨主性を否定し、自身が2代目再臨のメシアであると宣言した。現在も総裁という立場で教団を率いている。信者は深刻な人権侵害に晒され被害者家族はこうした問題を必死に訴えている状況だ。

日本では全国霊感商法対策弁護士連絡会(略称「全国弁連」)をはじめ、全国統一協会被害者家族の会などが中心となって対策にあたっている。

このような異端・カルト集団とは気づかないような活動や布教方法は、統一協会だけではない。異端、カルト団体は宗教とは思われない団体名で既成教会に近づき巧みに協力を持ちかけてくる。十分に注意したい。まずは牧師と教会役員など責任を担う立場で相手がどのような団体であるか事前に確認する必要がある。また、一教会の判断にとどまらず教団理事などに確認を行なうなど入念なチェックを怠らないようにしたい。本紙は相談窓口を設けている。何か変だと感じた場合はすぐに相談してほしい。

冷静に情報収集に努め、日頃から異端・カルト対策を怠らないようにしたい。