摂理の元最高幹部が語る今後の動き

現代宗教 2020年10月08日号

「キリスト教福音宣教会(通称=摂理・CGM)は今後どのような体制で活動していくのか?何も目新しいものはない。同じ路線を歩み続けるだろう。教祖である鄭明析(チョン・ミョンソク)のもとで活動する彼らの行動予測はそう難しくない」。そう語るのは摂理の元最高幹部で副総裁まで務めたキム・ギョンチョン氏。脱会後、精力的に摂理の実態を明らかにし、脱会者ケアなども取り組んでいる。現代宗教はキム氏に摂理の今後の動きについて聞いた。

 鄭明析の神格化はさらに加速するだろう

女性信者に性的暴行を加えた罪で10年間服役していた教祖鄭明析(チョン・ミョンソク)は2018年2月に大田刑務所を出所した。凶悪な性犯罪者に取り付けられる電子足輪(GPS機能付き)を装着された鄭氏は、以前のように自由な移動ができにくくなった。

多くの制限がある中、それでも摂理は新しい信者獲得のために世界各地で忙しなく活動している。組織拡大は成功しているように見えるが実際はそうとも言えない。「また一人脱会した」、「あの教会でまた辞めた人がいる」こういう声を方々から聞くようになった。脱会者は増えているのだ。性犯罪を起こした教祖のもとに仕える教団だ。瞬時にして転落する可能性は十分にある。教団として最悪な弱点を抱えるキリスト教福音宣教会は、今まで以上に教祖を神と祭り上げ偶像化するしか道はなくなった。彼らは残された道を歩んでいる。

キム・ギョンチョン氏、キリスト教福音宣教会元副総裁。摂理の情報収集と脱会者ケアなどをに取り組む。

鄭氏はますます「神の本体そのもの」、「聖者分体」、「肉体を纏われた神」、「この世の聖なるお方」として神格化されるだろう。そして、キリスト教とは似てもつかない教理に立ち、イエスという存在を消し、信者の心を自分に向けさせるだろう。摂理は韓国では有名な異端教団のひとつだが、鄭氏については、「聖書をよく教えて下さる先生(牧師)」として尊敬を集め、次第に宗教改革者、預言者、洗礼者ヨハネなどと称えられ、入信して時間が経つと「主(しゅ)」、聖霊様、最後は神と同じ存在だと信仰されるようになる。彼は女性信者に性的暴行を加え、多くの犠牲者を生み出した。彼は逃走し、海外で逮捕され韓国へ送還された。刑事裁判を受け懲役10年の実刑判決を言い渡された。自ら招いた災難で教団のイメージは崩れたわけだ。逃げ出す信者を出さないために彼は自分をさらに神格化させ、他の宗教との違いを見せつけようとした。しかし、「特別な存在」という神格化以外に摂理が強調できるものはもう残っていないのだ。

 聖書を完全に無視していくだろう

摂理はさらに聖書の教えから逸脱していくだろう。どこまでも聖書の権威を踏みにじると思われる。彼らの聖書勉強とは本来の聖書の教えではなく、イエス・キリストを信じるものでもなく、鄭明析を「主」と悟らせる内容だ。だから彼が救い主だと悟るまで聖書は権威あるものとして利用されるにすぎない。入門者が鄭明析氏を救い主と確信した瞬間に聖書はただの古書になるのだ。それまでの道具なのだ。そして、鄭明析という再臨のキリストに従うときから聖書は神の言葉ではなく、鄭明析が神の言葉を語る存在だと信じるのだ。これが摂理という宗教団体の本当の姿だ。彼らが自分たちをキリスト教と名乗ることは大きな間違いだ。

彼が語る御言葉を毎日聞き続ける信者らは、聖書の本来の権威と正しい聖書観を失っていく。自分の目で聖書を読んでも教祖が違うと言えば「違う」からだ。鄭氏は自分に都合よく聖書を比喩(たとえ)として説く。さらに言えば、キリスト教信仰をもたない未信者と摂理の信者は聖書を正しく知らないという点でみれば同格である。それでも鄭氏は「私の言葉は新しい時代の聖書解釈だ」と主張するだろう。彼はよく「私は今、新しい時代の聖書を書いている」と語っていた。こうした独善的な考えが強くなるだろう。

月明洞の聖地化がエスカレートするだろう

信者にとって特別な聖地である「月明洞」(ウォルミョンドン)は今まで以上に特別な場所になるだろう。高価な石を買い漁り、花を育て、外観を美しく保とうと努力してきた。その背後で信者は無報酬の労働に駆り出されている。聖地奉仕を口実に厳しい労働搾取はこれからも続くだろう。あの土地ならもう1、2棟の施設を建てることができる。家庭局(摂理信者同士が結婚した家庭)のメンバーが月明洞に移住して暮らそうとしている。そして月明洞があるクムサンとチンサンに信仰村を建設する予定だ。それらの地域では高麗人参の販売や市民ボランティア活動を通じて地域との連携を図ろうとしている。

経済的搾取はより厳しくなるだろう

調査資料によればキリスト教福音宣教会の伝道活動は困難に直面している。教会員は増えず、出費がかさみ運営は厳しい。経済的困難の原因は2018年2月に教祖が出所するタイミングに合わせ教団が全国で土地を購入し新しい聖殿(教会)を建設したためだ。相当な額を注ぎ込んだとされる。さらに今年に入って新型コロナウイルスが影響し活動制限中だ。自称再臨のメシアも将来設計ができなかったようだ。実際に鄭氏の資産も逼迫していることもわかっている。

教祖はこのように語っている。「あなたたちの体はすべて神のものだ」、「あなたたちの財はすべて神のものだ」、「事業も家庭もすべて神のものだ」と。そして最近は「私は神だ」、「だからすべて私のものだ」、「私に財を捧げることは神に捧げることと同じだ」と主張するようになった。献金強要が今まで以上に加速するだろう。ビジネスにも手を出し、無料だった月明洞の湧き水を薬水だと言って売り始めた。コロナが終息すれば聖地の入場料も引きあげるとみられる。教祖の文字が刻まれた通称「サインカップ」(*)は摂理の関連事業体を通じて開発され商品化するだろう。旧統一協会と同じように摂理ブランドの製品開発にも力を入れようとしている。信者は購入を迫られることになる。

(*)教祖の文字が刻まれた御利益効果が期待されるというグッズ

教理がまた修正されるだろう

信者は感覚的に分からないようだが摂理は諸教会から批判され、教祖にとって都合が悪くなるたびに普遍的なものであるべき教理を何回も修正してきた。信者はこの矛盾を冷静に受け止めてほしい。

鄭氏は2018年に出所するとその年を「聖なる年」「復活の年」と定義した。説教で「2018年から3年半が復活期間だ」と信者に向けて宣言していた。彼が書いた教理「30講論」(歴史論)には鄭明析氏は「2023年に再臨のメシアとしての使命を終える」と書いてある。それを正当化するための発言だ。そして地上の終焉を意味している言葉だ。ところが、彼はどう都合が悪くなったのか、復活期間を3年半から14年後に修正した。何かあれば理由をつけて先延ばしする旧統一協会と何も変わらない教理修正が行なわれているではないか。

 神という存在は死なない。もちろんイエス・キリストは永遠だと正統な教会は信じる。再臨したキリストが再び死ぬことはない。聖書のイエスは「私はこうだと言ったが実は違う。いや、このように語ったがそれは修正する」などと聖書で語ったことはあるか。この矛盾に早く気付くべきだ。

啓示者を排除

教祖が収監されている10年間は啓示者たちの活動がとても活発だった。教団には教祖の代弁者として御言葉を語る啓示者が数百人は存在した。教祖不在という危機的状況で教団崩壊を防ぐために任命された人物たちだった。預言や幻を信者に語る役割を果たしていた。「先生(鄭明析)は神様だ」、「先生は神様の体そのものだ」、「神により天国に引上げていただくとすでに先生は御座に座っておられた」などと語り、不安を抱く信者の信仰心を奮い立たせようとした。これも混乱時に離脱者を出させないためのコントロールだった。しかし、教団を守るはずの啓示者も次第に教祖にとって厄介な存在となっていった。本来、神の言葉を代弁できるのは教祖しかいないからだ。数百人もの啓示者が任命されたが権力闘争に発展することを恐れたのだろう。出所した教祖は啓示者を解任した。自分の絶対的権威を誇示するためだ。

当時、教祖から最も愛された女性指導者たちも今では若い新人の誕生により存在感は薄れてしまった。教祖と性交渉が最高水準の救いと信じ生涯結婚を禁じられた女性信者たちは現実の空しさを次第に感じていくことだろう。

 

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