「病気を治す神秘の水」

現代宗教2020年10月5日

韓国の宗教団体「キリスト教福音宣教会」(通称=摂理:CGM)。教祖である鄭明析(チョン・ミョンソク)氏を再臨のキリストと信仰する教団だ。最近、摂理の聖地である月明洞(ウォルミョンドン)から湧き出るという地下水が「神秘の水・薬水」として販売されていることがわかった。摂理によれば、この地下水は「あらゆる病気を治す優れた効果が期待できる薬水」として信者たちが聖地訪問時に飲むことが許されてきたという。しかし、新型コロナウイルス感染拡大を受け、摂理が集団で行事を行えなくなった今、信者からの献金が激減。ひそかに有料販売を始めたという情報を入手した。

キリスト教福音宣教会(通称=摂理)の教団テレビ番組で紹介される不治の病が治るという月明洞の薬水(画像:現代宗教)

この自称「薬水」は摂理側の主張によれば「世界一質の良いミネラル成分が8倍も含まれている」「過去の40年間、各種皮膚病から生活習慣病、不治の病である癌まで飲んで完治した人が数万に達した」と広報している。ある摂理脱会者は「月明洞の薬水を飲んで病気が癒やされたと証言する人の話を聞いたことがある」「信者は誰もがこの水を飲めば、どんな病気でも治ると信じている」と証言した。

また、別の脱会者は「キリスト教福音宣教会の専門番組CTN放送で鄭明析氏が薬水をコップに注ぎながら“アトピー症状がある信者もこれを飲めば治る”と宣伝する様子を観たことがある」「番組に登場した教祖が市販のミネラルウォーターと薬水を飲み比べて“やはり月明洞の薬水が一番良い”と紹介していた」と語った。実際に教団内部で「薬水を飲んだり、体に擦り込んだりすればアトピーも癌も治る」と紹介している。特に現代医学では治療が難しいとされる病気に「癒やしの効果」があると強調している。

摂理に関連したネット注文フォームには、「薬水を目に塗るだけで治る」「1万人以上の病気を治した」「12年間治らなかった病気が薬水で完治した」「世界最高の水」などのうたい文句が書かれている。

教祖は女性信者に性的暴行を加え10年間服役。2018年に出所してから教団は薬水の神秘性をPRしている

摂理では月明洞の湧き水は昔から信者の間で貴重な水として重宝されていた。聖地訪問時には大きな水筒を持参して自由に飲むことができた。しかし、今は状況が一変したという。教団は「貴重な水」だという理由で持ち出せる量を制限。水筒の持ち込みも禁止になった。

専用のコップを使わないと飲むことができない。薬水カップ1個約1万ウォン(約1000円)から販売(画像:現代宗教)

ある脱会者は「教団がこの水を特別に貴重だと言い出したのは鄭明析氏が出所した2018年からのことです。洞窟の中に水が湧いていたのですが靴を脱いで裸足で汲みに行くように言われました。」「洞窟の中に専属のスタッフがいて一人当たりの摂取量を制限していました」と述べる。「2019年から専用コップの販売を始めました。小さなコップには“飲めば治る”とメッセージが書かれています。陶器で出来たコップですが1つ1万ウォンから2万ウォン(約1000円から2000円)で購入します。」

実物を確認してみた。薬水カップには「飲めば治る」「世界最高の水」とメッセージがプリントされていた。同封されていた注文書には数量・住所・氏名・連絡先を記載する欄があり、1万ウォンから購入できる。また薬水の効能について「月明洞の薬水は病気が治癒した歴史的証拠があります。私たちにくださった神様の祝福です。私たちがその真価を認めて飲む時に、薬水の価値はさらに高まることでしょう」「今後、薬水を飲む場合は専用コップ以外で摂取することはできません。」と記載されていた。摂取量は一人500mlまでと規定されていた。

信者に月明洞の薬水の販売を開始

韓国で新型コロナウイルス感染拡大が確認された今年の2月以降から摂理は薬水を有料化し販売するようになった。内部映像を分析すると鄭明析氏が「われわれ教団が薬水について案内をすればもっと普及するだろう」と語っている。またコロナ感染防止で大きな集会が困難になった今、月明洞に信者が訪問できなくなった。そこで教団は教会で薬水を分配して飲ませることも検討している模様だ。信者が購入することは確実だ。

摂理の教会から配信された注文票をみると一般でも薬水が購入できることがわかる。「第9回薬水販売受付」と書かれていた。今回は9回目の販売を意味する案内だ。購入するには記載された口座に「後援金」の名目で1万ウォンを振り込まなければならない。カタログには「癌2本可能、一般1本」と書かれている。これについて内部事情に詳しい人物は「癌の治療には2本、それ以外は1本までという意味だ」と説明した。

本紙の取材に対して摂理側は「薬水については信者の健康維持を考えた新しいシステムで商業目的ではない」とビジネスであることを否定した。脱会者は「摂理が薬水の有料販売を行なったことは初めてだ。コロナ以後、収入(献金)が激減したことが原因ではないか。注文票には“後援金”と書かれているが先払いになっているので事実上の収益事業だと思う」と語った。

摂理はビジネスではないことを強調している。しかし、今回入手した証拠から「病気が治る」という理由で地下水を商品化していることが確認できた。過去には統一協会亜流教団が同じように「病が治る」などの理由をつけて薬水販売を行なった過去がある。ただの地下水に神秘的な効能を強調し、商品化する。これは明らかに薬事法違反だが、自分たちが関わるものだけが唯一の真理だと錯覚させる、こうした手口で教団が資金調達する姿はキリスト教福音宣教会の存続をかけた戦略だろうか。

この記事は現代宗教から日本の読者向けに和訳、一部編集したものです。