ネット検索を禁止、恐怖で縛り逃げられなくする。自称「再臨主」の卑わいな言動に嫌悪感を感じつつ

この記事はキリスト教福音宣教会(通称:摂理)に入信し5年目で脱会に成功した女性にインタビューした体験記録です。本紙がインタビューをまとめ再構成しました。予めご了承ください。(キリスト教ポータルニュース編集部 2015年2月14日掲載)

ユ・ソジンさん(仮名37歳)はクリスチャンの両親のもとに生まれた。幼い頃から教会に通い明るい性格で誰からも親しまれる子だった。周囲は、「まさかソジンが摂理に入信するとは思わなかった」と誰もが驚いたという。摂理信者はとても巧みで計画的に彼女に近づいてきた。ソジンさんはソウルの某女子校出身だ。2000年に大学センター試験を終え、翌年2001年に性的暴行犯・鄭明析(チョン・ミョンソク)が再臨主として率いる韓国のカルト宗教「キリスト教福音宣教会」に入信してしまう。韓国では一般にJMSと呼ばれ、日本では摂理と呼ばれている教会だ。最近はCGM(クリスチャン・ゴスペル・ミッション)の名で活動している。ソジンさんは5年間、摂理信者として過ごした。

キリスト教福音宣教会(通称:摂理)入信から5年で脱会できた。「地獄の教え」に縛られ続けた彼女は元の生活に戻った。(写真:キリスト教ポータルニュース 写真は証言者本人)

クリスチャンの家庭に生まれた。しかし摂理に入信してしまう

ソジンさんが摂理の教会に足を踏み入れたのはセンター試験が終わった2000年12月頃だった。試験が終わり緊張とストレスから解放された。クラスメイトたちも気持ちがふわふわしていた時だったという。そんな時、ソジンさんの通う女子校に「卒業生でつくるダンス教室」の案内をもった先輩たちが校内で宣伝活動をはじめた。学校側は、在校生と卒業生の交流を公認していた。先輩たちはモデル級のスタイルで背が高く、びっくりしたという。「ダンス教室やっています。ぜひ来てください。」魅力的な先輩たちがクラスごとに回っては明るくチラシを配布した。実はこの先輩たちは摂理信者だった。正体を隠した偽装勧誘だ。摂理では中高の女子生徒を中心に大量に勧誘せよと指示していた。「アイデンティティが確立されていない状況で鄭明析氏(内部では先生と呼ぶ)を再臨主と信じさせれば簡単には脱会できなくなる。」そうリーダーたちは信者に教育していたからだ。

当時、この先輩たちが摂理信者だと夢にも思わなかったという。ソジンさんは先輩に魅了され、まったく疑うことなく勧められたダンス教室に入会した。ダンスを習って3ヶ月ほど経った時、憧れの存在となっていた先輩が「ソジンちゃん。これからの大学生活はいろいろあるから入学前に聖書をしっかり学んで信仰強くならないと駄目だよ。キリスト教は学んでおいた方がいいからさ」と突然、聖書勉強を提案してきた。「ダンス教室を通じて先輩を信頼しきっていました。憧れの存在だったので特に断る理由もなかったのです」。彼女はすんなり聖書勉強を受け入れた。

ユ・ソジンさんは偽装した摂理信者の先輩に魅了され、ダンス教室に入部。ここから入信することになる。摂理はサークルやイベント、教室などを通じて勧誘する。(写真:キリスト教ポータルニュース)

ソジンさんは先輩に誘われ聖書勉強をはじめた。熱心に学び足繁く摂理の教会に通ったが両親はまったく気付かなかった。理由は教会から口止めされたからだ。「学んでいることを誰にも話さないようにね」と教えられていた。ソジンさんは当時を振り返る。「ソジンちゃん!聖書勉強の時に一番気を付けるものはなんだか分かる?サタン!サタンだよ!ソジンちゃんが得た真理を奪うためにこの世はサタンの歴史が蔓延(はびこ)っている。だから聖書の勉強がばれたら駄目なの。他人には絶対に秘密にしてよ。」そう釘を刺された。ソジンさんは、信頼しきっていた先輩の言葉を信じ、秘密を守ることを自分の命と同じように大切にした。「本当に徹底して隠しました。私は摂理に洗脳されるまでたった3ヶ月も掛からなかったです」。

その後、大学4年生になるまで摂理信者として過ごした。「摂理は文化芸術に突出した才能をもつ人が大勢いました。伝道現場にもこうしたスキルをもつ人たちが派遣されていました。摂理は文化芸術を通じて信者を獲得するやり方を30年以上続けてきたと聞きました。その戦略と経験は並みのものではありません」。摂理は青少年文化センターなどでダンスや芸能系の教室が開かれているとわかると信者を派遣し企画側を取り込んで偽装勧誘に利用した。ソジンさんから興味深い話を聞いた。「摂理では中高生を伝道するように教えていました」。理由は中高生時代に入信すると簡単には脱会できないからだ。これは教団の戦略だった。ソジンさんいわく「出来るだけ幼い子を探すようにしていました」と明かした。

「入るのは楽です。抜けることは非常に難しい」。

禁じられたネット検索。鄭明析の名を調べれば死ぬと教わる。摂理脱会のきっかけは?

ソジンさんは2005年に摂理を自分の意思で脱会した。「カルトに入信した人って100%なにもかも信じているわけではないと思うんです。1%の疑いはあります。表面上は信者同士の結束で和気藹々(あいあい)としているように見えますが。キリスト教福音宣教会は鄭明析という人間がこの時代のメシアとして君臨しています。私はその存在をメシアとして迎えることを完全に信じ切ることができませんでした。特に鄭明析の容姿を生理的に受け付けることが難しかったのです」。彼女が鄭明析に帰依できなかった理由は、この教団の最大の問題点である教祖の性的嗜好にあると言及した。そこから受けつけなくなったのだ。

鄭明析氏が女性信者たちとダンスするシーン。(写真左)途中から股間を女性信者の尻に突きつける性的接触行為の様子が映っている。女性信者が複数で全裸になって入浴し「主よ。お疲れですよね?」と呼びかける動画。主とは鄭明析氏を指すとされる。これらは教祖向けに作成されたものとして元幹部級信者や被害者支援団体が公開した。(写真・キリスト教ポータルニュース)

未成年の女子高生信者までが教祖との卑猥なやり取りを喜ぶ現実

ソジンさんは衝撃的な教団内部事情を明かした。女性信者は鄭明析宛てに手紙を書き、もっと愛される努力をしていたという。摂理ではこの時代の「再臨主」鄭明析と新婦、恋人になるよう教育される。最も高い水準の救いは教祖と性行為すること、そのような教えが正当化されていた。そして多くの女性信者が教祖と性的関係をもった。

鄭明析から返事をもらったと自慢する女性信者にはある特徴があったという。「誰がみても背が高く、そして若いきれいな女性ばかりでした」。ソジンさんは、教祖が女性信者に送った手紙を何度も読んだことがあると証言した。「俺だけを愛せ。おまえを抱きしめながら犯したい」。「君の実が熟した匂いがする」「次にビキニ姿で写真を撮るときは足を大きく広げて撮りなさい」。聞くだけでおぞましい内容ばかりだ。ソジンさんは「鄭明析は女子高生にまで『犯したい』という変質的な手紙を送っていました」と明かした。ある女子高生は教祖から次回履いてくるようにとTバックのパンティーを贈られたという。

教祖が女性信者に電話をかけてくることも多かった。電話をもらった信者は「再臨主」の声を録音して大切に保存していたという。鄭明析は興奮した様子で「おまえと早くチューしたい」「ブチュブチュブチュ」(電話ごしに唇をすりつける音)という音を聞かせることもあった。鄭明析の声は特徴があり滑舌が悪いという。声だけですぐ彼だとわかるという。ソジンさんは自称再臨主の異常な言動に心を痛め続けた。さすがにどうなのかと不安な表情を浮かべると、周囲から「あなたはあまりに肉的だ」と批判されたという。それでもあまりに異常な光景に不安は募る一方だったという。

鄭明析氏を喜ばすために女性信者は全裸になりビデオを制作していた。「あなた(夫婦間で使う表現)今日一緒になれるのを待っていました」と語りかけている。鄭明析氏と思われる写真を手にしている。(写真:キリスト教ポータルニュース)

未成年が突然「伝道師」に任命 容姿の優れた女性が信仰的に評価

さらに驚いたことがあった。中高生の信者が突然、伝道師に任命されたのだ。どうしてこんなことをするのだろう?疑問を抱くと「上からの指示だ」と同じ回答しかもらえなかったという。「この子たちはまだ右も左も分からない未成年です。訓練さえ受けていない。ただ、再臨主との関係に酔いしれているだけでした」。ソジンさんは「ここはまずい」と思うようになった。この教会で信仰心が厚く評価される信者はきまって抜群のプロポーションを誇る人物に集中した。桁違いの特別待遇を受ける女性もごく限られた人たちだけだった。

もう限界だ。ネットで検索して本当のことを知りたい

彼女はこう話した。「摂理を脱会するきっかけはインターネット検索でした。もう限界だと思い2005年のある夜にネットで“鄭明析”と名前を検索してみたんです」。摂理は外部の情報や意見を聞かないよう徹底して教育される。現在もそうだ。「ネットで情報を探ればサタンに殺される」と指導されていました。「鄭明析の名前を検索するということはその場で即死する覚悟がなければできません。検索すれば死ぬと洗脳されているからです」。ソジンさんは夢中になって摂理について調べた。そこはキリスト教の異端であり、危険なカルト教団という事実を自分の目で知ることができた。

「やはり・・・」。そうときたらもう出るしかない。翌日に荷物をまとめて脱出した。ソジンさんはすぐに携帯番号を変更した。「彼らに報復される前にやるべきことをやらないと、そう思ったんです」。脱会したソジンさんは恐怖と不安で眠れぬ日々が続いた。何が彼女の心を支配していたのか。それは摂理の30講論で教える「霊界論」だった。いわゆる地獄の教えだ。

摂理が教える恐怖心のコントロール

「摂理では人が死ぬと天国か地獄に行くとは教えず、先霊界、楽園などいくつもの霊界論を深く学びます。どの講義にも地獄についての話が出てきました」。鄭明析の教理はとても残酷なものだという。「教団を脱会した人は100%地獄に落ちると何十回と学びました。“地獄伝”という絵画を見せられました。それを見せながら惨い地獄の様子が頭に刻まれるのです」。どんな内容なのかとの質問に「思い出すだけで苦痛ですね。性犯罪者は性器が切り取られる姿が描かれています。鄭明析を批判した人は舌を切り取られる姿もありました。リーダーたちからこのような苦痛は”あなたが受ける“と言われ、恐くて仕方なかったです」。現役信者はその恐怖に縛られ脱会できないのだ。

「5年間所属してわかったことは、摂理こそ真理と信じて過ごす信者よりも地獄へ行きたくないという恐怖心にしばられ留まっている人が多いことです。だから常識では考えられない要求を受け入れてしまいます。摂理は恐怖心コントロールが本当に上手いです。」

脱退してから通っていた教会

ソジンさんは脱会後、2005年から2019年まで摂理とは無関係の一般の教会に7カ所通った。最初は汝矣島純福音教会系の某教会、統合派の某教会、合同派、高神派などだ。最初は不安もあり礼拝に出席してすぐ帰宅したという。ある教会で青年部に入るよう勧められ、徐々にだが環境に適応できた。ただ、摂理と一般の教会の違いに戸惑いを覚えたという。「摂理の教会はとにかく厳しいです。伝道方法を熱心に研究し、鄭明析を再臨主と教える30講論を暗記までしました。30日間山奥で暮らし一日中祈らなければなりませんでした。カルト集団の熱心さにすべてを捧げ、必死についていこうと頑張ったのです」。

ソジンさんは一般教会の雰囲気が物足りなく感じたという。「あの結束力と鄭明析に注ぐ信仰からすると普通の教会はだらしなく思えてしまった」。摂理は信者の飲酒、喫煙、自由恋愛を完全に禁止している。普通のクリスチャンたちが自由に人と話し、交際し、楽しげに過ごす姿に「抵抗感」を抱くようになる。「私は命がけで信仰した。ここはあまりにだらしない。信用できない」。独特なギャップに苦しんだ。摂理の習慣が染みついてしまったからだ。「聖書勉強会に出席しても普通の教会のクリスチャンはなにかぎこちない話し方をするんです。摂理は寝ても覚めても戦闘的な態度で本気でしたから」。ソジンさんはすぐに社会に適応できなかった。少し通っては違う教会へ移った。

教会を転々としながらもソジンさんはキリスト教から離れることはなかった。神という存在を否定することだけはできなかったからだ。「辞めた当初は神という存在まで呪っていました。次第にそれはなくなりました」。

「脱会してから時間が経過しました。私は今こう言えます。聖書が学びたい!その気持ちから摂理に通いました。真理はなんだろう?もっと知りたい、当時の本音です。ところがそこはカルトでした。結果としてそうだったのです。無我夢中で山奥にこもり、30日間も祈り続けました。色々と疑問はありました。でも摂理の教えにすべてを捧げていたのです。カルトを出て、私には神様という存在だけは心の中に残っていました」。異端・カルト脱会者は神を強く信仰しており、教祖(再臨主)が間違いだとわかっても神への信仰心は残るケースがよくあるのだ。

2006年4月18日、摂理の元女性信者らが鄭明析からの性的被害について会見を開いた。(写真左)2014年4月9日オーストラリアSBS放送が「Inside Providence:The secretive Korean church led by a convicted rapist」のタイトルで摂理批判の特番を放送した。(写真:キリスト教ポータルニュース)

脱会者はまた教会に行きたいと思うことがある

ソジンさんは、「摂理脱会者はまた教会に通ってみようと一般の礼拝に出席するケースが多いようです。でもほとんどの人は後ろの方に座り柱の陰で静かに礼拝しています。教会員になる勇気もなく、自分が摂理にいたことを語ろうとはしません。でも、摂理を出てからクリスチャン生活をしたいなら一人で無理をしてはいけないと思いました。厳しくない、だらしなく見えた教会は本当は自由なのだとわかれば、その教会員になって新しく生きることは有益だと思うんです。世の中には色々な人がいます。人間関係を学び、自分を鍛錬しなければなりません。私は最後にはっきり言えます。もう1度ちゃんと教会に戻れた。そこで、牧師や教会員とよい交流ができています。だからもうカルトには入信しません。いえ、カルトは私を戻すことはできませんから。なぜか?摂理の秘密教育が社会で認められるはずがないじゃないですか」。

 

 

キリスト教ポータルニュース記者(代表)チョン・ユンソク氏(牧師)。キリスト教異端・カルト問題の専門記者で「わかりやすく的確な媒体づくり」を目指し2012年に同社を設立。韓国基督教異端相談所協会、教会と信仰に勤務後に独立。調査報道、被害者インタビューなど定評がある。本紙「異端・カルト110番」提携メディア

 

(玄米カフェ)実身美(サンミ)について

全国霊感商法対策弁護士連絡会(略称「全国弁連」から朝日新聞社へ申入れ

「サンミは、摂理信者らが摂理の素晴らしさを実証するために開設した店舗と認識」https://www.stopreikan.com/kogi_moshiire/shiryo_20190410.htm

本紙関連記事 https://cult110.info/category/news/sesturi-jms/

 

この記事は提携先「キリスト教ポータルニュース」(2015年2月14日)の記事を限りなく原文から忠実に和訳したものです。日本の読者向けに編集してあります。