統一協会ほかカルトの被害に取り組んでいる紀藤正樹弁護士が、被害救済に関する情報や自身の考えを発信しているホームページ「LINC 統一協会情報」を6月5日更新、「『空白の40年』=1980年代の統一教会問題の状況の整理」をアップした。1985〜86年:アフリカ救援の名目で個別訪問して募金を強要したトラブル、高額の印鑑·壺·多宝塔などを因縁トークで売りつける霊感商法が急増しているなどの朝日新聞報道、1987〜88年:日本弁護士連合会の意見書、1987年5月:全国霊感商法対策弁護士連絡会の設立経緯を掲載している。
統一協会問題は「親泣かせの『原理運動』」として朝日新聞が1967年7月7日に報じた記事を皮切りに、メディアがおもに大学生ら若者のカルト被害を追及し始めた。1970年代には、親たちから助けを求められたキリスト教会の牧師から、「原理講論」の教理の異端性やその宗教活動の不当性などへの批判が発信されるようになり、牧師らの脱会カウンセリングによって多くの原理信者(食口=シック)が救出されるようにもなっていった。
それら元統一協会員らの証言を取材したクリスチャン新聞などキリスト教メディアが、統一協会の偽装勧誘やマインドコントロールの手口、脱会に至る経緯や原理信者の心理について明らかにしていったのは1980年頃からである。しかし、多額の献金、霊感商法やインチキ募金による経済的被害は取り戻す術がなく、80年代半ばまで泣き寝入り状態というのが現実だった。
1987年全国霊感商法対策弁護士連絡会の設立により、脱会カウンセリングのノウハウを持つ牧師らと消費者被害の観点から法律的救済に取り組む弁護士らが協力して被害者救済が行われるようになり、脱会者がもたらす内部情報によって相乗的に統一協会の実態解明が進んでいった。統一協会問題で培われたカルト対策は、やがて統一協会以外のカルト諸団体の被害者救済にも役立つこととなった。
「LINC(Legal InterNet Communication)」ホームページは、カルト被害の法律情報を、インターネット上で市民と弁護士が共有することを目的に1999年に開設。その後インターネットの普及によって、情報発信ツールはBlog、Twitter、Facebookなどへ広がっていったが、基幹サイトとしてのLINKの役割は変わっていないと紀藤弁護士は捉えている。
同サイトの情報は時系列をさかのぼる形で、昨年の安倍晋三元首相銃撃事件以来の宗教法人法解散命令をめぐる法解釈、オウム真理教事件などでの過去の判例、文科省の通達、養子縁組に関する厚労省子ども家庭局の通達、国会での閣僚の答弁、2世問題でクローズアップされた児童虐待に関する法律や関係機関の対応、各省庁間や宗教法人審議会での議論、「世界基督教統一神霊協会」の宗教法人名称を、現在の「世界平和統一家庭連合」へ変更を認証した決済文書、海外での対応例、関連書籍·資料の情報などを読むことができる。