統一協会(世界平和統一家庭連合)から名誉毀損で損害賠償請求訴訟を起こされたジャーナリストの有田芳生さんが、原告側の主張に反論する512日付被告準備書面(2)を「有田芳生さんと共に旧統一教会のスラップ訴訟を闘う会」ホームページに公開した。有田氏は自身のツイッターで「統一教会事件史にとっても重要な内容です」と紹介。闘う会事務局では拡散を呼びかけている。

訴状および被告準備書面(2)はこちら

https://aritashien.wixsite.com/home/裁判関係資料

同ホームページですでに公開されている訴状によると、原告側は、令和4年(2022年)819日に放映された日本テレビの番組「スッキリ」で、有田氏の「(旧統一教会が)霊感商法をやってきた反社会的集団だって言うのは警察庁ももう認めているわけですから」との発言が、一般視聴者をして、警察庁が「統一教会は霊感商法をやってきた反社会的集団である」旨認識させ、原告の社会的評価を著しく低下させるものであり、原告の名誉を著しく毀損するとして、2285万円の賠償を求めた。

これに対し被告側は準備書面(2)で、原告の主張は事実を無視した逃げ口上にすぎないことを明らかにし、原告が反社会的集団として広く社会に認識されてきたものであり、警察庁も認めてきた事実を明らかにしている。

原告は準備書面で、「1987521日に開催された第108回国会・衆議院物価問題等に関する特別委員会における、警視庁刑事局保安部生活経済課長上野治男氏の発言中に統一教会の言及はなく、『関連商法ないし霊感商法』の主体が原告の信者らだけを指しているものではない」、「1986年に原告の信者が何らかの刑事事件で立件された事実はない」などとして、「同発言のどこを見ても、警察庁において原告が反社会的集団であると認定しているなどとは読み取ることはできない」と弁明している。

これに対し被告準備書面では、上野発言中の「霊感商法」が原告によるものと言える根拠として次の諸点を示した。

1. 既に原告による霊感商法は社会問題化していたこと

歴史的事実経過として197879年頃から霊感商法が世間に広く伝えられるようになり、1982年に国民生活センターが「印鑑、大理石壺、多宝塔に関する調査」を公表、1983年に「世界のしあわせ」(原告傘下の物販業者)各社が霊感商法の自粛の釈明文を出す、1984年に青森地裁弘前支部で原告信者らが恐喝罪で有罪判決を受ける、原告の元広報局長だった副島嘉和が文藝春秋に「これが統一教会の秘部だ」と題する手記を発表し、原告による霊感商法の実態も明らかにする、1986年に朝日ジャーナルが原告による霊感商法を批判する報道を始める、19875月に全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が結成される、などの事実。

2. 全国弁連の設立趣旨は「統一協会(統一教会)による霊感商法被害の根絶と被害者救済」であり、他団体による霊感商法被害の根絶・救済ではない

全国弁連・被害弁連(東京)は原告による被害を集計して公表している。1987年の被害は、相談件数2647件、被害金額16398266604円。日本弁護士連合会は、霊感商法の深刻化を踏まえて大規模な調査を行い、19877月「霊感商法被害実態とその対策について」を公表した。日弁連が1988年に公表した「霊感商法の被害実態とその対策について(その二)」では、「霊感商法にかかわる販売業者群の背後に統一協会の存在が推認される」「霊感商法の草創期以来統一協会が関わっており、近時の販売業者及び手口の変遷にも同協会が関与している疑いが強い」と結論づけられており、「霊感商法の草創期以来統一協会が深く関わって」いると断じている。この調査報告は大きく報道され、上野発言の前後の国会でも、霊感商法が原告によるものであることを前提とした質疑が繰り返し行われている。

3.特別委員会の発言内容からも明らかであること

上野発言中の「霊感商法」が原告によるものといえることは、他の出席者の発言内容からも明らかである(委員及び通産省・厚生省説明員による実名の発言内容を提示)。

4.1986年に原告の信者が立件されていること

少なくとも1986121日付で原告の信者が「自称鑑定士として印かん等を売っていた」ことにより、東京都迷惑防止条例違反により罰金刑を受けている。

なお、「有田芳生さんと共に旧統一教会のスラップ訴訟を闘う会」ホームページでは他に、有田芳生さんの答弁書も公開されている。

答弁書はこちら

*本紙では「世界平和統一家庭連合」の表記を原則として「統一協会」としていますが、裁判資料や組織名称に関しては「統一教会」「旧統一教会」も原文のままにしています。