信者になると家族と連絡を断ち行方不明になったり、既成教会に侵入し乗っ取ったりするなど、韓国で大きな被害を与えて社会問題になっている新天地イエス教会を名乗る手紙が、11月に大阪近郊の諸教会の牧師宛てに届いている。「総会長イ・マンヒより牧師様にお伝えしたいことがあります」として、新天地の教義の特徴であるヨハネの黙示録についての主張が書かれている。

封筒裏に印刷された発信人は「高見澤のどか」名で、住所は大阪市中央区谷町7丁目1−39―313号。この住所をネットで検索すると高層の集合住宅のようだが、313号室が教会になっているかはわからない。新天地イエス教会の日本の拠点は東京、大阪、福岡にあることがわかっているが、正確な所在地は判明していない。大阪の教会は、インターネット上では「新天地イエス教アンデレ枝派大阪」の名称でブログやTwitterのアカウントが、「新天地イエス教大阪教会」の名称でYouTubeのチャンネルがある。「枝派」というのは、12使徒の名にちなんで韓国内を地方ごとに12に区分した教区の名称で、日本の支部教会はその「アンデレ枝派」に属することがわかる。

手紙のほか、電話やメールを受け取った教会もある。発信人の「高見澤のどか」氏については不明。同じ住所で発信人が「山本裕子」「高田都美」の例もある。新天地からの手紙が発送されたのは今年3回目で、受け取った教会は全国にわたるという情報もある。この件についてさらに情報があったら、異端・カルト110番までお知らせいただきたい。https://cult110.info/contact/

このほど大阪地区の諸教会に送られた手紙の文面は、「神様は、黙示録を加除する者は天国に入ることができず呪い(災害)を受けると仰いました(黙2218-19)。この御言葉を信じますか?」「黙示録の預言が成就すれば、その成就した実態を見て信じますか? それとも迫害しますか? また成就されたことを見たならば、理解することが出来ますか? 皆様、黙示録について無知なのではありませんか?」と挑戦的だ。手紙の受取人の牧師に対して、「牧師の皆様、黙示録を加除しませんでしたか? 黙示録を加除した教会の牧師とその聖徒たちは天国に入ることができません。それが事実にも関わらず、牧師の皆様は誰を異端だと言うのでしょうか? 本当の異端とは黙示録を加除した教会と牧師とその信徒たちです」と、自らが正しく、新天地を異端視する既成教会こそ異端であると非難する。

新天地イエス教は、正体を隠して既成教会に潜入する手口で知られるが、近年は「新天地イエス教」と名乗ったうえで、牧師たちを黙示録のオンラインセミナーに勧誘する手法も見られる。昨年も秋口から年末にかけて李萬朴煕(イ・マンヒ)総会長などを講師にオンライン連続セミナーを実施し、大掛かりに宣伝して牧師らを勧誘した。「新天地の真の証は、正統な啓示のみことばを6カ原則で教えていますので、学びに来られることをお勧めいたします。自分に勇気がなくては地獄に入る愚か者となってしまうのです」「昔のキリスト教時代を捨て、真の神様・イエス様が送って下さった約束の牧者(ヨハネ14章~16章)を通して、神様が言われる新しい歌(啓示のみことば)をわからなければなりません」といった、牧師たちを挑発するような手紙が、2011年には福岡から、2021年には東京から発送されたことが確認されている。

2021年の新天地オンラインセミナーで「黙示録の預言の成就」を講義するイ・マンヒ総会長

しかし、ネット上に表示されている教会名は「新天地イエス教」でも、実際の拠点は別名に偽装することがある。本紙は20204月、東京の拠点が新宿区西早稲田にあり、早稲田大学の学生がターゲットにされていることを突き止めたが、看板は「TOKYO GRACE CHURCH」「早稲田アカデミー(現存する予備校とは無関係)」などと偽装されており、その後移転して所在不明になっていた。20212月に「東京から神様のしもべ 徐印收」名で諸教会に送られた手紙の発信元は東京都北区田端新町だった。徐印收(ソ・インス)氏は「地域長」と呼ばれる首都圏のトップで、信者教育を担当している人物だという。

新天地イエス教は、啓示(ヨハネの黙示録)は比喩的に解釈しなければいけないと教え、黙示録に書かれた象徴的な表現に恣意的な意味づけをしていくアレゴリカルな解釈法が特徴。その解釈を駆使して、イ・マンヒ総会長が「約束の牧者」「再臨のメシア」であるという結論に誘導する。もちろん、そのような解釈には聖書学的にも解釈学的にも妥当性は全くない。だが、彼らは「啓示のみことばと恵みは世の中の神学校にはない」「光の子が啓示のみことばを以て暗闇を照らす時、悟りのない愚かな者となっては、当然救いはありません」と豪語する。イ・マンヒ総会長が「歴史上で唯一、啓示を解き明かした」という結論を前提にして、黙示録の比喩は解き明かされ「約束の牧者」を示していると原因と結果を錯綜させ、そこに「預言の成就」を絡ませて惑わすマインドコントロールが使われている。

既成のキリスト教には救いがない、自分たちだけが神から啓示を受け真理を知っている、と主張する極端な排他性・独善性は、エホバの証人(ものみの塔聖書冊子協会)にも統一協会(現・世界平和統一家庭連合)にも共通する、現代の異端グループの典型的なパターンを示している。