ダビデ張こと張在亨氏が創立したオリベット大学が2020年、マネーロンダリングで有罪の罰金刑を受けたのに続き、張氏の教団であるワールドオリベットアッセンブリー(WOA)のトップ、マーク・スピサク氏に連邦捜査当局の捜査の手が伸びていることが明らかになった。ニューズウィークが20221220日伝えた。

同報道記事によると、スピサック氏は、かつてイギリスのオリベット宗派で奉仕した神学者で、韓国系アメリカ人の聖職者デビッド・ジャン(ダビデ張)氏の最も有力な高弟の一人。現在は「世界のあらゆる地域」に信者がいるという教団WOAの総主事である。

ニューズウィーク誌を発行する会社は、同誌の2人の株主(オリベット教団の現会員と元会員)の争いの一環として、WOAおよび張氏と彼の信者に関係するいくつかの機関と法的紛争に陥っている。

WOAとその米国支部であるオリベットアッセンブリーUSAは、国土安全保障省による犯罪捜査の中心となっているダビデ張氏のオリベット大学に関する法的トラブルから公に距離を置いている。ビザ詐欺、マネーロンダリング、労働者売買の証拠を捜している捜査官は、20214月、カリフォルニア州アンザにある同大学のキャンパスを捜索したことが報じられている。

連邦捜査官のインタビューを受けた目撃者によると、その襲撃の際、国土安全保障省捜査局は、スピサク氏を示す電子通信を含むコンピューターを押収した。ニューズウィークが調べた国土安全保障省捜査局と目撃者の電子通信によると、捜査官はスピサク氏に関するさらなる情報を求めていた。この目撃者は、匿名を条件にニューズウィーク誌に語った。

この捜査についてコメントを求められた国土安全保障省捜査局の広報官リチャード・ビーム氏は、「この現在進行中の捜査の保安性を保つため、これ以上コメントすることはできない」と回答したという。

2022年6月、ニューヨーク州ドーバーのオリベット大学(当時)敷地内にあるエバンジェリカルセンターに開設された世界福音同盟(WEA)オフィスのテープカット。左から2人目がスピサク氏、3人目がダビデ張氏(WEAホームページより)

WOAの広報担当ジェーン・リー氏は、ニューズウィークの取材に対し、次のように声明を発表した。「ニューズウィークは社内の所有権争いの一環としてWOAを訴えており、明らかにそのニュースルームを自分たちの利益のために利用しようとしているので、我々はあなた方に対していかなるコメントもしない。」(ニューズウィークは、ニュースルームがこの紛争における党派関係者であることを否定している)

WOAは、2000年頃にいくつかの教会の集まりとして非公式に始まり、2007年に世界的な組織としてまとまったと、そのウェブサイトには書かれている。202210月末に韓国で約1500人の代表者を集めて第30回世界総会を開き、今や160カ国以上を網羅する宣教ネットワークを持つグローバルな教団に成長したとも記されている。

(ワールドオリベットアッセンブリー〈WOA〉を名乗る教団として米国に本部を置く以前、張在亨氏は統一協会に籍を置いていた1992年頃、エヴァンジェリカル・アッセンブリー・オブ・プレスビテリアン・チャーチ〈EAPC〉を設立。その後、韓国では大韓イエス教長老会合同福音教団を設立して総会長を務めていたことが分かっている。WOAEAPC、合同福音はいずれもダビデ張氏の教団であり人脈も繋がっている。WOAの第30回総会は、実際にはEAPCが開始された1992年から30年と数えていることがうかがえる。1992年は、ダビデ張氏の共同体の終末論において重要な起点となる年号である。)

2000年に米国で始まったというワールドオリベットアッセンブリーは2022年、韓国で第30回総会を開催したことを広報している(WOAウェブサイトより)

ニューズウィークによると、オリベット大学で教育を受けたスピサック氏は、長年にわたって張氏の周辺に居続けてきた。リンクトインのアカウントによると、英国では、オリベット・アセンブリーUKのディレクターであり、オリベット教団ロンドン・エマニュエル教会の牧師であった。YouTubeビデオの中で、スピサック氏は牧師としてロンドンのウォータールー地区とサザーク地区を歩き、見知らぬ人に近づいて福音を伝えている様子を描写している。彼は自分の群れにも同じようにするよう勧めていた。米国に移住した後、スピサック氏はWOAで次々と上級職に就き、最終的には常務理事と総主事になったことを、同教団の税務申告書とウェブサイトは伝えている。彼はまた、フロリダ州サンフォードのホテルをスピサック氏が「南部本部」と呼ぶ場所に改装した不動産会社、1000 East First Estates LLCの役員でもある。

オリベットの指導者たちが韓国に集まっている間にも、捜査当局はスピサック氏と彼が率いる組織をこれまで以上に厳しく監視していた。ニューズウィークが調べた電子メッセージによると、捜査官は202212月の時点でスピサック氏に関する情報を探していたことがわかる。

ダビデ張氏の教会は過去10年の大半、その信者を悩ませてきた法的問題の中核であるオリベット大学と、公的に切り離すことに腐心してきた。

オリベット大学は2020年、マンハッタン地方検察によりマネーロンダリングの捜査を受け、張氏の数人の弟子と彼らが経営する会社とともに重罪を認めた(後に軽犯罪に軽減)。WOAもそのアメリカの教団も、この事件には関与していない。「我々の使命はオリベット大学とは何の関係もない」と、オリベット・アッセンブリーUSAのアンソニー・チウ総主事は、昨年語ったという。

その後、ニューズウィークがカリフォルニア州アンザ(オリベット大学本部キャンパス)の家宅捜索と、逃亡中のオリベットの牧師が関与するノースカロライナ州での別の偽造品事件のニュースを報じたとき、オリベットアッセンブリーはどちらの法的紛争にも関与していないと述べた。「オリベットアッセンブリーUSAは、ニューズウィーク誌がそのように描こうとする誤った風説にもかかわらず、その歴史においていかなる犯罪にも問われたことはなく、いかなる捜査にも加わっておらず、いかなる刑事告発にも結びついていない」と、6月末に声明で述べている。

オリベット共同体は、問題を抱えた大学との関係を説明し、次のように述べた。「この2つの組織は、それぞれ独自の使命、理事会、運営を行っており、互いに無関係である。この2つの組織は、同じ福音主義をルーツに持つ同じ信仰声明を共有しているかもしれないが、独立した2つの組織である」と述べている。

ダビデ張氏の信奉者は、実際にはオリベットの教会と大学のキャンパスを同列に扱っているように見えることがある。イリノイ州では2022年、州の教育当局がオリベット大学に、開設が許可されていない拡張キャンパスでの講座の宣伝をやめるよう要請した。同大学は、そのキャンパスをホームページから削除した。現在、この土地には教会があり、オリベット神学校の講座を宣伝している。同じことがジョージア州でも起きた。オリベットのキャンパスは、非宗教的なコースを教えることを妨げる規則に違反したため閉鎖され、代わりに同じ住所を使ったオリベットの関連教会が立ち上げられた。

教会と大学のつながりは、それほど明白にされていないこともある。オリベット大学の最高執行責任者であるウォーカー・ツェン氏は、サンフランシスコにあるグラティア・コミュニティー教会の牧師である。グラティアの2020年の納税申告書にも、教会の「about us」ページにも「Olivet」という単語は登場しない。グラティアは、マンハッタン検事の調査で重罪を認めたオリベット大学の元理事長、トニー・リンことアンドリュー・リンによって法人化されているのに、である。

ツェン氏は、スピサク氏と同様、世界的な福音派コミュニティーの中でオリベットの著名なメンバーである。ツェン氏は、世界福音同盟IT委員会のエグゼクティブディレクターを務めている。また同様に、キリスト教の宣教を推進するためにテクノロジーを活用することに重点を置く世界福音主義神学研究所協会の専務理事でもある。オリベットは、世界福音同盟で重要な役割を担っており、ダビデ張氏の宗派は、救世軍を含む6つの世界的な教会ネットワークのうちの1つであると述べている。

(世界福音同盟は、オリベット大学などダビデ張氏のいくつかの組織とその幹部がニューヨーク州マンハッタン検察庁から2018年に詐欺罪、マネーロンダリング容疑などで起訴された後、オリベット大学構内のエバンジェリカルセンターにあった事務所を、トリニティ神学校のあるイリノイ州ディアフィールドに移転していた。だが、2022年に再びエヴァンゲリカルセンターに戻ってきたと見られる。)

張氏が「再臨のキリスト」として知られるメシア的人物であると一部の信者が主張した後、世界福音同盟は張氏が異端者であるという疑惑をかわすのに協力した。張氏はこの疑惑を否定しているが、米福音派誌クリスチャニティトゥデイは調査してこの主張を確認したと述べている。世界福音同盟はコメントの要請に応じなかった、とニューズウィークは伝えている。

米国では、一部の福音主義者はオリベットに対して我慢の限界に達している。全米福音同盟(45,000以上の教会を代表する団体)は、8月にオリベット大学の会員資格を一時停止したと発表した。