元信者キム・ソル(仮名)さんによる証言 洗脳の実態、「異端規定解除」の情報操作など明かす
現代宗教2021年06月25日
はじめに
万民中央教会の最高指導者、李載禄(イ・ジェロク=服役囚)による女性信者への性的暴行事件が明るみに出て3年が経とうとしている。あの教会で負った傷も「あの時はそんなこともあったよね」と笑って話せるほどまで回復できた。(以下、キム・ソルさん寄稿)
李載禄(以下、李教祖)の性的暴行事件に関する大法院(日本の最高裁判所に該当)の判決後、被害女性に賠償を命じる判決が言い渡され、被告側の証人として出廷した信者の偽証罪も有罪が認められ懲役6ヶ月執行猶予2年の判決が下った。教祖が投獄されると教会にさまざまな問題が発生した。それは李教祖の娘たちによる主導権争いだった。三女・李(イ)スジン氏を中心とするグループと、神の言葉を直接啓示するという李ヒジン氏(支教会総指導教師)を中心とするグループに分裂。さらに本部教会が20年近くにわたって不法占有(宗教施設を禁止する工業地区)状態であることが判明し、本部移転に追い込まれているのだ。2002年からすでに違反金約30億ウォン(約3億円)を国に納めていた。
万民中央教会の異端性と教祖が行なった隠された性的暴行の実態を知る一部の信者は、教会存続と仕える信者家族を守るために教会改革をするべきだと主張した。私の経験から言えば、万民の教理を真理と確信している信者らは誰かに言われたくらいで簡単に考えを改めることはあり得ないと思う。
問題が発生して、それが神の働きとして本当に正しいことかどうか自分で疑いを持って調べるとき、神はその行いを助けてくださる。一連の事件で私のように万民中央教会の中で混乱し、さまよっている人がいるなら、私が書くこれらの思いを通じて慰めになることを願う。なにより万民から抜け出し、神の中で自由に生きてほしいと思う。
1999年に生まれた私
私が生まれた1999年は万民中央教会にとって激動の年だったという。これは熱心な信者だった母から聞かされた言葉だ。この年、李教祖の性暴力と不正問題を取上げた特別番組を放送しようとしたMBC放送を信者らが押し掛け襲撃した。器材を破壊し、職員に怪我を負わせ放送室を占拠したのだ。教団ぐるみの放送妨害事件だった。私は生まれてから一日の大半を万民中央教会支教会(支部)で過ごした。いつもGCN(万民TV放送局)を聴きソウル本部教会から配信される映像を見ながら礼拝する日々だったという。
モニターに映る李教祖の姿を見ながら育った私は同年代の友人もおらず、味気ない毎日を過ごした。李教祖は説教で「人は不幸を経験しなければ幸せを感じることはできない。悲しみと苦痛を経験した後、不幸を体験してみてこそ本物の幸せの価値にきづくことができる」と語っていた。
また、「人を創造された神の意志は、人が地獄に行くのではなく永遠に天国で暮らすことにある」と述べ、李教祖が描く天国「新しいエルサレム」に入ることを熱心に説いていた。こうした言葉に私は洗脳されていた。
私が覚えている万民中央教会の偽り
李教祖は説教で「私のことを異端と規定した人物はみな惨めな死に方をした」と会衆に話したことがある。この「みな」とは誰であるかは具体的に言わなかった。ただ話しの前後から故・朴潤植(パク・ユンシク)の幹部信者で専属運転手Bによって殺害された現代宗教創設者、故・卓明煥(タク・ミョンファン)氏のことだとわかった。絶対的な権力を掲げた朴により設立された旧・大声教会(現・平康第一教会〔救済史シリーズ〕)の不正問題を追及していた卓氏が待ち伏せされ、Bに襲撃された事件だ。李教祖はこの悲劇的な犠牲を惨めな死に方とののしったのだ。
このとき、故・卓氏の合成写真を見せながら「こんな人間が私を異端と断罪した」と嘆くような表情で批判したことを覚えている。その写真は男性である卓氏が巫女の衣装を着ているという奇妙なものだった。他にもある。韓国を代表する異端研究者(大韓イエス教長老会統合派所属)、崔三卿(チェ・サムギョン)牧師についても「この人は異端認定された人物だ。マリア月経胎孕(たいよう)論(注1、2)を支持している。こんな人が私を異端だと言うのだからどうしようもない」と非難した。
(注1)マリア月経胎孕(たいよう)論=正統的なキリスト教は処女マリアが聖霊によってイエス・キリストを胎に宿したと信じる。その教えは事実ではないという立場がマリア月経胎孕論で聖書の教えに反したものと批判されることが多い。
(注2)韓国基督教総連合会という団体において異端解除された関係者らが正統な異端研究を行なう崔三卿牧師を攻撃するために虚偽の疑惑を提起し「異端規定」した騒動。所属教団はすみやかに崔牧師の潔白を証明する調査を行ない「事実無根」と報告した。異端と規定される教会側はこの事件を現在も利用して崔牧師を批判している。
李教祖はなんとしても自分の力を誇示したかったのだと思う。こんな発言もあった。異端規定を受ける教会側が運営に深く関与している韓国基督教総連合会(CCK)が国民日報に掲載した「韓国教会の信徒へのメッセージ」という広告のはなしだ。「韓基督教総連合会は崔三卿牧師により無実の罪に問われた牧師、団体に対して再審の準備がある」というものだった。異端規定された関係者を団体は迎えるというキャンペーン広告だ。この広告を万民中央教会は公式サイトに掲載。教祖が「まもなく我々も異端解除される」と宣言したのだ。
この話を聞かされた私は「あ!これで私たちも韓基総に加入できる。ようやく異端解除されるんだ」と喜んだ。信者たちも期待した。李教祖は当時の韓基総代表会長だったホン・ジェチョル牧師と親しかったので「彼がその気になればいつでも異端解除してもらえる」と教祖自ら発言していた。その後、万民中央教会が韓基総において再審申請をしたかは不明だが、結果的にどの団体も李教祖の正統性を認めず、異端として今も警戒していることは事実だ。
(次号に続く)
異端・カルト110番編集部
万民中央教会は日本国内で6つの教会を運営しています。それ以外にも「万民」と名乗らないで一般的な教会と見分けが付かない「イエス・キリスト グレースチャペル」などと看板を出し教会を増やしていることがわかりました。超教派のキリスト教FBグループにも参加しており注意が必要です。