旧バンソク教会 過激な宗教活動、共同生活 死亡事件を隠蔽・・・14年目の真実 家族が証言

韓国主要教団から「異常な神秘主義」「新使徒運動の影響を受けた危険思想」が原因で異端認定されている基督教大韓神様の聖会バンソク教会(現・アメン忠誠教会)牧師、イ・インガン氏について元信者家族がインタビューに応じ、「不当な扱いを受け姉は教会から消された」と訴えた。14年前の事件だというが牧師の言葉を信じ、絶対服従を強いられた信者らは医療行為が「罪」だと教え込まれ、当時教会員Aさんは教会に放置されたまま死亡。遺体を復活させる儀式をした挙句、家族に断りもなく夜中に火葬していたことがわかった。

(異端・カルト110番編集部より)この記事は韓国「宗教と真理」に掲載された記事と資料に基づいて一部編集して紹介しています。画像は宗教と真理の著作物です。イ氏の教会は日本では確認されていません。同じような神学を掲げるベレア神学(鬼神論)、それに影響を受けた異端教会には十分な注意が必要です。

旧・基督教大韓神様の聖会バンソク教会元信者家族、死亡した姉Aさんについて取材に応じた(画像:宗教と真理)

はじめに

この記事に登場するイ・インガン氏はみずからを「イエス・キリストの御言葉を代弁する者」と称し、病気は悪霊による仕業だと言って奇跡体験、いやし、預言を強調する活動を続けている牧師だ。1997年に基督教大韓神様の聖会「バンソク教会」を設立。2011年までに5つの「バンソク系列教会」を立ち上げ、さらに「純福音恵みの充満教会」も設立した。その後、2011年にアメン忠誠教会を設立。現在はアメン忠誠教会の主任牧師を務める。汝矣島純福音教会の傘下教会ではないが教会間の交流はある。イ氏は純福音教会が発行母体である国民日報で2012年に部会常任会長を務めた経歴がある人物だ。以下はイ氏が最初に立ち上げた「バンソク教会」元信者家族の証言である。

Aさんの遺体を放置するように指示したというイ・インガン牧師(画像:アメン忠誠教会YouTubeチャンネルより)

姉の死について本当のことを話したい 無念を晴らしたいです

何から話せばよいか迷います。2005年9月頃、仁川にあるバンソク教会に母と私、姉の3人で入信しました。牧師はイ・インガン(女性)という人物です。イエス・キリストの言葉を取次ぐ特別な存在として信じられていました。教会はイエス・キリストの権威を強調するところでイ・インガン牧師はイエスの言葉を取次げる特別な存在でした。癒やし、奇跡、預言、こうしたことを中心に行なう教会でした。

当時、私は21歳。1つ年上の姉Aがいました。姉はこの教会の2階203号室で亡くなりました。この悲しみをどう伝えればよいか・・・。姉は本当に無念だったと思います。骨と皮になるまで牧師の命令により適切な治療を受けることができず放置され命を落としたからです。姉は教会の部屋で亡くなったのですが、「生き返る」と牧師に言われ真夏に5日間も遺体を放置されました。腐敗する姉の遺体を私たちは「生き返る」と信じてただ見守っていました。5日目の夕方に教会側が医師を呼んで死亡診断書を作成したそうです。そのまま男性信者たちが夜中に遺体を運び出しどこかで火葬してしまいました。一連の過程について私たちは何も知らされませんでした。

亡くなる前のAさん。牧師の指示に従い治療を受けなかった。38キロまで体重が減少した。

治療は不信仰 病気、精神病は悪霊の仕業 洗脳された教会員たち

姉は運動神経がよい明るい人でした。とても健康でした。2006年秋頃に風邪を患い体調を崩しました。バンソク教会に入信してしばらくのことです。姉は入信前に結核を患ったことがありました。心配して牧師に相談しましたが「外のことを気にしてはいけない。医療は反聖書で治療を受けることは不信仰だ」と否定されたのです。牧師は「鬼神」(悪霊)について説教していました。病気は悪霊の仕業で、特に精神病はもっとも重い悪霊による攻撃なのだと聞かされていました。

姉は牧師の教えに従いましたが。私たちも信じていました。教会員も牧師の言うことは何でも従っていました。姉は203号室に閉じ込められ、治療を受けることもなく薬も飲まず、最後は血を吐いて命を落としました。こんなショックな出来事も牧師の言葉を信じていた私たちは、その死を悲しむよりも奇跡を体験できる喜びに浸っていたのです。「すぐ生き返る」イ・インガン牧師はそう言いました。「放置していい。すぐに生き返る。何もしないでいい」。姉の遺体は5日間もそのまま置かれていたのです。その状況を証言できる元信者は10人以上います。教会員は洗脳されています。

イ・インガン牧師は「A(姉の名前)の死は輝く復活の奇跡を世に示せる」と語っていました。そして、遺体を常にビデオ撮影するように信者に命じました。生き返る瞬間を記録しなさいと言っていました。こんな奇妙なことを皆当たり前のようにやっていました。

死亡する前のAさん。礼拝の時間は信者に抱えられて部屋から連れてこられる。(左側の髪の長い女性がAさん 画像宗教と真理)

この教会は地下に礼拝堂があり、1階は教会運営の大きな食堂がありました。2階と3階は7家族が暮らせるほどの居住空間がありました。4階は牧師の私邸でした。イ・インガン牧師は訓練院などを立ち上げソウル集会と仁川を行き来し多忙な時期でした。

この教会は信者から「ママ」と呼ばれるイ・インガン牧師が絶対的な存在でした。牧師は「自分と同じ能力がある信者は必ず牧師按手をさずける」と言っていました。だから信者は牧師按手を受けたくて何でも従っていました。姉に対する祈りも過激なものでした。胸を激しく叩いていました。集中祈祷と呼ばれるものでした。悪霊を追い出さないと救われないので周りはただ喜んで見守っていました。衰弱した姉を男性信者が抱きかかえ地下の礼拝施設に連れて来ては、また203号室に戻しました。姉は適切な治療を受けることなく2007年7月30日に死亡しました。

牧師は恐ろしいことを言いました。「すぐに生き返る」と。亡くなって3日目には信者を幹部部屋に呼び「この子は生き返る。顔を見てみなさい。血色が良いではないか。唇が赤い」そう言うとそのうち立ち上がると言って部屋を出ていきました。4日目、牧師は姉の死に関心がなさそうでした。3日目に生き返るはずでした。イエス・キリストは十字架で死に3日前に肉体が復活したという理由からです。

「あとは家族が復活の瞬間を見るように」と言われました。7月、真夏のうだるような陽気で部屋にはハエがたかり、悪臭が漂っていました。タオルで鼻を覆って部屋の中にいました。姉の皮膚は黒く変色し直視できないほどでした。5日目、私たちに何の断りもなく牧師が指示すると遺体を運び出し、夜中に火葬したのです。牧師は火葬した事実も姉の死の詳細も教会員にはまったく説明しませんでした。だから姉は生き返るものと信じて普段通りの生活がここでは行なわれていたのです。これが「ママ」と慕われた牧師の本当の姿です。

埋葬先も不明のまま14年が過ぎた

耐えきれずあの教会を飛び出して14年になります。姉が亡くなり14年経った2021年6月、私と母は姉が埋葬された合同墓地を初めて訪ねることができました。教会側は合同墓地の場所を教えず、教会は名称を変え、移転したためです。周囲の協力で場所を確認することができました。ようやく、姉の墓参りができたのです。教会はこの事件を隠蔽しています。隠された問題を明らかにしなければいけません。

私たちはイ・インガン牧師に洗脳され、正しい判断を下すことができませんでした。あのとき、私たちに正常な思考があれば姉を救うことができたはずです。申し訳ない気持ちと罪悪感でとても苦しい日々でした。あの教会で受けた言葉の暴力、聖書を使った支配、そして長時間労働の日々・・・。14年経ってもその傷みは癒えません。社会的適応にもずいぶんと苦労しました。

当時、熱心な信者だった母はイ・インガン牧師の言葉だけを信じていた

教会は牧師の言葉がすべてでした。母の影響で通うようになりました。先程も話したとおり、病院へ行くことも禁止され薬も飲めませんでした。家族は教会で共同生活をしましたが、自分の親を「お母さん」と呼ぶこともできません。同じ立場、同じ身分、信者はイ・インガン牧師の子どもという考えです。外の世界に期待すると信仰がなくなると言われ、それが恐くて誰も教会以外に期待しませんでした。姉は肺結核を患っていた(入信前に病院で診断された)事実をイ・インガン牧師には告げました。しかし、そんな医療は邪悪だと首をふられ、自分の祈祷によって治すことが信仰だと忠告されました。姉に対する祈りを覚えています。「サタンよ、出て行け」と叫び胸を拳で何でも叩きました。頭を掴んだり、殴っているような仕草も見ました。姉は痩せていき衰弱しました。元気だった姉は体重が38キロまで減りました。皮と骨だけのような姿でした。私たちは何も口答えできませんが、どうしたらいいのか?イ・インガン牧師に懇願したことがあります。すると「悪霊を追い出せばいい」「病気は悪霊による仕業だ」とだけ言って相手にされませんでした。

こうして姉は203号室で亡くなったのです。母は「牧師様に野菜売りに出ろと言われた」と言っていました。そうです。イ・インガン牧師は姉を復活させるのでその間、信仰の訓練として教会の事業に精を出すように命じたのです。得たお金は牧師に渡さなければなりません。もちろん無報酬です。洗脳されていた母は姉の遺体が火葬されているらしいという情報を耳にしても、光り輝く姿で戻ってくると信じていました。

2012年12月、私と母は教会を出ました。出る寸前、イ・インガン牧師の言葉に惑わされている信者たちが「やめても居場所をつきとめる」と言って脅したのです。抜けてからストレスと過労で体調を崩して何度も入退院を繰り返しました。報復されるかもしれない。この恐怖で何度も引っ越しをしました。

(インタビュー終わり)

 

元信者家族の証言でわかるように、信者が外部と接触できない環境に危険性を感じる。イ・インガンは「最後の晩餐」という説教(音声19分15秒から38秒)で「精神病も治し、病気も治すという歴史を起こさないといけない。精神病者は悪霊に支配されているので救いを知らない」と述べている。この教えは異端教理であるベレア神学(鬼神論)の影響を受けていることが主要教団の調査報告で明らかになっている

病気を悪魔によるものだと決め付け差別的に扱う危険な思想だ。教会の公式サイトには「高血圧、糖尿病、大腸がん、関節炎などがすぐに治った」と書かれている。

イ・インガン牧師(写真:中央)異端として警戒される人物だ。信者が誕生日を祝う。「ママ愛しています」と書かれている。(画像:宗教と真理)

イ・インガン牧師「私が言うことはすべてそのまま従いなさい」

元信者家族の証言は氷山の一角に過ぎないと思われる。主要教団から異端規定を受けるイ・インガン氏は自らを神格化させ、病気の癒やしを売りに独善的な教会運営を続けているのだ。具体的にどのような説教が語られているのか紹介する。以下はイ・インガン牧師の説教の録音ファイルだ。

「悪霊は私を恐れている。言いたいことはわかるか?悪霊を捕まえてばくっと食べてやりましょう」

「薬を飲む人間は知恵がない。目が見えない?それなら私が祈り治そう。てんかんだって治せる。去れと言えばてんかんも消える」

「大切なことは皆さんが犬のようになることです。牧師は皆さんを犬だと思って扱います。いいですね?」(忠実に従えという説教)

「これはとても大切なことです。私が言うことをすべてそのまま従いなさい」

「皆さんは犬なんです。犬のように扱われながら最後まで生きなさい。犬なのに、なんで犬扱いするんだと言うんですか?犬は犬として生きるのです」

「ここでは痴呆症の人をたくさん治しました。精神病者も治せました。今、お金は必要ありません。そのうち、世界中からここに人が集まりますから。みんな、お金を抱えてやってきますよ。皆さんは何しているんですか?お金は必要ないとは言いましたが、他から来る前にまっさきに皆さんがするべきことがあります。お金を作りなさい。まだ十分ではない。一瞬にして作りなさい」(献金のすすめ)

「ここに来れば薬はいりません。皆さんから薬を回収しました。病気になっても正常になることができます。とてつもない奇跡がここにあります。精神病者は薬を飲んでも治りません。サタンを追い出して完全に治します」

以下は教会幹部信者による牧師紹介のメッセージである。

「明け方の礼拝の時間になり、イ・インガン牧師様が川の上流の方へ歩いていかれる姿が見えた。すると大きな声が聞こえた“見ろ。ママだ。ママがおられる”。するとママは“あなたを愛している”そう答えてくださいました。天から“従順に生きなさい。私の言葉に従いなさい”という声が聞こえた。牧師様は女性でいらっしゃる。だから私たちは親しみを込めてママと呼び、牧師様が神様をとても愛し、大変な苦労をされ、従われるので私たちも同じように従えと神様は教えてくださいました」。この説教には続きがあり、信者たちはイ・インガン牧師を称賛すると直接啓示、幻、預言、イエスの代弁、神秘体験について語っている。

本紙(宗教と真理)は事実確認を行なうためイ・インガン氏本人の携帯に電話をかけたが、教会員と思われる人物が出てすぐに着信拒否されてしまった。教会の電話も誰も取らない状態だ。

韓国主要教団は、イ・インガン牧師について過激な神秘体験を強調する反聖書的な人物、新使徒運動に傾倒する人物として「異端」と規定している。