現代宗教 2021年1月7日)

旧・統一協会(正式名称=天の父母様聖会・世界平和統一家庭連合)の教団発刊新聞「世界日報」が昨年10月末にソウルの龍山区(ヨンサン)に本社を移転した。ソウルの超一等地として有名な龍山地区にそびえ立つ34階建てのセントラルパークタワーは22階から33階まで統一協会が所有し、31階から33階を世界日報がオフィスとして利用している。財力を見せつけた形だが、その資金源の多くは霊感商法などを含む日本からの献金でまかなわれたと見られている。移転後まもなく、世界日報は巨大な垂れ幕をビル壁面に掲載。スケールの大きさに話題を呼んだ。

白い垂れ幕は屋外広告物法に違反していることが明らかになった(画像:現代宗教)

ところが、この巨大な広告が屋外広告物法に抵触していることが明らかになった。34階建てのセントラルパークタワーには22階部分から25階までビルの片側を覆うように垂れ幕の広告が掲げられた。緊急時の避難の妨げになるなどの理由から規定外の広告をビル側面に吊すことは法律で禁じられているという。垂れ幕には「天の父母様の聖会のもと、新統一韓国へ導く正論、世界日報の移転をお祝いいたします。ワシントンタイムズ」と書かれている。ワシントンタイムズも故・文鮮明が創刊した新聞社だ。

違法性について外部から通報を受けた龍山区は昨年11月12日、世界日報本社に垂れ幕の撤去を要請した。世界日報は区からの要請を受け、違法性についても認めた上で撤去を約束。21日に自主撤去したことがわかった。

ソウルの超一等地に建つセントラルパークタワーの大部分を統一協会が借り上げた(画像:世界日報)

「世界日報」が違法性を承知の上で垂れ幕を掲示した理由に注目する必要がありそうだ。故・文鮮明(ムンソンミョン)氏と妻の韓鶴子(ハンハクジャ)氏を神格化し、その統治の下で新しい韓国を作るという統一協会の重要な理念と教理が読み取れるからだ。同社は創設者の文鮮明氏が宣言した「愛天、愛人、愛国」の精神を企業理念に掲げている。ワシントンタイムズは一般メディアとして地位を得ているが、世界日報が今になって改めて統一協会に基盤を置くメディアであることを世に示したのは、二代目再臨のメシアである韓鶴子氏の権力を誇示する狙いがあると考えられる。