元幹部信者・鄭海東氏がもくろむ第二の新天地に警戒、ネット布教で大きな影響力を誇示
韓国では新型コロナウイルス感染拡大の発端となった新天地(正式名称=新天地イエス教証拠〈あかしの〉幕屋聖殿)が社会から厳しい批判と追及を受けている。5月22日には検察当局が信者らのコロナ感染症予防に対する調査、診察を組織的に拒否、妨害した「コロナ防疫妨害の容疑」と民間団体から刑事告発された教祖イ・マニ(李萬熙)氏(89)の「背任・横領などの疑い」で強制捜査を行なった。果川総会本部を含む国内関連施設を一斉に家宅捜索した。さらにソウル市は新天地の宣教団体にあたる「新しい天新しい地証拠幕屋聖殿イエス宣教会」の社団法人設立許可の取り消しを決定した。
新天地にとってコロナ事件は存続の危機に陥る致命的な打撃となったことは間違いない。この時代の救い主(保恵者、王の王)として崇められ、組織的な偽装伝道を指示して多くの若者を入信させてきた教祖イ・マニが社会から批判され、教祖みずから取材陣の前で土下座する姿をさらしたからだ。
新天地勢力が弱体化する中で早くも「第二の新天地」「ポスト李萬熙」を狙う元幹部信者の活動が活発になってきた。その人物の名は鄭海東(チョン・ヘドン)氏。新天地の支派長(教区)を務めた元幹部信者だ。揺れる新天地は今、信者の中に動揺や不安が広がり始めている。彼が作った宗教的コミュニティーは今日まで新天地の外郭団体だと考えられてきた。
新天地を脱会しながら組織批判をせず、教理を広める活動を続けていた
チョン氏の活動は実に不可解だ。2006年7月に新天地を「倫理的な問題」を理由に脱会している。彼は韓国内の新天地12支派(教区)の一つ“アンデレ支派で教区長を務めた元幹部信者だ。教団内で高い地位につき、彼のもとで何万という信者が活動に従事していた。脱会しても組織批判をせず、本格的な新天地教理を発信し、現役の新天地信者向けの信仰相談窓口まで設けていた。
YouTubeを活用し新天地信者を扇動する「分派設立」の動きあり
チョン氏は新天地から離れると彼を師と慕う熱心なある青年と合流し、宗教的コミュニティーを立ち上げた。集まった信者に聖書勉強を通じて教えを広める活動を始めた。しかし、新天地を批判せず、むしろその教理を保護しながら現役信者に結束を呼びかけていた。その後、韓国の名門大学「梨花(イファ)女子大」の周辺をベースに単立教会を作り、2015年頃から各地を転々としながら教会活動を続けていた。YouTubeチャンネル「はじまり」を開設。現在は永登裏区道林洞(ヨンドゥンポグ・トリムドン)にある某ビル内で「望み(ソマン)教会」の名で集会を開いている(訳注:大韓イエス教長老会統合派のソマン教会とは無関係)。専門家の間では、チョン氏の宗教活動は新天地崩壊後も教理を守り、信者の信仰教育を行なう外郭的なコミュニティーと考えられていた。つまり、新天地こそ真理だと信じる再建派だと分析されていた。
新天地が社会的追及を受け弱体化が進む中、突然チョン・ヘドンは本性を現した
ところがこの状況が一変した。コロナ問題で新天地が社会から厳しい追及を受けるようになると、チョン氏はそれを待っていたかのように新天地と教祖イ・マニを痛烈に批判する行動に出たのだ。彼はYouTubeチャンネル「はじまり」から配信する動画で新天地の組織としての問題や教祖の言動を批判するメッセージを発信し始めた。彼を慕う新天地現役信者は少なくない。教団が存続の危機に陥り、高齢の教祖の最期が現実味を帯びたこのタイミングで、チョン氏は現役信者を救済するような「取り込み」に乗り出したのだ。動揺し不安を抱く現役信者にとって新天地教理を熟知し、それを守ってきたかつてのリーダーの存在は大きい。チョン氏は本性を現した。亜流団体の誕生を意味するのだろうか。
新天地現役信者をターゲットにしている
チョン氏は4月1日付のYouTubeチャンネル「はじまり」で「私は新天地教理を広めるために正しい神学を伝える努力している」とコメントしている。ところがこの発言は彼の本当の目的を隠すための偽りのメッセージだと指摘する人物がいる。チョン氏のコミュニティーを脱会した元メンバーA氏の証言だ。「チョン氏はコミュニティーの中で新天地崩壊後、自分が新天地をひっぱっていくことになる。その日に備え成長を遂げなければならない」と聞かされたと明かした。A氏は「チョン氏は新天地と限りなく親和性を保ち、多くの現役信者に影響力を与えていた。そんな彼は教祖イ・マニを“遊女”と批判し、新天地の肉体永世とこの時代の救い主という教えを自分にあてはめて教育していた」「チョン氏は新天地の再建を繰り返し主張していたがそれは表向きの姿で、実はポスト“イ・マニ”を狙う本心を隠すためだった」と証言した。
新天地が崩壊した場合、チョン・ヘドン氏が救い主になる可能性は極めて高い
Aさんは次のように語った。「新天地が崩壊したとします。20万の信者が混乱の中、多くは脱会することでしょう。行き場を失った彼らは社会適応が難しく、ましてや既成教会の正統信仰に立ち返ることはさらに困難です。何年にもわたって固く信じてきた新天地の比喩的解釈と絶対的な教理に縛られているからです。信者たちは組織が崩壊しても教えを手放すとは思えません。混乱に乗じてチョン氏が第二のイ・マニの役割を果たす可能性があります。彼に従う信者は少なくありません」
韓国を代表するキリスト教異端研究、相談機関・韓国キリスト教異端相談所協会(会長=陳用植牧師)で九里支部所長を務めるシン・ヒョンウク牧師は「イ・マニ死去後、混乱状態に陥った新天地信者は新天地の教えに近いチョン・ヘドン側に助けを求める可能性がある」と指摘。「チョン氏は新天地を牽引する恐れがある人物とみて警戒するべきだ」と注意を促した。シン・ヒョンウク牧師は1986年から2006年まで約20年間にわたり新天地幹部信者として従事した経験を持つ人物。脱会後、新天地問題のスペシャリストとして活動を続けている。
教会と信仰「第二の新天地、教祖死去後のポストを狙う人物は10人いる」
異端問題専門メディア「教会と信仰」は「新天地崩壊後にチョン・ヘドン氏のような“ポスト”イ・マニを狙う人物は少なくとも10人はいる」と指摘している。脱会したと言いながら新天地の実態を批判することなく現役信者に近づき「聖書勉強会」を始める人物や内部にいながら求心力を誇示する幹部がいるという。このチョン氏は最も警戒される人物だ。旧統一教会(新名称=天の父母様聖会)の元幹部らが故文鮮明を再臨のメシアと教え導く原理講論を巧みに利用して、自身を「再臨のメシア」(再臨のキリスト)と信仰させる「統一分派」が存在するように、新天地も「救い主」(保恵者、王の王)になろうと教祖の座を狙っている人物がいる。教会と信仰は「被害を最小限にとどめるために教会は一致して脱会者救済に関心を示すべきだ」とキリスト教界に呼びかけている。
第二の新天地、再建派、教祖死去後の自称救い主の座を狙うとされるチョン・へドン氏の活動は、隣国韓国の問題だけでは済まない状況だ。日本の新天地でも若い学生を次々に勧誘し偽装教会で活発に教育を行っている。チョン氏の力が海外にまで及ぶのか、十分に警戒しなければならない。
この記事は韓国異端問題専門誌「現代宗教」「教会と信仰」から翻訳しました。日本の読者向けに一部編集して掲載しました。