13日、水原地方裁判所は昨年2月に新天地(正式名称=新天地イエス教証拠〈あかしの〉幕屋聖殿)の大邱市在住の女性信者から感染拡大した新型コロナウイルス拡散事件について政府の防疫調査を妨害した疑いで8月に逮捕された李萬煕イ・マニ=89)氏(総会長)に対し、感染症予防法違反については無罪を言い渡した。しかし、教団の献金を私的に使い込んだ横領罪についてはイ氏の関与が明らかだとして有罪とし、懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。

執行猶予付き有罪判決を受けた新天地の教祖李萬煕(イ・マニ)氏(画像:現代宗教)

水原地裁刑事11部(金美教裁判長)は「防疫当局は新天地側に施設の現状の報告と信者リストを提出するように要求した。これは疫学調査とは見なすことはできない」とし、「疫学調査ではなく情報収集の段階で新天地側が一部の資料を提出できなかったと判断し、防疫活動を故意に妨害したとは言い切れないため感染症予防法違反で処罰することはできない」と述べた。つまり、2月に起きた信者によるコロナ感染拡大事件の最大の争点は新天地側が防疫当局の調査に対し、信者リストを偽装して宗教団体としての実態を隠そうとした「妨害行為」「隠蔽行為」の有無だった。当初、検察は「教祖の指示で組織的に隠蔽した」と主張、「有罪に持ち込める」と自信をのぞかせていた。しかし、判決では「防疫当局の最初の調査が疫学調査ではなく、情報収集目的での接触だった」と判断。この段階で新天地側が提出する資料に漏れがあっても不自然ではなく、意図的なものではないという結論となった。

謎に包まれたカルト集団として韓国社会から激しい批判を受けた新天地の教祖は昨年2月18日に大邱新天地教会で最初のコロナ感染者を出してから330日目にして一部有罪という結末を迎えた。裁判所の外では寒空の下、被害者家族の会のメンバーが新天地に対する抗議活動を続けていた。家出して所在不明になった子どもたちを返してほしいと訴えていた。新天地はコロナによってその存在が世界的に知られるようになった。脱会信者への集団リンチ、追及する教会に放火、被害者支援団体への嫌がらせなど信者による事件は数え切れない。組織的に離婚を強要し、教えを広めるため軍事訓練なさがらのトレーニングをしている実態も明らかになった。信者が訓練の過程で命を落としている。教祖は妻がいるが、長年、キム・ナミ氏と暮らし寝食を共にしてきた。ところが、キム氏が教団で影響力を持つと「裏切り者」と糾弾し追放した。自分以外の牧師は「腐敗している」と言い、信者には厳しい生活のルールを強いる。敵とみなした相手を監視、尾行する行為は最近まで行なわれていたと、脱会した元全国大学部長の朴スジン氏が会見で明らかにした。

今回の報道だけをみるとイ氏の罪が晴れたように見えるかもしれない。実際は信者の献金を私的に使い込んだ横領の罪が「有罪」として重くのしかかった。

裁判長は「被告は52億ウォン(約5億2千万円)相当の教団財産で加平「平和の宮殿」を私的な目的で建設した。これは新天地資金の横領と認めることができる」とし、「被告は新天地の宗教活動に月1回も参加しておらず、施設(平和の宮殿)も被告の私的な生活空間となっており、その様子から平和の宮殿は住居と認定される」と述べた。コロナ問題で土下座会見をしたあの宮殿だ。

他に起訴された3人の被告はそれぞれ200万ウォン、100万ウォン(約20万円、10万円)の罰金が命じられたが感染症予防法違反については無罪が言い渡された。イ氏は代理人を通じて即日控訴し、無罪判決が出るまで争う意向を明らかにした。

新天地は今日の判決を受け、イ・マニ氏がヨハネの黙示録の聖書的預言をまたひとつ成就させ、世界を統治する王になる勝利を得たと大々的に宣伝することだろう。日本でもオンライン上で偽装サークルや交流会に力を入れており、そこから新天地の信者教育が今も進んでいる。永遠に肉体が滅びず、霊が死なないと信じられるイ氏は「この社会はサタン、生みの親はサタンの化身」と教え、韓国の果川本部が地上の王国になるとして信者たちを従わせている。「自殺したい」「もう耐えられない」と泣いて懇願し保釈された自称救い主。こんな姿を見せまいと公判中は幹部信者が傍聴席を独占する徹底ぶりだった。

勝利者としてこの裁判は自身の神格化に利用され続けるだろう。本紙は日本国内で活動が急速に広がり、被害が起きている新天地の実態を調査している。追って記事で紹介したい。