韓国異端専門誌「現代宗教」インタビュー
2020年4月27日号 現代宗教
青春真っ盛り24歳。新天地に入信した一人の青年がいる。軍隊を除隊後、学生時代の友人に誘われ新天地に入信したというキム・ジンウ(仮名)さん。彼は6年間、その若さと情熱を捧げ、新天地で地域長まで登り詰めた。そして、脱会した。彼の話しをまとめた。
私は新天地にいました
新天地を脱会したキムさんは、高校時代の同級生に誘われ新天地に関わるようになった。キムさんが24歳の時のことだ。新天地に出入りするようになり、センターで初級クラス、中級の講義を学び、最後は最高クラスの教育を受けた。そこでは新天地教理である比喩(たとえ)の解釈、救い、黙示録について学んだ。教義的な教育はもちろん、福音部屋教師の教育、伝道師養育に続き、最後に幹部を意味する12使派(教区)のひとつを担当する地域長に就任した。
キムさんの家族は彼が新天地の信者だったことに全く気付かなかった。新天地では「保安」という名目で信者であることを公言してはならないと教育されていたからだという。だから彼は誰にも話すことができなかった。未だに彼の両親は新天地から脱会したことも知らない。キムさんは「ここまで教育するのか・・・」と懐疑的な思いも当時はあったという。
新天地から経済的な支援を受けることはなかった。本人が持っている資産(預金など)も新天地側に管理されることはなかったという。ただ、睡眠時間だけは新天地の活動のせいでいつも足りなかった。信者として仕えた6年余り、1日4時間以上眠ることは許されなかった。寝る寸前まで地域長同士で信者を管理する打ち合わせを続けた。午前2時に会議を終え、午前6時には起きなければならなかった。起床後、朝の礼拝、集会、路傍伝道(屋外で布教活動すること)、内部の相談、会議、この繰り返しの日々だった。体力的に無理をしながら忍耐して過ごした。若いから出来たのだという。
私は新天地の幹部になった
キムさんは6年の歳月を費やし新天地の幹部に登り詰めた。出世するまで新天地内で地道に活動しなければならなかった。キムさんは地域長に就く前は新天地福音部屋の教師だった。別名「教官」と呼ばれていた。教官は1対1で信者を管理し指導する。300人近い信者を任された。そして、最後は地域長として12使派(教区)の1つをキムさんが担当したのだ。彼は信者の信仰面の管理と伝道成果を常にチェックした。新天地は礼拝出席率を最も重要視するため、礼拝に欠席した人を訪問し個人的に指導しながら励ました。
キムさんが受け持った地域は20人余りの信者が礼拝に出席しなかったという。この多くは信者2世(親が新天地信者の子)たちで、親に言われ無理矢理に礼拝に参加しなければならなかった。新天地は組織を優先するため、2世信者は平日の仕事もおろそかになりがちだという。他にも新天地は異邦人(信者ではない一般人)と交際、結婚を禁止している。キムさんは上部からの指示に従い、2世信者にも厳しく指導した。新天地でも2世信者の問題が深刻化しているのだ。
キムさんはこうした指導に特に力を入れた。礼拝出席率92%から98%まで引き上げることに成功したという。このような成果が見込まれ、新天地で高い評価を得ていった。ここまで登り詰めたキムさんも、ある出来事を機に新天地のすべてを捨て脱会することになった。
私は新天地を脱会した
キムさんには新天地で活動しながら知り合ったある友人がいた。同じ信者で互いに刺激し合う仲間だった。しかし、この友人の姿が突然見えなくなった。彼がいなくなったことを知ったキムさんは不安に襲われ探し回ったという。ようやく友人の所在がわかった。彼は新天地から脱会したことがわかった。
その友人は、心配した両親の協力で韓国キリスト教異端相談所を訪問していた。そこでカウンセリングを受けたという。一ヶ月間、カウンセリングを受けた彼は新天地の間違いに気付き、抜けることを決意した。そのタイミングでキムさんは友人と連絡がついた。この事実を知ったキムさんは衝撃を受けた。今まで一度も疑わなかった新天地について不安を覚え、自分でいろいろと考えるようになった。「彼はなぜ新天地をやめたんだろう?」「新天地とはそもそも何なんだ?」心を通わせるほど親しかった友人がやめたことは、単に不安を覚えるだけでは終わらなかった。
キムさんも新天地をやめたい、そう思うようになった。キムさんは意を決し、友人がカウンセリングを受けた釜山(プサン)にあるキリスト教異端相談所に足を運んだ。そして、牧師たちの協力を受けカウンセリングを受けたのだ。キム氏は振り返る。「通常の教会と異なる教えを組み合わせて洗脳する新天地の教理から完全に脱することは容易ではなかった」と。新天地は比喩(たとえ)を説き明かし、合理的に教え込む。この仕組みが脳裏に焼き付いていたからだ。簡単に切り替えることができず苦しんだ。なにより一度も正統な教会に通ったことがなかった。比較する対象がなく、それも彼を苦しめた。彼にとって新天地教育がすべてだった。
カウンセリングを受けるうちにあることに気が付いた。「新天地特有の教理を頭の中でリセットすればいいんだ。聖書の基本を最初から学んで心に受け入れればいい」。単純だが彼はそう考えた。彼は相談所のカウンセリングだけではなくYouTubeで配信される情報も観ながら、新天地の問題点を自分で考えるよう努力した。新天地の問題を扱う情報がたくさん配信されていた。
こうすることで、新天地は「人」が作り出した偽りの教えだと次第に理解することができた。彼は20代の青春を新天地に捧げた。脱会して再び平凡な人生を歩み始めている。新天地はキムさんに連絡を試みてくることがあるという。「正統派の教会は偽りだ。新天地こそ真理だ」とメッセージを残す。
キムさんは新天地信者に向けてこう語る。「新天地がなぜ異端、カルトなのか? 心の扉を開いて客観的な資料をまず見てほしい」。新天地はこうした情報も遮断するが、その気になればいくらでも調べることができるはずだとキムさんは言う。
キムさんは最後に「本当の真理とはなにか? 神様はどんなお方なのか? きちんと知る機会を得ました」と笑顔で語った。後回しにしてしまった学業に集中し、クリスチャンとして人生を生きることができて嬉しいと述べる彼の明るい未来を応援したい。
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国内で活発な活動が確認されている新天地(東京都新宿区=早稲田)は新型コロナウイルス感染予防を理由に教会、集会の活動を一時自粛していましたが本紙が確認したところ活動が再開されました。新天地信者による不法投棄など周辺住民とトラブルが起きていることも確認しました。今後も新天地の調査報道を続けていきます。