自称キリストが語る「私がキリストである根拠」韓国や中国のケースとまったく同じ

9月20日、ロシアのシベリアをキリストの再臨の地と称し集団生活を送る宗教団体「聖書の教会」代表セルゲイ・トロップ(59)容疑者がロシア連邦保安局(FSB)によって逮捕された。トロップ容疑者は自称シベリアの地に再臨したイエスと名乗り4000人を超える宗教団体指導者として活動していた。正確な逮捕容疑は公表されていないが、情報筋によると信者から多額の金を奪い、教えに従わない者に暴行を加えていたという。逮捕にあたり、警察だけでなく情報機関やロシア防衛軍も加わっていたことがわかっている。

シベリアに再臨したイエスと宣言するビサリオンことセルゲイ・トロップ容疑者(写真:現代宗教)

英有力紙「ガーディアン」によると9月20日(現地時間)、ロシア政府は軍用ヘリ4機と武装した特殊部隊を動員し通称ビサリオンと信者が暮らすシベリア・ペトロパブロフカ村を急襲した。ロシア捜査当局は教祖が信者から金を奪い、精神的暴力を加えた容疑で逮捕したと述べた。

トロップ容疑者は1989年旧ソビエト連邦時代に交通警察官として働く傍らキリスト教をはじめとする宗教に強い関心を示していたという。地下教会を転々とし礼拝に顔を出していた。しかし、何らかの理由で職場を解雇されると独自の聖書研究会を設立、秘密に活動を始めた。トロップ容疑者は「神の啓示を受けた」と語り、信者は彼を崇拝した。旧ソビエト崩壊後、さまざまな宗教が流入した。その勢いに乗るかのように1991年、容疑者はみずからを「シベリアに再臨したイエス本人だ」と宣言。聖書の教会という宗教団体を結成した。大勢の信者を引き連れて自給自足で暮らす村をつくると外部との交流を断ち、集団生活をはじめた。信者から「新しいいのち」を意味するビサリオンの名で崇拝された。極東のペトロパブロフカを拠点とする。

これまで彼の共同体は謎に包まれていた。2012年米デジタルメディアVICE(ドキュメンタリー番組)が世界で初めてこの共同体の取材と自称ビサリオン本人のインタビューに成功した。記者はビサリオンに「2000年前のキリストの記憶を今お持ちですか?」と訪ねた。彼は「同一人物(自分とキリストは)でも肉体は同じである必要はない。時代によって異なる形をする」と答えた。「記憶を持つという感覚は人間特有のものだ」と記者を批判した。これは韓国や中国の自称キリストの主張とまったく同じだ。

キリスト教福音宣教会(通称=摂理)の自称メシア鄭明析(チョン・ミョンソク)氏は「神の霊が肉体をまとって使命を引き継いだ人物に再臨した」と説く。中国の全能神教会は女キリスト楊向彬(ヤン・シャンビン)氏について「キリストの霊が肉体を纏って中国の女性(ヤン)に宿った」と教える。これら理論は旧統一協会に影響を受けた人物らの特徴だとも言える。

VICEに登場した教祖は映画などでイメージされるキリストを装った。服装や仕草まで「キリストらしい」と記者が揶揄するシーンも。特別な日に信者は数日間かけてビサリオンの姿を拝しに行く。映像では記者の鋭い質問に言葉を濁すなど「遠回しにはキリストだと認めたがやはり変だ」と指摘された。この村は酒たばこを禁じ、徹底した菜食主義を貫く。生活は厳しい独自のルールが設けられ、精神的に追い込まれた信者の自殺が相次いだという。韓国の異端問題専門紙「月刊現代宗教」は2日、ビサリオン逮捕について報じた。同紙は教祖が信者から金を奪い、精神的虐待を加えていたと紹介している。秘密主義の集団生活で一体何が起きたのか。

VICEの記者が最後に一言お願いしますと尋ねると、教組は笑みを浮かべながら「見下すな。それは死を意味する」と述べた。

自称キリストを名乗る指導者が率いる宗教団体。韓国には40人のキリストを名乗る人物がいる。その多くは反社会的問題を引き起こすカルトとされ警戒される。中国の全能神教会も隣国の韓国では詐欺や偽装結婚、不法滞在などの事件を起こしている。日本でも活発に活動中だ。中国では信者による殺人事件も起こした。日本版のキリストもいる。摂理から追い出された人物が自称中心者と名乗り、陰謀論を拡散させている。

人が「救い主」になったとき、健全な宗教として存続することは可能なのだろか。日本でも次々と「我こそキリスト」が出現すると考えられる。