近年、韓国で猛威を振るっている異端・新天地(新天地イエス教証拠=あかしの=幕屋聖殿)が、日本でも偽装勧誘を活発化させている。初めはSNSで「クリスチャン同士」ということで交流が始まり、なごやかな雰囲気で打ち解け意気投合。一緒に聖書を勉強しましょうということになり、韓国人が加わって4人でLINE通話による聖書勉強会が始まる、というのが典型的パターン。そのうちオンラインの聖書セミナーがあると誘われ、その予備セミナーに誘導されてネット上の登録フォームに住所、氏名、電話番号など個人情報を書かされる。オンラインセミナーの内容はヨハネの黙示録。新天地が比喩的な解釈をする特徴的な教えに用いる聖書箇所だ。

10月から始まり年末まで毎週YouTubeで配信されている黙示録のオンラインセミナーの案内(新天地プレスリリースより)

この偽装勧誘を受けた経験者たちは「とても親切で明るく、誠実そうな人たちだった」と口をそろえる。フレンドリーな雰囲気で親しくなると、途中でカルトではないかと疑いがわいても断りにくい心情になる。それが彼らの作戦。異端・カルト団体が好んで使う「ラブ・シャワー」といわれる心理テクニックだ。初めに最大限の親切・やさしさを注ぎ込み、「こんなにいい人たちなのだから悪い所ではないだろう」と心を開かせる。そして誘導されるままにオンラインセミナーの登録フォームに個人情報を記入してしまう。

その過程で、相手が「シオンキリスト教宣教センター」であることが分かり、ネットで検索してそこが「新天地」であることを知った人もいる。新天地の広報によると、シオンキリスト教宣教センターは新天地が運営する無料の教育施設。そこで「聖書に関する教育過程」を終え、さらに修了試験に合格すると信者として登録される。真偽のほどは分からないが、1年に世界で10万人規模の修了者が入教すると発表されている。

新天地の李萬煕(イ・マンヒ)代表は「ヨハネの黙示録には、神様が成される天国の秘密が記録されている。その内容は記録通りに成し遂げられる」、「黙示録通りの成し遂げられた実体がなければならない。神様の目的は、神様の新しい国と新しい民族を創造することであり、それが新天地の世界である」などと教える。教育課程を修了し入教の登録をする頃には「天国の秘密を勉強できた」と思い込み、この90歳の韓国の老人が永遠に死なない「再臨のキリスト」なのだと信じるまでにマインドコントロールがかかってしまう。

日本人向けの新天地オンラインセミナーで黙示録について語る李萬煕総会長(写真は新天地プレスリリースより)

なぜそんな荒唐無稽なことを信じるようになってしまうのか? にわかに信じがたいだろうが、教育課程は巧妙に仕組まれており、数々の聖書のことばを引用しながら「なるほど、そう言われればそうだな」と思わせるような教えを積み重ねていく。その頂点に「再臨のキリストは必ず来なければならない、いや、もう来ている」というクライマックスが待っているのだ。もちろん「そう言われればそうだな」と思わされる彼らの教えは、聖書解釈学上は何の根拠もないマガイモノにすぎない。

黙示録15章についてのセミナーは「ついに語られる!聖書に記された『あかしの幕屋の聖所』とはどこなのか?」と期待感を盛り上げる(写真は新天地プレスリリースより)

マインドコントロールなどに自分はかからないと誰しも思っているが、そんな人でも見事にかかってしまう。ちょうど、オレオレ詐欺のニュースは見聞きしていて自分は騙されないと思っている人が、まんまと引っかかってしまうのと似ている。親切で楽しいトークも、思わず「そうだな」と思ってしまう聖書勉強の過程も、そのように計算し尽くされ心情を操るようにマニュアル化されている。それがカルトのマインドコントロールの実態だ。