オンラインで勧誘、「執拗に嫌がらせ」「暴言受けた」証言も

インターネットを駆使した新型ネット宗教がSNS上で勧誘している。今回、紹介するのは誹謗中傷、個人攻撃やネットで拾い集めた陰謀論で情報操作を目論む、いわば思想集団に近い宗教グループ。正式名称「RAPT」(ラプト)と名乗るこのグループは、愛媛県某所に拠点を構え、ひとりの教祖と二人の女性によって運営されている。日本人教祖、中村祐介氏はみずからを「中心者」と主張し、終末の時代に神から最後の使命を受けたメシア(再臨主)だと説く。秘密教理の内容を精査したところ、正統なキリスト教の教えから逸脱する「異端」だとわかった。

RAPT(以下、ラプト)は「熱心に」、「没頭する」という意味をもつ。中村氏がつけた名称だという。「神から使命を受けて授かったネーミング」だと信者には説明している。中村氏は、学生時代にキリスト教の影響を受け、さまざまな教会を転々とした。行く先々で人間関係のトラブルが生じ、その後、異端でありカルト宗教として警戒される「キリスト教福音宣教会」(通称=摂理)に入信している。摂理の教祖で自称再臨のメシア鄭明析(チョン・ミョンソク)氏を熱心に信仰し「摂理人」として活発に活動していた。2013年頃に愛媛県にあった摂理の某教会で教団の方針に反した宗教行為を続けたという理由から摂理側とトラブルになり、その後、中村氏は妻とともに脱会をよぎなくされた。中村氏は鄭明析氏に帰依しながらも独自の宗教観を深めていった。ヒーリング、奇跡などを売りとするサイトを立ち上げ、聖書を使ったヒーリングで読者から支持を得るようになった。

2016年、愛媛県でRAPTという宗教グループを結成。ネットで求心力を得ると絶対忠誠を誓う読者を「使徒」と命名し、信者として認め、私財をなげうってでも愛媛県の拠点に移住するよう指示した。関係者によると中村氏は疑い深く、対人関係が得意ではないという。彼の活動はすべて「密室」の中で行なわれていることになる。拠点は「教会」と呼ばれるが、外から中の様子はまったく見えず、高い塀で隠すように作られている。中村氏が「中心者」として神の言葉を取次ぎ、深夜や早朝から集団で礼拝、祈りの時間が持たれる。

中村氏の教えは秘密教理で外部には漏らしてはいけない。そこで教わるテキスト(教理)は摂理の30講論とほぼ同じものだ。中村氏は信者に次のように説いている。「イエス・キリストは王になるはずだったが失敗して十字架で殺された。敗北した。イエスが叶わなかった使命を引継ぐ新しい中心者として先生(摂理の教祖・鄭明析)が来たが、先生も迫害され使命を終えてしまった。最後に自分に使命が与えられた」。摂理と同じく2023年にこの世を支配するイルミナティ(秘密結社・サタン)が敗れ、ラプトを「主」とする地上天国が完成すると説く。中村氏がいかに摂理に心酔しているか、これでよくわかる。

彼らが配信するYouTubeチャンネルやTwitterは特定の宗教団体を「工作員」呼ばわりし、根拠のない作り話を言い広めている。傍から見ると偏りの強い思想集団と見過ごしがちだ。しかし、中村氏が配信を手がける有料記事を通じて社会に対する不満や自己表現を求める読者らが強い影響を受け、入信希望者は増加傾向にあるという。また記事の販売により多額の収益を得たといわれている。一体どのような魅力があるのだろか。

本紙は複数の脱会者から証言を得た。それは文章の心地よさだという。公式サイトが配信する記事や関係者が運営するブログは、聖書のメッセージを取り入れポエムのような作りになっている。「最初は心のオアシスだと思った」と某脱会者は語る。サイトのデザインもきれいだ。ところが、ラプト側とコンタクトを続けるうちに「ここしか真理はない」というはっきりしたメッセージが何度も語られるようになり、中村氏に一目会って救われたいという強い衝動に駆られるという。また、中村氏は霊媒師のようなそぶりで奇跡を起こすこともあったという。バーチャルな世界で信者を魅了し、最終的には中村という存在が救い主となって信者をコントロールする。今までにない新型宗教だ。

入信手続きはまず中村氏に絶対忠誠を誓うための厳しい口述試験をパスしなければならない。そして、複数の角度から撮影した写真と身分証明書を提出する。こうして、信者はラプトの拠点に足を踏み入れることができるという。信者の大半は女性だ。初期の頃は多くの信者が全財産を中村氏に捧げていたというから驚きだ。脱会者によると「教祖から脱会したら写真をネットに晒すと脅された」という。事実、ラプト関係者が発信するSNSは元信者の実名や写真を載せて激しく批判している。今後エスカレートしていくと思われる。

入信すると教祖の気まぐれに合わせるような生活が強いられるという。深夜、早朝の祈祷会が命じられ、何も話していないのに「心が汚い」「臭い」などと批判され、挙げ句の果てに「中国人だろ」「工作員だな」などと罵られるという。これを「工作員認定」と呼び、名指しで批判された信者は追放されるのだ。また身体的特徴などをあげて暴言を浴びせることもある。教祖から工作員認定を受けたくない信者たちは必死になって、仲間を攻撃する。このような負の連鎖がRAPTの密室で起きているのだ。もはやキリスト教と似てもつかないことがわかる。

元信者は「パワハラは当たり前だった」と述べる。また教祖の妻と女性幹部は、自分たちに不利だと感じる団体や人物を誹謗中傷するような動画をYouTube上で配信しており、疑問を感じても信者は我慢を強いられている状態だという。このYouTubeチャンネルも内容がひどい。北朝鮮による拉致被害者やその家族会を誹謗中傷するなど常軌を逸している。脱会者曰く「中村氏は聖書の知識もなく、やっていることはキリスト教とはほぼ無関係だった」という。

男女交際は禁止され、教祖の思い込みから異性問題を問われ叱責されることも少なくない。ここ数年でRAPTの被害者が増加傾向にある。金銭被害を訴える人もいれば、辞めた後の嫌がらせに苦しむ人も。

被害者たちは次のように注意を促す。「ラプトの実状は外部からほとんどわからない」。ネット時代に生み出されたバーチャル宗教も深入りすると多くの問題に直面しそうだ。十分な警戒が必要だ。