キリスト再臨に関する用語を「教祖の言葉を悟ること」とこじつけ

キリスト教福音宣教会(CGM)は教祖である鄭明析(チョン・ミョンソク)氏の誕生日である3月16日に「3・16携挙(けいきょ)記念日」というオンラインイベントを開催した。これは世界配信され、各国の信者も会員ページから参加した。鄭氏は1945年3月16日生まれ、最近では自らを「聖者」と呼ぶようになった。この日は教団最大イベントとして信者たちによる聖歌隊、バレエチーム、現代舞踊、マーチングバンド、ジャズ、子ども合唱団などが教祖の前で披露された。また教祖が作詞作曲を手がけたという新しい「賛美歌」も発表された。

若い頃のキリスト教福音宣教会の教祖、鄭明析氏(画像:教会と信仰)

キリスト教福音宣教会では「携挙とはこの時代の使命者が伝える神の新しい歴史の言葉を聞いて悟り、それによって人の心と行いが変化し、霊が死から”いのち“へと引上げられる霊的携挙だ」と教えている。「携挙」という言葉は、もともとテサロニケ第一4章16-17節「すなわち、号令と御使いのかしらの声とラッパの響きとともに、主ご自身が天から下って来られます。そしてまず、キリストのある死者がよみがえり、それから、生き残っている私たちが、彼らと一緒に雲に包まれて引き上げられ、空中で主とともにいることになります」という記述を、終末のキリスト再臨の際に起こる出来事と理解して言われる概念だが、教派によって解釈は分かれる。キリスト教福音宣教会では教祖の言葉を聞いて悟り行動することが「携挙」だと主張するが、このような教えは聖書に書かれていない。もちろん、異端教理だ。

「中心者(鄭明析)を通じなければ絶対にひとりもこの地で携挙されることはない」と書かれた教団内部テキストの一部(画像:宗教と真理)

女性信者に性的暴行を加えた罪で懲役10年の実刑判決を受け、2018年に出所した鄭氏は性犯罪者GPS監視(電子足輪)を現在も装着している。キリスト教福音宣教会は独特な勧誘方法を昔も今も変わらず続けている。文化部門では、モデル、ジャズダンス、映画から演劇まで幅広い。他に地域ボランティア、英会話教室、スポーツまでありとあらゆるジャンルを入り口に教会に誘っている。ターゲットは大学生だ。最近は教祖の指示で中高生も集中的に勧誘対象になった。

今後、キリスト教系の中高校では十分な警戒が必要だろう。都内の某キリスト教系私立高校では、新入生の保護者対象に配布された資料に「旧・統一教会や摂理と呼ばれるカルトは」と紹介した上で注意を促していた。新しい方法でこれからも勧誘を続けると思われる。

 

鄭ミョンソク氏とキリスト教福音宣教会の信者らは過去に数多くの事件、トラブルを起こしている。刑事裁判や民事訴訟も行なわれてきた。その一部を紹介する。

1)大田(テジョン)地方検察庁2001刑事・第17○○○号 強姦、暴力行為など。女性信者を性的暴行し、その結果、被害者は精神に異常をきたした。

2)大田地検2001刑事・第10○○○号 詐欺の疑い 信者たちを10年間にわたり「慈善事業」と称して落花生販売に従事させ、不法に得た金を着服した疑い

3)大田地検2001刑事・第45○○○号 準強制わいせつ マレーシアで鄭ミョンソク氏から性的暴行(準強制わいせつ)を受けた

4)釜山(プサン)地検2005刑事・第85○○○号 虚偽の告発 キム某氏襲撃事件についてキリスト教福音宣教会の某牧師が虚偽の被害申告を行なった。

5)ソウル中央地検2003刑事・第92○○○号 暴力行為等(同時傷害罪=集団リンチ)鄭ミョンソク氏が教唆、キム某会員の父親に対する暴力行為教唆の疑い

6)ソウル中央地検2004刑事・第73○○○号 強姦、強制わいせつ 2003年香港で教祖に性的暴行された

7)ソウル中央地検2005刑事・第6○○○号 著作権法違反

8)ソウル中央地検2005刑事・第100○○○号 暴行を教唆 キム某氏が信者から集団暴行を受けた事件で鄭ミョンソク氏による教唆の疑い

9)ソウル中央地検2005刑事・第104○○○号 名誉毀損

10)2003ナ55○○○号 鄭ミョンソク氏からの強姦容疑民事訴訟

11) 2003 ナ55○○○号 (日本人被害女性含む)強姦容疑民事訴訟

12) 2002 民事2○○○号  詐欺、横領など

13) 2003刑事・第138○○○号 教祖による殺人教唆の疑い

このようにキリスト教福音宣教会は鄭ミョンソク氏自身の容疑とみずから教唆(指示)したとされる事件で繰り返し、刑事告発、民事提訴を受けている。

出典:宗教と真理

異端・カルト110番編集部の解説

教祖は性的暴行を加えた罪で有罪となり10年間服役した。教団側は信者が運営するブログなどを通じ、教祖の性犯罪はえん罪であり、妬んだ既成教会の牧師や金銭目的の仲介者、偽被害者によって作り上げられた「捏造」だと主張している。鄭氏は性犯罪が明るみになると中国に逃亡した。そこで拘束され取調べを受けた。当時、鄭氏は国際指名手配中であり、中国公安部は韓国検察に身柄を引き渡した。教団は、中国で鄭氏は「無嫌疑」と判決を受けたのだから無罪だと今も強調している。中国の法廷は厳格であり、韓国は不当だという説明だ。

そんな鄭氏だが、教団内ではこの時代に再臨したメシアとして信仰されている。今も健在で聖地「月明洞」(ウォルミョンドン)で暮らしている。日本国内でも「メシア論」という講義が行なわれ、内容から鄭氏は自称「メシア」であることが確認できる。最近では教祖自ら「キリスト教福音宣教会」の教会名を出して活動するように指示しており、全国にある支部もSNSで積極的に宣伝しはじめた。ただ、内部教理の実態を明かさず「プロテスタント教会」などと紹介するなど事実ではない点が目立つ。キリスト教福音宣教会は、キリスト教の異端であって、プロテスタントではない。日本国内でもカルト宗教と名指しで警戒されるグループだ。今も偽装布教を行うなど問題が目立つ。