統一協会(現・天の父母様聖会/世界平和統一家庭連合)が昨年125日、韓国の清心(チョンシン)ワールドセンターに約1200人の宗教指導者を集め、南北統一・世界統一に向けた「神統一韓国のための救国救世祈祷会」を開催した。その席上、新使徒運動(NAR)の指導者のひとりでトランプ前大統領の宗教特別顧問を務めたポーラ・ホワイト牧師が歓迎の辞を述べた。統一協会の内部向け雑誌「True Peace20221月号(統一協会独自の天歴で天一国9年12月)日本語版Vol.18が伝えた。

統一協会(現・天の父母様聖会/世界平和統一家庭連合)の内部向け雑誌「True Peace」2022年1月号(以下同)

ポーラ・ホワイト氏は「繁栄の神学」に立つ米国のテレビ伝道者として知られ、フロリダ州のメガチャーチ「シティ・オブ・ディスティニー」を監督する「使徒」。YouTubeで、ホワイト氏がマシンガントークで根拠の曖昧な「預言」を連発する様子が公開されている。True Peace誌によると、ホワイト氏は同救国救世祈祷会において、世界平和統一家庭連合の韓鶴子(ハン・ハクジャ)総裁について「私は霊的指導者として大きな業績を成し遂げた真のお母様を尊敬し、激励の拍手を送る。真のお母様は神様を愛し、世界のすべての紛争地域で神様の心情を慰めようと努力しておられる御方だ。真のお母様は神様が送ってくださった宝石だ」と賛辞を送った。

歓迎の辞を送ったポーラ・ホワイト(左)。世界の諸宗教の代表がスピーチを述べた

韓鶴子総裁は「神様と真の父母様に侍ることだけがこの国と世界が起きる道」と題してこの祈祷会への真の父母様のみ言を語った。その中で韓氏は、「メシヤ一人だけではいけません。神様の創造は男性と女性でした。それでは男性、独り子が誕生したならば、独り娘を迎えなければなりません。しかしそうなれずに、イエス様はすべてを失った立場で、十字架で亡くならざるを得ませんでした。そのような状況の中で「また来る」と言われました。イエス様の使命は人類を救うことのできる真の父母の位置に進まなければならなかったということです」と、自分が女性の再臨主であるとの持論を展開。「皆さんは終点に来ていて、いまや独り娘・真の父母と一つになることだけが、皆さんと皆さんの国と民が生きる道であることを肝に命じてくださるように願います」と結んだ。こうした、男女の創造から独り子(男性)のメシア→再臨のメシアは独り娘、というような論理の飛躍したこじつけは『原理講論』の随所に見られる特色だ。

「神様と真の父母様に侍ることだけがこの国と世界が起きる道」 と語る韓鶴子総裁

平和祈願では、ルーテル世界連盟の代表、インドネシア・ムスリムの最高イマーム、カトリック枢機卿、神道斎主、インド・ヒンズー教最高僧侶、アフリカ霊性啓示聖会の創始者、カンボジア仏教の最高僧侶ら7人の宗教指導者たちが「神統一韓国」のための平和メッセージと平和祈願を行ったと報じられている。

また、昨年9月には統一協会の組織「天宙平和連合(UPF)」が開催した大規模イベント「神統一韓国のためのTHINK TANK 2022 希望前進大会」に、ドナルド・トランプ米国前大統領らと共に安倍晋三前首相もリモートで基調講演し、朝鮮半島の平和統一や世界平和への貢献を評価して韓鶴子総裁に敬意を評した。https://cult110.info/news/lecture/

同大会には、トランプ政権で副大統領を務め「クリスチャン」であることを公言しているマイク・ペンス氏や、国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏ら大物政治家も参加している。故・文鮮明(ムン・ソンミョン)氏が創始した統一協会(世界基督教統一神霊協会)は宗教・政治・文化の世界統一を旗印に掲げてきたが、文氏の死後、妻の韓鶴子氏が「再臨のメシア」を名乗るようになっても、今なお保守政界や宗教界の要人たちが密接な関係を続けていることが浮き彫りになった。

昨年9月に開催された「THINK TANK 2022フォーラム」で講演するトランプ政権のマイク・ペンス元副大統領

そしてさらに、今回ポーラ・ホワイト氏の登壇で、キリスト教界で不健全運動として警戒感が高まっている新使徒運動も、カルト性の高い異端である統一協会と親和性が高いことが明らかになった。2024年の次期米国大統領選挙で大統領復帰に意欲を見せているドナルド・トランプ氏だが、その片手は世界に知られた韓国のキリスト教系偽装カルト(異端)統一協会と、もう片方の手は正統キリスト教信仰からの逸脱が警戒されている新使徒運動とつながっていることが露呈してきた。トランプ氏支持が多いと言われる米国の「福音派」は、この現実に対してどう対処するのだろうか。