元受講生が手口を見分けるキーワード明かす

韓国主要教団から異端規定を受けている新天地イエス教証拠(証しの)幕屋聖殿(新天地、李萬煕=イ・マンヒ=総会長)による偽装勧誘が、日本国内でも活発化している。実態が分からずに誘われるまま新天地の聖書講義を受講したという報告が相次ぐなか、途中で違和感を覚えて受講をやめたという経験者から、その体験の証言が寄せられた。以下、勧誘の手口や、聖書講義で強調されるキーワードなど、未然に気がつくために役立つ情報を紹介する。

0.はじめに

私は新天地イエス教証しの幕屋聖殿の方が主催する聖書の学びに参加していました。途中で違和感を覚えて抜け出せましたが、なかなか彼らが特定の宗教団体であることには気づけず、ずるずると半年ほど時間を過ごしてしまいました。また個人情報を渡してしまい、今でも何かされるのではないかと恐怖感があり、同じような目にあう方が少しでもいなくなればと思い情報提供させていただいている次第です。

1.どうして参加したのか

2020年の終わり頃にSNSで知り合って仲良くなった方に紹介されました。主にKPOPの趣味で仲良くなった方でしたが、自分の悩み等を相談するようになったころから、相手が実は聖書を勉強している、聖書を学ぶと変われる、などと言って講義を紹介され、受講することとなりました。

本紙が脱会者より入手した新天地の教理本「天地創造」の韓国語オリジナル版

新天地の教理本「ヨハネの黙示録の真相〜ヨハネ黙示録の予言と成就〜」韓国語版。
 本紙編集部が新天地脱会者より独自に入手。

2.講義の特徴

2030代の若い男女が中心でしたがそれより上の方もいました。キリスト教徒の方もいれば全く聖書は初めてという人も多数いました。韓国系だけあって、KPOPなど韓国好きな方が友達伝手で来たという方もいました。
・週2~3回程度2時間ほどの講義があり、1日に複数回行われている場合もあるようです。
・一緒に学んでいた方と今でも少しつながりがありますが、最近はzoomで行っているようです。やっていることは基本的に同じだと聞いています。
・初等・中等・高等に分かれており、1年近くの長い講義でした。私は半年ほどで抜けましたが、途中で抜ける人もちらほらいました。
・「講師」と「伝道師」と呼ばれる方がおり、講師は講義をされる方で、伝道師は受講者のアシスタントのような役割をしており、一緒に祈ったり講義の補足をしたりしていました。講師と伝道師は講義の日はスーツなど正装していました。

講師は講義の時はスーツ姿(写真は2022年1月オンラインでの聖書講義)

・納得した際には「アーメン」というよう、しきりに言われます。授業中はもちろんのこと、御言葉とは関係ない場面でも、通常の返事として「アーメン」を連呼しています。(「今日も頑張りましょう!」 「アーメン」のような感じです。)
・祈りも少し特徴的で、「感謝なる神様」など最初に感謝を述べるよう言われ、他の者は合間にアーメン、アーメンと何度も相槌を入れていました。
・授業を真面目に聞けない、参加できないのはサタンの所業であると教え込まれます。眠たくなったり集中できなくなったり、急な仕事や用事すらもサタンのせいだと教えられます。
・内容について、情報管理を徹底しろと言い、親や友達には安易に話さないようにという今思えば典型的なカルト宗教みたいなことを言われました。敵から隠すためだとか教えられていましたが、どういう意味なのかはよくわからなかったです。
・とにかく習った御言葉を正確に理解しているか度々チェックされます。スピーチと称して学んだことをよどみなく言えるよう促されたり、テストされたりします。今思えば刷り込みだったのだなと感じます。

習った御言葉を理解しているかチェックされる(写真は韓国で、床に座り試験を受ける新天地の信者たち)

3.教義的な内容・キーワード

・「聖書は私的解釈を加えてはならず、すべての根拠は聖書から見つかり、一貫性を持って理解ができる」といったことをしきりに言っていました。
・とにかく心を開いてまずはすべてを素直に受け入れろと言われます。受け入れられないのはサタンの仕業だと言われます。
・既存のキリスト教は非真理であると敵視されている印象でした。
・聖書は新改訳聖書というものを使用していました。

<以下特徴的なキーワード> 一概には言えないかもしれませんが、これらのキーワードが多く当てはまれば、それは新天地である可能性が高いです。

善悪の区分・・善悪を区分するよう言われ、またそれを祈るように言われます。
悟り・・・・・みことばを悟れとしきりに言われます。
霊=言葉=考え・・霊は考えであって、良い考えは神様、悪い考えはサタンだと言われます。
天国の秘密〇〇・・・〇〇は比喩の解説で、種、畑、木、鳥、火、香炉、光と闇、目、ともしび、宝、水、川、海、船、漁師などなど。最近YouTubeが上がっていますが内容はほぼそのままです。
(参考:https://www.youtube.com/channel/UCUHx91Obok-Xf9xr61Kpu0g
肉的〇〇、霊的〇〇・・・たとえを説明するときにまず、たとえたそのものの特徴を教えられそれを肉的と呼び、それの本当の意味を霊的〇〇と呼んでしました。
啓示録・・・黙示録のことを啓示録と言っています。もはや秘密ではなく開かれているから、だそうです。
救いの路程順理(順路)・・・「背教」、「滅亡」、「救い」の順番で預言は成就するというもの。旧約の時も、新約のイエスの登場もそのように成就したと教えられます。
約束の牧者忠実なしもべ新ヨハネ勝利者など)・・・要するにイ・マンヒのこと。私がいたときまでは彼が神、イエスだとは習わなかったです。あくまで今日その御言葉を伝える権限を与えられた人なんだそうです。
12枝派・・「しは」と呼び、イスラエルの12部族のことです。黙示録の7章で印を押される12部族がいますが、これらが12枝派というものらしく、これを作ったからこそ、新天地イエス教証しの幕屋聖殿が向かうべき場所なのだ的な話があったように記憶しています。

新天地の講義「聖書の秘密」。実態は象徴・比喩のこじつけ

4.感じた違和感

・講師も伝道師の方は団体ではなく自主的な聖書の学びの集まりだと言っていましたが、それにしては妙に組織化されているのが当時は変だなと感じていました。
・聖書も一見理屈が通っているように見えて、よくよく聞けばこじつけのような話も結構多いです。私的解釈を加えてはいけないというわりに、結構恣意的な解釈が加えられています。一貫性があるといいつつ、一貫性があるように見せるために無理矢理つじつまを合わせている、というのが実際のところです。
・勝利者がどうこうと言われますが、その勝利者が誰なのか講師に聞いてもひたすらに話をはぐらかされます。黙示録内での戦いの表現は教理的な戦いのことであって、そこに勝利したのがイ・マンヒなのだというような話だったかと思います。
・やはりことさら韓国がフィーチャーされていて、イ・マンヒの存在がチラつきはじめ、団体の正体がわかってきたころにはもうついていけないと思いました。それでもここまで良くしてくださったからと、色々考えてしまい、結局抜け出すのに時間がかかりました。適当な理由をつけて抜けましたが、本当は胡散臭く気持ち悪いと思ったからです。
・要は実際の韓国内での教派争いみたいなものを引き合いに、黙示録通りことが成就しているでしょう、といった話なのですが、そういったストーリー作りに向けて、聖書内の比喩表現を旧約や新約のあらゆるところから持ってきて、黙示録を無理矢理そのように解釈していく、という感じです。だからこそ聖書内の比喩表現がどういう意味なのかということを最初のうちから徹底的に覚えさせられ、そのようにしか読めないようなマインドコントロールが施されるという感じでしょうか。

教祖が終わりの日の審判を下すメシアであることを示す教団内部の置物(キリスト教ポータルニュース提供)

5.その他感想

・講師も伝道師もものすごく勉強されており、中途半端な知識であれば言いくるめられてしまうと思います。実際授業中鋭い質問をした人も論破されているように見えました。ただ、自分がわからなかったことがすっきりわかっていくかのような錯覚に陥るくらい、巧妙に説明がなされるので、聖書を熱心に知りたいと思う人ほどのめり込んでしまうかもしれません。
・私もそうでしたが、何かに迷っていたり、自分に自信がなかったり、聖書に興味があったり、という人間の弱さにうまくつけ込んできます。伝道師の方がカウンセリングのような形で一緒に祈ったり励ましたりしてくれるので、孤独な人は余計にすごく助けられる思いがするのだと思います。
・私の場合、何か直接的な危害を加えられたことは無かったです。しかしながらこれしか真理が無い、道を外れたらサタンと共にすることになる、といったことを日々言われていたことや、また皆さんが良い人であったのでなかなか抜け出せない状態になっていました。
・とにかく彼らの独自の聖書の解釈を徹底的に刷り込まれるので、長期化すればするほど、どんどん洗脳される危険がある気がします。聖書が初めてであれば、それ以外は非真理だと言われるのでこれしか正しい道はないと信じてしまうのだと思います。

6.最期に
・かなりの長期間の学びであり、時間をかなり拘束されます。早い段階で気づいて抜け出せることができれば、時間を無駄にすることもないかと思います。私自身かなり時間を割いてしまったので、少しでも違和感を持った方がすぐに抜け出せるよう願います。