安倍元首相の銃撃殺害事件をきっかけに、メディアで統一協会(現・世界平和統一家庭連合)の不法な活動や政界との癒着などが次々と報じられている。霊感商法や法外な「献金」に駆り立てたり、家族と敵対して家庭崩壊を招いたりする実態などが明らかにされているが、かつて「霊感商法」や「親泣かせ原理運動」が大々的に報道されたにもかかわらず、今も高額の物品を買わされたり、偽装勧誘に騙されて入会したりする被害がなくならないのはどうしてか?
その謎を解くカギは、「キリスト教」を名乗りながら聖書の福音とは全く別物の教えに誘導する「統一原理」の異端性・カルト性にある。長年、統一協会をはじめ大学で活動するカルトへの対策などに取り組んできた川島堅二氏(東北学院大学教授)が、キリスト新聞の「宗教リテラシー向上委員会」に寄稿し、「統一協会の何が問題なのか」をテーマに、統一協会の教理と行動の関係についてわかりやすく解説している。
例えば、統一協会は「キリスト教」を標榜していながら、なぜ手相や顔相鑑定など伝統的キリスト教では考えられない方法を取るのか、銃撃事件の原因となった家庭の破綻を招くまでの多額の献金をし続けるのはどうしてなのか、霊感商法の被害が日本でだけ発生しているのはなぜなのか等々、川島氏はそれらすべての背景に「原理講論」の教えがあることを解き明かす。
かつて1980年代に日本基督教団が「統一原理問題連絡会」を立ち上げて、被害者家族の相談に乗り出した際に、統一協会問題を「社会問題」として取り上げるべきか、それとも「宣教問題」として取り上げるべきかで論争があった。今日でも、福音派の多くは統一協会のような「キリスト教」を偽装する団体の問題を「異端問題」と位置付けるのに対し、主流派の多くは「カルト問題」と位置付ける。「異端」というと教理や聖書解釈の是非が問題意識の中心になりがちなのに対し、「カルト問題」では人権侵害を起こすような活動や体質が問題にされる。だが実際には、統一協会などにおいてその「異端性」と「カルト性」は表裏一体なのだ。「異端・カルト110番」が名称に「・(ナカグロ)」を入れて両方を並立的に表記するようにしたのにも、そういう理由がある。
現在、社会的に問題を起こしている「キリスト教系」の新興宗教の多くは、聖書から逸脱した教理の「異端性」が、その結果として問題行動を招いている「カルト性」の原因でもあるのだ。川島氏の解説記事は、両者がどのように関連しているのかを明瞭に教えてくれる。寄稿は続編に続いているので、この問題の構造を理解したい人には見逃せない。