判決は4月22日、東京地方裁判所で言い渡された

自らを「再臨のキリスト」と密かに信じさせているとの疑惑が各国で報じられてきたダビデ張こと張在亨(ジャン・ジェヒョン)氏が支配する「共同体」の一部であることが指摘されてきた「クリスチャントゥデイ(CT)」が、名誉を毀損されたとして根田祥一氏(クリスチャン新聞顧問、異端・カルト110番編集顧問)に110万円の損害賠償を請求した民事訴訟で、東京地裁は422日、被告は原告に対し50万円を払えとする判決を言い渡した。根田氏が自身のSNSで引用し紹介した行為が原告の社会的評価を低下させると原告が主張した、脱会者の証言ブログ「ダビデ牧師と共同体を考える会」の5つの記事について、小松秀大裁判官は、一部の記事には真実性があると認めて名誉毀損は成立しないと判断した一方、一部の記事については名誉毀損が成立すると判断した。

根田氏は当初から、この裁判で名誉毀損の勝敗は問題にしないことを公言し、原告CTが隠し続けている虚偽や詐称の実態が司法の場で事実認定され真実が明かされることを目指してきた。

今回の判決で特筆すべきことは、「張牧師及びその宣教師らは、張牧師を『再臨のキリスト』と信奉する者に対し、その信仰を秘して他の教会に所属することを求めており、平成16年頃には、東京ソフィア教会に通っていた原告の従業員2名が、張牧師の進言で淀橋教会に通い、東京ソフィア教会への所属を隠していたことが認められる」との事実を認定したこと。

判決は続けて、高柳(注:日本CT設立時の代表取締役社長)は、原告の設立後に淀橋教会に通ったことがあり、矢田(現在の日本CT代表取締役社長)は、東京ソフィア教会が活動を終えた後の平成17年3月以降に、淀橋教会の礼拝に参加したことがあることを指摘し、「その後に、原告が張牧師の関係者の便宜を図る行動をとっていたこと、記事の内容等について張牧師から指示を受けていたことを考慮すると、高柳や矢田は、淀橋教会に出入りしていた頃も、なお張牧師の宗教的影響下にあり、そのことを秘していたと認めるのが相当である」との判断を示した。

そして、「原告の構成員は、その活動の便宜のため、峯野牧師に対し、張牧師が『再臨のキリスト』であるとの信仰を秘し、淀橋教会又はその所属団体の宗教上の理念に従順である態度を示して、峯野牧師にその旨信じさせていたということができ、侵害部分の内容は、その摘示する事実の重要な部分において、真実に合致すると認められる」と述べ、投稿4について不法行為は成立しない、と結論づけた。

判決ではまた、張在亨氏の「共同体」の実在や、CTを張在亨氏の配下にある組織の一部であり張氏から指示を受けた事実を明確に認定したほか、信者らが無給で使役させられ献金するために借金が強要されることもあったことなど、これまでCTが否認し続けてきた多くの虚偽の実態が明らかにされた。

なお、原告側は一貫して、張在亨は原告と関係ない、「共同体」なるものは存在しないと主張し、名誉毀損の事実だけを審理するよう求めていたが、裁判所は被告側が提出した証拠・証言を詳細に検討し判断を示した。また、本件訴訟ではCTほか共同体で使役した二人の元信者(脱会者)が証言したが、判決は随所でその証言を援用して事実認定した。

2013年、救世軍士官の山谷真氏に対してCTが名誉毀損で損害賠償を求めた民事訴訟の判決では、「正統派ではない『キリストの来臨』に関する講義が平成14年当時、東京ソフィア教会において行われていた可能性がある」とされたが、「しかし、張在亨が来臨のキリストであることが明示的に記載された部分はなく、直ちに、張在亨が来臨のキリストである旨の教義が東京ソフィア教会において教え込まれていたとは認められず、他にこれを裏付ける客観的証拠はない」との判断に留まっていた。

それに対して今回の判決は、CT関係者が「峯野牧師に対し、張牧師が『再臨のキリスト』であるとの信仰を秘し、淀橋教会又はその所属団体の宗教上の理念に従順である態度を示して、峯野牧師にその旨信じさせていた」と認定したことは画期的。脱会者の証言が真実であることが認められた。

【その他、判決の認定事実で注目すべき点の概要】*判決文引用箇所〈 〉

張在亨氏及び関連組織の実態とCTとの関係(下線はそこからわかる事実)

⑴〈原告設立時には、張牧師が設立した韓国クリスチャントゥデイ及び米国クリスチャントゥデイの資金援助を受けた。原告設立時の代表取締役であった高柳泉は、米国滞在中に、張牧師が学生らと聖書研究等を目的として設立した組織「アポストロス・キャンパス・ミニストリー」(ACM)に加わり、本邦に帰国したあとは、東京都内に拠点を置く「東京ソフィア教会」において、伝道師として活動していた。東京ソフィア教会の礼拝では、張牧師が、説教や按手をしたことがあり、原告が設立した当時の従業員には、東京ソフィア教会で張牧師の按手を受けた者がいた。原告の設立前には、コンピューターソフトウェアの開発および販売並びに輸出等を目的とする株式会社ベレコム、経済情報等の提供を目的とする株式会社財経新聞社が設立されたが、その役員には、東京ソフィア教会や原告の関係者であった者が就任していた。〉

⑵ 〈張牧師については、韓国内外のキリスト教関連の情報媒体において、信奉者に張牧師を「再臨のキリスト」と告白させていること、大学やインターネット関連の企業を設立して影響力の拡大を図り、その収益で関連組織を維持していることが報じられていた。張牧師は、米国内において、聖書学校を起源とする「オリベット大学」の初代学長に就任したが、「オリベット大学」は、令和2年、銀行から不正融資を受けたこと等を理由に罰金刑を受け、その後、設置州の当局から閉鎖を命じられた。「オリベット大学」については、外国人留学生を無報酬又は極端な低賃金で労働に従事させた疑いで捜査を受けているとの報道もされた。〉

信奉者に張在亨氏を「再臨のキリスト」と告白させていることが韓国内外の報道で知られている。張在亨氏が初代学長に就任したオリベット大学は、不正融資、無報酬/極端な低賃金労働などにより社会的非難を受け閉鎖を命じられた、との報道があったことも認定している。

⑶ 〈東京ソフィア教会の宣教師及び張牧師の信奉者は、その宗教上の勧誘を受けた者に対し、張牧師を「ダビデ牧師」と呼び、清められた者、従順な者が共同体(第3のイスラエル、新しいイスラエル)を作りキリストの体となること、その共同体の完成はキリストの再臨であること等を説き、その共同体の創始者が「ダビデ牧師」であることを示唆していた。張牧師又は宣教師らは、信奉者に対し、宣教の支障となる事実を正直に打ち明けないことも「知恵」であると説き、その教えの内容を他言しないこと、既存の教会に所属することを求めた。〉

「キリストの再臨」で完成する共同体の創始者は「ダビデ牧師」こと張在亨氏である。ダビデ牧師や宣教師らは、宣教の支障となる事実を隠すことを「知恵」であると説き、教えの内容を他言しないこと、既存の教会に所属することを求めるなど偽装を奨励した。

張氏の信奉者が経験した「共同体」での実態

  1. 〈張牧師は、平成16年頃、「開拓」と称する本邦での宣教活動を計画し、46の都道府県における宣教活動の担当者を定めた。この計画において、宣教活動の担当者は「使役者」と呼ばれた。東京ソフィア教会や原告、ベレコム及びその他の張牧師と関わりのある組織では、少なくとも平成19年頃まで、当時学生であった者を含む信奉者が、宣教師らの要請に応じて、「使役」の名目のもとに、原告を含む関連組織の活動に無償で従事した。信奉者が従事した活動は、東京ソフィア教会やACMにおける宗教的な伝道活動から、原告を含む関連組織の事業活動にまで及び、信奉者は、これらの組織の維持のため、寄付や借財を求められることもあった。東京ソフィア教会は、賃借する建物の賃料を支払えず、活動拠点を変えたことがあった。〉

張在亨氏は、宣教活動を担当する「使役者」を定め、東京ソフィア教会、CT、ベレコムなど関連組織の活動に、学生を含む信奉者が「使役」の名目のもとに無償で従事させた。信奉者は組織の維持のため寄付や借財を求められた。

CT及びその関係者が不法行為に関わったこと

  1. 〈張在亨氏の宣教活動に従事する宣教師や信奉者の中には、困窮のあまり、「これも御国のため」と述べて、公共交通機関の利用料金を支払わない者がいた。
  2. 〈原告は、平成19年6月、張牧師の宣教活動を行う宣教師に対し、開催場所を偽った会議の開催等を示す文書を交付し、本邦への入国及びその宣教活動の便宜を図ったことが認められる。原告の上記の行為は、わが国の入国管理上、問題視されるものであったということができる。上記事実は、侵害部分1が示す事実の重要な部分、すなわち、原告が、内容を偽った保証書を作成し、張牧師の「共同体」の宣教師の入国に係る不正に加担したとの事実と一致すると認めるのが相当であり、侵害部分1の事実摘示にわたる部分は、その重要な部分において、真実に合致していると認められる。「これはおそらく犯罪です」との意見も、上述したところにより、その前提とする事実の重要な部分において、真実に合致すると認められる。〉

張在亨氏の計画した宣教計画に基づき、福岡県担当の韓国人宣教師が入国する際、正規の宣教ビザによらず、実際には存在しないCT福岡支局での会議に出席するとの名目での「入国許可願い」をCTが入国管理事務所に送り、CTの代表者が身元を保証し、実際には存在しない「福岡支局」を偽装した。これは宣教師の身分を偽り宣教の目的を隠した不正入国にCTが加担したことを示す。

ダビデ張牧師の信奉者たちが淀橋教会に行くようになった経緯

〈東京ソフィア教会に通っていたCT従業員2名が取材中に所属教会を尋ねられた際の対応を責任者に尋ねた際、相談を受けた張牧師は「どうして大きい教会に行かないのか」と述べ、従業員らは東京ソフィア教会に通っていることを秘して、峯野龍弘牧師が主管牧師を務めるキリスト教団体の教会「淀橋教会」に通った。〉

根田が報道したクリスチャン新聞の記事を否定する対抗記事を書いて潰すよう、張在亨氏がCT関係者に指示したこと

〈張牧師は平成16年から平成18年までの間頃、原告の事務所を訪れ、原告が発信する記事の内容等について指示をすることがあった。Linda Suhことソ・ジンハは、平成201014日、高柳及び矢田を含む当時の原告の関係者に対し、SNSのチャット機能を通じて、「根田の件に関して先生からお話があった」、「先生がおっしゃった話を今ここにいいますから」、「先生は根田に手紙を送るよりも、メディアで記事で出していけばいい、とおっしゃいました」、「手っ取り早く記事を書きなさい、と」、「これまで決定的だといって韓国内の陰謀勢力と結託して事を起こしてきた根田がついにすべて否定された資料をもってまたもうそを書きはじめた(中略)うそをついたことに対して指摘してその他詳細に書きなさい。弁論の機会にしなさい」、「聖婚礼拝、それについてよく書きなさい」、「礼拝だって言っているのに、式と言ってる」、「このことをよく潰しなさい」、「早く書くべきだ」、「完璧に潰しなさい」、「今回出た記事に対する反論を長く詳細に全部反論して」、「これまでのことを詳細にシリーズで」、「全部詳細に書きなさい」などと伝えた。〉

張在亨氏の異端疑惑を追及する根田氏の報道に対し、張氏は自らCT関係者に対し、根田は韓国内の陰謀勢力と結託してうその記事を書いたと反論する記事をCTに書いて潰しなさい、と指示を出した。

「ダビデ牧師と共同体を考える会」ブログ管理者・中橋祐貴氏を通して得た「共同体」の実情と、中橋氏の「謝罪文」等によって原ブログ(「ダビデ牧師と共同体を考える会」ブログ)記事の内容の真実性は否定されないこと

  1. 〈被告は、平成29年末頃に中橋(祐貴氏=元異端・カルト110番編集長)と知り合い、平成308月ごろまでに、中橋から、張牧師の「共同体」の実情について、元信奉者20名以上から証言を得ていることを伝えられた。被告は、同月、証人A(判決文では実名)と面談し、原告及び張牧師の「共同体」において体験したとされる事実の説明を受け、中橋から、証人A及び証人Bの書く陳述書の原資料となった文書を受け取った。被告は、その後、原ブログに掲示された原記事(注:本件訴訟で原告が問題視したブログ記事のこと)を含む各記事の内容が、中橋や証人Bの提供した情報や、被告が取材活動で得た報道等の内容と一致すると認識したことから、原記事は真実に基づく体験談であると判断し、本件各投稿をした。〉
  2. 〈中橋は、平成31316日頃から令和元年86日頃にかけて、自身が管理する原ブログに原記事を掲載した。原告は、原記事により原告の名誉、信用が毀損されたとして、中橋に損害賠償を求める訴えを提起した(令和3年)。中橋は、原記事は元信者の体験談であること、中橋自身も原記事の内容を元信者から聞いており、資料の提供を受けていることなどを主張し、原告の請求を争ったが、令和31012日、原告との間で、原記事が原告の名誉、信用を毀損するものであることを認め、原告に損害賠償を支払うこと等を内容とする訴訟上の和解をした。〉
  3. 〈中橋は、前記和解に先立ち、同年825日を作成日付とする原告宛ての「謝罪文」と題する文書を原告に差し入れた。同文書は、原ブログ記事の内容が、事実無根の表現を多数用いて原告の名誉、信用を著しく毀損するものであること、自身が編集長を務める「異端・カルト110番」や原記事で被告(根田)の多大なる影響を受け、事実に反する内容や過激な表現を発信していたこと、原告の異端疑惑の証拠とされる聖書講義のノートを自ら創作し、元信者が作成したものと偽ったこと等を表明する内容であった。〉
    (判決文は、中橋氏が同日付でキリスト教関係者等に対し、従前の言動を撤回する旨の文書を作成したことにも言及しているが、同文書は実際にキリスト教関係者等に提示された形跡がないので、その内容については割愛)
  4. 〈中橋は、令和3年6月頃から前記和解に至るまでの間、原告またはその代理人に対し、元信者から詳細な説明を受けており、和解に応じることには葛藤があったが、今の状況から解放されたいので、和解を優先したい、とにかく1日も早く裁判を終わらせたい、医師から燃え尽き症候群と診断された、などと文書で伝えた。〉
  5. 〈中橋は、原告との訴訟上の和解に際し、本件謝罪文等を作成して、原記事を含むブログ全体の内容に事実無根の表現が多数含まれていた、原告に関し虚偽の情報発信をしていた、との認識を示している。しかし、中橋が、上記和解に応じる直前まで、原ブログの内容が、張牧師又はその「共同体」の元信者の取材に基づくものであるとの認識を示していたこと、中橋が、原告から訴えを提起されたのを機に精神的に追い詰められ、訴訟の終結を優先する意向を強めていたことを考慮すると、中橋は、原ブログの内容が、証人A及びBを含む張牧師とその「共同体」の関係者の情報提供に基づくものであるにもかかわらず、原告との訴訟による疲弊を避ける目的で、本件謝罪文等を作成したと認めるのが相当である。よって、本件謝罪文等によっても、原記事の内容の真実性は否定されない。〉

本件訴訟で原告CTは、「ダビデ牧師と共同体を考える会」のブログ管理者であった中橋祐貴氏が署名捺印したというCT宛ての「謝罪文」と、自分がCTに対して事実ではない情報を広め、信用を失墜させたことを認めるとする「諸教会並びにメディアへのお願い」と題する文書を証拠として提出したが、裁判所はそれら謝罪文書等を「精神的に追い詰められ作成したと認めるのが相当」と判断し、その信憑性を退けた。