CT・根田裁判で明らかになった 隠蔽されていた事実
11月13日、東京高裁で「クリスチャントゥデイvs根田裁判」の二審判決が言い渡されました。4月22日の東京地裁(一審)判決では事実認定されたが二審判決では退けられたこともあります。では、一審・二審を通じて司法が認定した「事実」は何なのか? 二つの判決文から認定事実の概要を抽出してみると、これまでクリスチャントゥデイ(CT)がひた隠しにしてきた「ダビデ張とその共同体」の実態が浮き彫りになってくる。
*以下、数字の項目は裁判所の判断、▲はCT側の主張 *( )内は判決文のページ
*(地)は一審東京地裁判決での認定事実、(高)は二審東京高裁判決で変更・補正された事実
*〈 〉内は判決文からの引用(一部要約も含む)。下線、《注》及び文中(注:)は根田による
【判決で事実認定されたこと】
1. 張牧師が再臨のキリストであると示唆されたとする証人らの供述は信用できる(高P.8)
〈証人A(注:判決文では実名。以下同)は、平成15年頃、張牧師の関連組織である大阪府所在の教会を訪ね、伝道師等から、張牧師が再臨のキリストであることを示唆する講義を受けた。(高P.7)
上記で認定したノート(注:いわゆる「Kノート」と称される聖書講義ノート)の記載からうかがわれるとおり、東京ソフィア教会等の宣教師等は、正統派のキリスト教の教義から外れる内容を講義し、張牧師に関する言及もあったことを勘案すると、平成14年頃から平成15年頃にかけて、東京ソフィア教会等において宣教師等から講義を聞いた証人Bや証人Aが、張牧師が再臨のキリストであることが示唆されたとする供述は、信用できるというべきである。〉(高P.7-8)
▲〈控訴人は、上記のノートには、張牧師が再臨のキリストであることを示唆するような記載がなく、これらの点に関するA証言やB証言は、約20年前の出来事についてのもので信用できないことを指摘して、東京ソフィア教会等において、異端的な教義が教え込まれていたことはない旨主張する。〉(高P.7)
2. 事実認定に用いるB作成の陳述書及びA作成の陳述書は、各作成名義人の証言及び宣誓供述書により、真正に成立したと認められる(地p.6)。
《注》2人の脱会者(元共同体信者/元CT記者)の陳述書、及び法廷での証人尋問の記録「証人調書」には、ダビデ張牧師を「再臨のキリスト」と信じさせられた経緯、「嘘も知恵」と教えられ、キリスト教界で異端疑惑が起きていた東京ソフィア教会に属していることを隠すために淀橋教会に通ったこと等が証言されている。
▲2人はCTに雇用されたことはなく、一時期ボランティアで記者をしていたことがあるが辞めた人物にすぎない(一審での原告弁論)。
3. 聖書講義において、共同体の完成はキリストの再臨であると説かれた(高P.6)
〈証人Bは、平成14年9月頃、北村(注:CT設立当初の編集長)と共に、同教会(注:東京ソフィア教会)の宣教師から聖書講義を受けたところ、その講義においては、清められた者、従順な者が共同体(第3のイスラエル、新しいイスラエル)を作り、キリストの体となること、その共同体の完成はキリストの再臨であることが説かれ、その共同体の創始者がダビデ牧師と呼ばれていた張牧師であることが暗に示唆されていた。〉(高P6-7)
▲「共同体」なるものは存在しないしCTはメディアを業とする株式会社であり関係ない。(一審での原告弁論)
4.聖書講義ノートには張牧師の誕生日に言及する部分がある(高P.7)
〈北村は、上記の聖書講義等に関して2002年9月付けノート及び2004年8月付けノートを作成していた。これらのノートには、「イスラエルの国=神の国」「新しいキリストの来臨」「神の国の再興」「新しいイスラエル」「第3のイスラエル」などの記載のほか、張牧師の誕生日に言及する部分がある。〉(高P.7)
《注》牧師の誕生日に言及する部分は次の通り(北村氏が筆記した聖書講義ノート〈Kノート〉中の歴史講義の一つ「キリストの系図」より)
5. BやAは、張牧師本人又は宣教師から、旧約聖書のエピソードを基にするなどして、うそも「知恵」である旨を説かれたことがあった(高P.7)
6. 取材先から所属教会を聞かれた場合どのように答えればよいか…張牧師が「どうして大きな教会に行かないのか」と発言した。Aらは、淀橋教会の礼拝に通った折に、自身が東京ソフィア教会に属することを淀橋教会関係者等に明かすことはなかった(高P.8)
〈B、A及び北村は、平成16年ないし17年頃、東京ソフィア教会に通いつつ、淀橋教会の礼拝に通うことがあったところ、Aは、当時、クリスチャントゥデイが異端だと疑われていたために大きな教会の信者となる必要があると認識しており、また、Bは、控訴人の記者が取材を行う際に取材先から所属教会を聞かれた場合にはどのように答えればよいかが話題になった際、張牧師が「どうして大きな教会に行かないのか」と発言したことを聞いたことがあった。Aらは、淀橋教会の礼拝に通った折に、自身が東京ソフィア教会に属することを淀橋教会関係者等に明かすことはなかった。〉(高P.8)
7.張牧師がCT従業員に、淀橋教会に通うよう示唆し、記事の内容を指示し、根田の執筆した記事への対抗記事を書くよう求めた(高P.14)
〈…③控訴人(注:CT)の従業員の中には、張牧師の示唆により、東京ソフィア教会に所属することを明らかにしないで淀橋教会に通った者がいたこと(認定事実(3)エ)、④張牧師が、平成16年から平成18年までの間頃、控訴人が発行する記事の内容等について指示を出すことがあったこと(認定事実(5)ア)が認められ、また、⑤証拠(乙47・13~15枚目*)によれば、⑤張牧師の信奉者と思われる者が、平成20年10月に、チャットを通じて、高柳及び矢田を含む当時の控訴人の関係者に対し、張牧師の発言であるとして、被控訴人が執筆した控訴人に関する記事に対する対抗手段として、控訴人も反論の記事を書くよう求めたことがあったことが認められる。〉(高P.14)
*上記⑤の証拠(乙47・13~15枚目)は以下のとおり。(地P.10)
〈Linda Suhことソ・ジンハは、同年10月14日、高柳及び矢田を含む当時の原告の関係者に対し、SNSのチャット機能を通じて、「根田の件に関して先生からお話があった」、「先生がおっしゃった話を今ここにいいますから」、「先生は根田に手紙を送るよりも、メディアで記事で出していけばいい、とおっしゃいました」、「手っ取り早く書きなさい、と」、「これまで決定的だといって韓国内の陰謀勢力と結託して事を起こしてきた根田がついにすべて否定された資料をもってまたもうそを書きはじめた(中略)うそをついたことに対して指摘してその他詳細に書きなさい。弁論の機会にしなさい」、「聖婚礼拝、それについてよく書きなさい」、「礼拝だって言っているのに、式と言ってる」、「このことをよく潰しなさい」、「早く書くべきだ」、「完璧に潰しなさい」、「今回出た記事に対する反響を長く詳細に全部反論して」、「これまでのことを詳細にシリーズで」、「全部詳細に書きなさい」などと伝えた。(乙47・13~15枚目、乙110)〉
《注》上記、「被告人が執筆した控訴人に関する記事」は、クリスチャン新聞2008年10月19日付「韓国クリスチャントゥデイ元広告局長 ダビデ張証言〈下〉秘密裏に統一原理酷似の教え」及び同年10月5日付「韓国クリスチャントゥデイ元広告局長 ダビデ張証言〈上〉『私は張氏を再臨主と信じていた』」。それに対する対抗手段として、控訴人が書いた反論記事は、クリスチャントゥデイ2008年10月14日付「間違い知りつつ強行、報道倫理捨てた根田氏報道の実態(1)」。当時クリスチャン新聞は紙媒体、CTはネット媒体であり、クリスチャン新聞10月19日付(記事A)がCT10月14日付(記事B)より先に発行されている。チャットの内容を送信したメール(本件証拠)の宛先にはCT編集長・社長・記者らのメールアドレスがあり、記事Aが出てすぐ「先生」ことダビデ張氏が指示を出し、ほぼその指示どおりの対抗記事が翌日には出されたことがわかる。
8. 原告が設立された当時の従業員には、東京ソフィア教会で張牧師の按手を受けた者がいた(地P.7)
〈原告(CT)設立時の代表取締役であった高柳泉は、米国滞在中に、張牧師が学生らと聖書研究等を目的として設立した組織「アポストロス・キャンパス・ミニストリー」(ACM)に加わり、本邦に帰国した後は、東京都内に拠点を置く「東京ソフィア教会」において、伝道師として活動していた。東京ソフィア教会は、張牧師の活動を起源とする宗教組織「日本キリスト教長老教会」の下部組織であり、平成17年頃まで存続した。東京ソフィア教会の礼拝では、張牧師が、説教や按手(信奉者を牧師に任命する儀式)をしたことがあり、高柳のほか、原告が設立された当時の従業員には、東京ソフィア教会で張牧師の按手を受けた者がいた。〉(地P.7・高P.6)
▲原告と張在亨(ジャン・ジェヒョン)牧師=ダビデ張とは関係ない。(一審での原告弁論)
9.信奉者に張牧師を「再臨のキリスト」と告白させているとの報道(地P.7)
〈張牧師については、韓国内外のキリスト教関連の情報媒体において、信奉者に張牧師を「再臨のキリスト」と告白させていること、大学やインターネット関連の企業を設立して影響力の拡大を図り、その収益で関連組織を維持していることが報じられていた。張牧師は、米国において、聖書学校を起源とする「オリベット大学」の初代学長に就任したが、「オリベット大学」は、令和2年、銀行から不正融資を受けたこと等を理由に罰金刑を受けた。「オリベット大学」については、外国人留学生を無報酬又は極端な低賃金で労働に従事させた疑いで捜査を受けているとの報道もされた。〉(地P7-8・高P.6)
10. 学生を含む信奉者が、原告を含む関連組織の活動に無償で従事した。信奉者は、組織やその活動の維持のため、寄付や借財を求められることもあった(地P.8)
〈東京ソフィア教会や原告、ベレコム及びその他の張牧師と関わりのある組織(教会等の宗教組織を含む)では、少なくとも平成19年頃まで、当時学生であった者を含む信奉者が、前述したBやA以外にも、宣教師らの要請に応じて、「使役」の名目のもとに、原告を含む関連組織の活動に無償で従事した。信奉者が従事した活動は、東京ソフィア教会やACMにおける宗教的な伝道活動から、原告を含む関連組織の事業活動にまで及び、信奉者は、これらの組織やその活動の維持のため、寄付や借財を求められることもあった。東京ソフィア教会は、賃借する建物の賃料を支払えず、活動拠点を変えたことがあった。〉(地P.8・高P.8)
11. 法的なことはどうでもよい、困れば借金すればよいとの感覚であった(高P18)
〈控訴人が設立された平成15年から平成19年頃までの間、当時学生であった者を含む張牧師の信奉者が、宣教師らの要請に応じて「使役」の名目の下に控訴人を含む関連組織の活動に無償で従事し、活動の維持のため、寄付や借財を求められることがあり、控訴人を含む関連組織は、その資金調達を信奉者の寄付や借財に頼り、その事業活動に対して労働の対価を正当に支払わなかったものと認められる。そうすると、上記期間における控訴人を含む張牧師の「共同体」について、「法的なことはどうでもよい」とする点、「困れば借金をすればよい」との感覚であったとする点は、いずれも、その重要な部分において真実に合致するものというべきである。〉(高P18)
▲〈「法的なことはどうでもよい」とする表現、「困れば借金をすればよい」との感覚であったとする表現については、真実性がない。〉(高P19)
12. 原告は、平成19年6月、張牧師の宣教活動を行う宣教師に対し、開催場所を偽った会議の開催等を示す文書を交付し、本邦への入国及びその宣教活動の便宜を図った(地P.16)
〈本件確認書上、「福岡支局」の連絡先が高柳とされていることをも勘案すると、平成19年6月当時、控訴人(注:CT)には福岡において事務所としての機能を有する場所はなく、「教会を即席のクリスチャントゥデイ支局に仕立て」たことが認められる。そして、本件確認書が会合の開催場所に関する偽りを記載するものである以上、仮にリ・ジヨンの入国が宣教活動を目的とするものでなかったとしても、出入国管理上、問題視され得るものといえる。〉(高p.12)
▲〈出入国管理法上、韓国人が会合を目的として入国する場合に控訴人が「嘘の保証書」を作る必要はなく、また、控訴人には国内外を含め支店や支社は存在しない。〉(高p.12)
13.宣教師や信奉者の中には、困窮のあまり、「これも御国のため」と述べて、公共交通機関の利用料金を支払わない者がいた(地P.9)
【控訴審判決で一審の事実認定を退けた箇所】
14.(地P.25-26)
〈張牧師及びその宣教師らは、張牧師を「再臨のキリスト」と信奉する者に対し、その信仰を秘して他の教会に所属することを求めており、平成16年頃には、東京ソフィア教会に通っていた原告の従業員2名が、張牧師の進言で淀橋教会に通い、東京ソフィア教会への所属を隠していたことが認められる。また、高柳は、原告の設立後に淀橋教会に通ったことがあり、矢田は、東京ソフィア教会が活動を終えた後の平成17年3月以降に、淀橋教会の礼拝に参加したことがあるところ、その後に、原告が張牧師の関係者の便宜を図る行動をとっていたこと、記事の内容等について張牧師から指示を受けていたことを考慮すると、高柳や矢田は、淀橋教会に出入りしていた頃も、なお張牧師の宗教的影響下にあり、そのことを秘していたと認められるのが相当である。
そうすると、原告の構成員は、その活動の便宜のため、峯野牧師に対し、張牧師が「再臨のキリスト」であるとの信仰を秘し、淀橋教会又はその所属団体の宗教上の理念に従順である態度を示して、峯野牧師にその旨信じさせていたということができ、侵害部分4⑴の内容は、その摘示する事実の重要な部分において、真実に合致すると認められる。侵害部分4⑵の内容も、上記事実を前提としたものであり、その摘示する事実の重要な部分において、真実に合致すると認められる。〉
(高P.20-21)
〈(ア)侵害部分4⑵について
a 前記認定によれば、①平成14年頃から平成15年頃にかけて、東京ソフィア教会等の宣教師等の中には、BやAなど、後に控訴人の活動に従事することになる者に対し、張牧師が再臨のキリストであると示唆する講義を行う者がいたこと、②B及びAは、平成16年ないし平成17年頃に東京ソフィア教会に通いつつ、異端信仰であることを疑われないように、淀橋教会の礼拝に通っていたこと、東京ソフィア教会の伝道師等であり、控訴人の代表者であった高柳は、控訴人の設立後、淀橋教会に通ったことがあること、控訴人の現在の代表者である矢田は、かつて東京ソフィア教会に属していたが、平成17年頃から淀橋教会に転籍し、同教会に通うようになったことが認められる。
b もっとも、原記事4の「体験談」において、侵害部分4⑵の投稿内容(「淀橋教会に(中略)信者たちが計画的に送り込まれていた、その実態」)に対応するのは、侵害部分4⑴の上の段落であるところ、当該段落には、「2010年だったか11年の初頭に共同体の宣教師が宣言した」との記載があることからすると、侵害部分4⑵の摘示する事実は、一般の読者の普通の読み方を基準とすれば、平成22年から平成23年頃に「派遣」された人物をいうものと解される。
しかるに、上記a②の事実は、これと時点を異にするものである上、上記時点においてBやAは脱会していたから、これらの者の証言をもって、上記平成22年ないし平成23年の事実を直ちに推認することはできない。そして、他に、この頃において張牧師の信奉者が淀橋教会に計画的に送り込まれていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。
c 以上によれば、侵害部分4⑵については、重要な部分につき真実であるとの証明がなされたとはいえない。〉
(高P.22)
〈(イ)侵害部分4⑴について
控訴人は、平成19年5月、控訴人ウェブサイトにおいて、張牧師は再臨のキリストではない旨、控訴人としての見解を表明しており、また、高柳と矢田は、本件訴訟において、張牧師が再臨のキリストである旨の信仰を有しておらず、模範的なキリスト教徒を装って淀橋教会の峯野牧師を騙したことはない旨を陳述している。さらに、峯野牧師は、矢田には異端的な言動や行動が見られたことはない旨を陳述している。
以上のとおり、控訴人の新旧の代表者が、異端信仰を有していないことを公にしており、峯野牧師においてもそのことを偽りのないものと判断していることに加え、ここで争点とされている事柄が個人の信仰の自由又は宗教の自由に関わる事柄であり、私人間の民事訴訟で争われる場合であっても慎重に判断されるべきものであることをも勘案すると、上記(ア)a ①及び②の事情を持ってしても、峯野牧師と直接の面識のある控訴人の役員が、平成14年頃から投稿4が行われた令和8年頃までの間において継続的に、異端信仰を秘して、峯野牧師を騙したとの事実を真実と認めることはできないというべきである。〉
【控訴審判決を受けて、今後の課題】
15.クリスチャントゥデイが隠し否定していたことの何が、客観的な立場である司法によって「事実」と認定されたのかを広く知らせ、教会がはっきり認識し共有理解にしていくこと
16. 裁判で証明しきれなかった、ダビデ牧師を「再臨のキリスト」と信じているCTスタッフら共同体構成員が、今なお異端信仰を秘して、峯野牧師を騙し続けていることの立証
17.「共同体」の中で苦しんでいる人々が、実態の問題性に気づき自由にされることができるようサポートすること