キリスト教メディアを自称するクリスチャントゥデイ(略称・CT、矢田喬大代表取締役)が本紙の根田祥一編集顧問に名誉を毀損されたとして110万円の損害賠償を求めた民事訴訟の控訴審で、東京高等裁判所(谷口豊裁判長)は11月13日、原判決の一部を変更する判決を言い渡した。一審の東京地裁は4月に判決の主文で、被告は50万円を支払えと命じていたが、東京高裁は原判決が認定した事実の一部を退け、賠償額を66万円に増額した。
根田氏は当初から、この裁判で名誉毀損の勝敗は問題にしないことを公言し、原告CTが隠し続けている虚偽や詐称の実態が司法の場で事実認定され真実が明かされることを目指してきた。二審で退けられた認定事実と、一審二審の両判決を併せ、隠されていた事実がどこまで明らかにされたのか、判決の意味を総合的に評価する段階を迎えている。
二審判決の最大の変更点は、一審判決が「張牧師及びその宣教師らは、張牧師を『再臨のキリスト』と信奉する者に対し、その信仰を秘して他の教会に所属することを求めており、平成16年頃には、東京ソフィア教会に通っていた原告の従業員2名が、張牧師の進言で淀橋教会に通い、東京ソフィア教会への所属を隠していたことが認められる」「原告の構成員は、その活動の便宜のため、峯野牧師に対し、張牧師が『再臨のキリスト』であるとの信仰を秘し、淀橋教会又はその所属団体の宗教上の理念に従順である態度を示して、峯野牧師にその旨信じさせていた」と認定していたのに対し、「峯野牧師と直接の面識のある控訴人(CT)の役員が、平成14年頃から投稿4が行われた令和元年8月頃までの間において継続的に、異端信仰を秘して、峯野牧師を騙したとの事実を真実と認めることはできない」としたことである。
その理由として二審判決が挙げたのは、原記事4(脱会者のブログ「ダビデ牧師と共同体を考える会」に掲載された記事)の体験談が言及している平成22年ないし平成23年(2010~2011年)頃の事実は、証人らの証言記録の範囲外のものであるという、名誉毀損表現とされた事案の時期と、証人の証言によって立証しうる事実の時期の乖離という問題である。この問題は、原判決で根田氏が敗訴した他の部分においても根拠とされ、二審でも覆らなかった。
また二審判決は、控訴人が提出した、CTウェブサイトにおいて、張牧師は再臨のキリストではない旨の見解を表明しており、CTの高柳(前社長)、矢田(現社長)は、張牧師が再臨のキリストである旨の信仰を有しておらず、模範的なキリスト教徒を装って淀橋教会の峯野牧師を騙したことはない旨を陳述していることを指摘。さらに、峯野牧師は、矢田には異端的な言動や行動が見られたことはない旨を陳述しているとして、「控訴人の新旧の代表者が、異端信仰を有していないことを公にしており、峯野牧師においてもそのことを偽りのないものと判断して尊重していることに加え、ここで争点とされている事項が個人の信仰の自由又は宗教的行為の自由に関わる事柄であり、私人間の民事訴訟で争われる場合であっても慎重に判断されるべき」との姿勢を示した。
一方で本判決は、共同体の元信者でありCTで使役していた証人らが、「張牧師が再臨のキリストであることを示唆する講義を受けた」との事実、「張牧師本人又は宣教師から、旧約聖書のエピソードを基にするなどして、嘘も知恵である旨を説かれたことがあった」との事実を認定している。また、証人らは「クリスチャントゥデイが異端だと疑われていたために大きな教会の信者となる必要があると認識しており、…取材を行う際に取材先から所属教会を聞かれた場合にはどのように答えればよいかが話題になった際、張牧師が『どうして大きな教会に行かないのか』と発言するのを聞いたことがあった。(証人らは)淀橋教会の礼拝に通った折に、自身が東京ソフィア教会に所属することを淀橋教会関係者に明かすことはなかった」と、一審の認定より具体的に記述している。
また、CTが韓国人宣教師の入国の便宜のために交付した確認書につき、「本件確認書が会合の開催場所に関する偽りを記載するものである以上、仮にリ・ジヨンの入国が宣教活動を目的とするものではなかったとしても、出入国管理上、問題視され得るものといえる」と判断した。
11月14日、CTは「東京高裁、根田祥一氏の訴えを棄却 賠償額を増額」の表題で高裁判決について報じた。その記事の内容は、4月の東京地裁判決の報道時と同様、主文の賠償額だけに焦点を当てたもので、事実認定については何も触れていない。一審判決、控訴審判決で真実と認められた事実関係や疑惑を抱かれた点につき、CTは説明すべきである
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