異端問題専門家「極端すぎる終末論で昔から問題がある」と指摘

(出典:ニュースアンドジョイ 2021年1月9日号)

昨年10月5日に行なわれたインターコープ宣教会(以下、インターコープ)の大規模集会で会場となった研修施設「BTJヨルバンセンター」を中心とした新型コロナウイルス集団感染が広がる中、代表の崔パウロ(本名:チェ・ハヌ)氏が「コロナは世界統制するためのプロジェクトだ」という根拠のない陰謀論を関連教会で説いていたことが明らかになり議論が沸き起こっている。ニュースアンドジョイの記事を中心に日本の読者向けに一部内容を編集してまとめた。

インターコープ宣教会の代表崔パウロ氏は以前から陰謀論を説きながら語ることで有名な人物。最近は「コロナ陰謀論」で過激さが増し社会的な非難を浴びることに(画像:ニュースアンドジョイ)

崔氏は関連教会の説教や講演会で「ビル・ゲイツをはじめ世界的な富豪たちが新型コロナから救済を口実に全世界の市民を統制するDNA操作ワクチンを開発しようとしている」と述べていた。

崔氏は、昨年7月に韓国の光明(グァンミョン)にある某教会で「人の戸惑い」というテーマで説教した。その中でビル・ゲイツ氏の話題を集中して取上げた。崔氏は次のように語った。

「ビル・ゲイツら技術開発者は“ビッグヒストリープロジェクト”という名で世界中の教育と社会体制を変革させようと計画している。(中略)彼らはキリスト教文化から生まれた教育概念を取り崩し、新しい技術により生まれ変わらせようとしている。技術が人間の未来そのものであり、世界に楽園をもたらし、技術がキリスト教信仰を消滅させるという結論だ。彼らは神を追い出し、自分たちが世界の王だと宣言するだろう」。

「世界の技術者は“世界統合”を目論んでいる。こうした計画は極めて聖書の終末的だし反キリストだと言える。神に敵対する行為だ」と主張した。世界的なコロナ蔓延は、こうしたプロジェクトの一環にすぎないと強調した。

崔氏の一部の説教をそのまま紹介する。

「すべてがプロジェクトだ。その目的は神の創造世界を技術という名の敵と戦わせ、世界の人々をサイバー的な価値観に取り込んで支配することにある。コロナは中国武漢で1匹のコウモリから人へ感染した自然現象だが、実はこれもプロジェクトに組み込まれていた。さあ、証拠を示そう。コロナは今年(2020年)春から始まったと思っていないか?実は2015年、つまり5年前の3月にビル・ゲイツとその財団が世界的カンファレンスで“今後人類を脅かすのは核兵器ではなく、コロナウイルスだ。今、われわれが人類最大の脅威であるコロナに対抗する準備をしなければならない”と発言していたのだ。2016年5月20日、国連でもコロナを防ぐシステムを作るよう演説があった。事前に仕組まれた計画だったのだ。コロナが蔓延し世の中はどうなったか?接触者を追跡する必要が生じた。しかし、韓国民だけはIDに該当する住民番号を持っているではないか。世界的にID発行が急がれる。国連が全世界市民にIDを発行し、衛星を通じて市民をコントロールすれば、誰が接触したのかなどすぐに確認できる。コロナ被害を食い止めるためのID発行だと思えるがそうではない。だから2020年から国連は“UN・ID2020”というプロジェクトを密かに推進し2030年までに管理体制は完了する予定なのだ。コロナを利用した統制が始まるのだ」

崔氏の陰謀論は何を根拠に語っているのか。さらに、「ビル・ゲイツ氏は早急にワクチン開発を進めている。韓国の大学も研究所に資金提供した。英国もそのワクチン開発に着手している。しかし、このワクチンは治療目的ではない。実はDNAを組み替えるためのものだ。湾岸戦争でアメリカはすでに兵士に使用していた。兵士の食事に混ぜ、それを食べると恐怖心がなくなり口笛を吹きながら敵を殺すことができた。つまり、人を自在にコントールすることができてしまう。間もなく普及するコロナワクチンを摂取すればあなたも奴隷になる」。

インターコープはコロナ防疫調査の協力を拒んでいる。7日、尚州市長(カン・ヨンソク氏)が関連施設を閉鎖しようと立ち入ったところ「令状がなければ入れない」と信者が妨害、市関係者ともみ合いになった。陰謀論を信じる信者は自分たちに責任はないという立場を主張している

崔氏の爆弾発言はこれに留まらない。去年8月にはソチョンの某教会で「時代ごとの標的を見分けなさい」というテーマで説教した。ここでもビル・ゲイツ氏を非難し陰謀論を唱えた。「この間、ビル・ゲイツは文在寅(ムン・ジェイン)大統領に電話をかけていた。韓国のコロナ防疫は素晴らしいと。世界が韓国の防疫システムを必要としているのは、DNAプロジェクトを推進させるためだ」と同様の主張を繰り返した。もちろんこのような事実はどこにもない。

発言はまだ続く。

「韓国はビル・ゲイツの子分に転落した。韓国の防疫能力を高く評価しながら金を投資した。これから普及するワクチンは医療関係者によって開発されたものではない。実はビル・ゲイツ夫妻の巨額投資によって作られた。それにより世界は操作されるだろう。(中略)人を意のままに動かす、絶対服従する奴隷に仕立て上げる。これで人は神を信じることができなくなるのだ。ビル・ゲイツは命がけでこのプロジェクトを強行した。ルシファーの神はエジプトで神の民を奴隷にした。モーセに解放され終わったが、この時代に同じ事が起きる。バベルの塔と同じ結末を見ることになる。神が創造したものをビル・ゲイツが奴隷にするのだから。」

インターコープは過去にイスラム圏に宣教師を派遣し、むやみに目立つ伝道活動をして過激派に拘束され殺害されるという事件を起こしている。中国においても法律に違反し、公安に抵抗するなど問題行為が浮き彫りとなって以来、国内での活動を禁止する条例が2018年2月に可決。これは中国当局が新たに施行した宗教活動の統制強化に向けた条例とされ、インターコープ宣教会が規制対象に含まれた。人民日報は中国の安全保障と政治を危険にさらす3団体を公表、その一つがインターコープだ。同年、一斉検挙が行なわれ拘束された宣教師の内、46人が強制国外退去を命じられた。

他国の文化を否定し、あくまで韓国ファースト(韓国式を優先)で宗教活動に邁進する宣教団体だ。海外で活動する宣教団体から「迷惑だ」などと批判されている。

日本でもインターコープ関係者と名乗る韓国人宣教師が所属する教会を確認することができる。国内では奥山実氏(宣教師訓練センター代表)が日本支部理事長に就任。韓国のメガチャーチで日本でも有名な「オンヌリ教会」は現在もインターコープに対し否定的な立場を示していない。実際にオンヌリ教会派遣宣教師が日本支部のトップを務めているからだ。崔氏は過去に「過激な宣教をしたことはない。それに陰謀論などを唱えたことはない。福音主義、正統なキリスト教信仰に立つ団体だ」と韓国の異端調査機関や審問委員会で弁解している。しかし、何度も改善を求めても表向きには健全だと主張し、内部ではモラルに欠けた過激な宣教スタイルと陰謀論を推奨してきた。韓国の異端専門家は「崔氏は昔から二面性のある人物だった」と批判。「過激な陰謀論は昔から変わっていない。インターコープは信用できない団体だ。関わるべきではない」と注意を促している。

崔氏は、「この時代は危険な時代だ。だからこそ海外宣教を推進すべきだ」と強調する。また、過去の事件についても「聖書に書かれていることを守っただけだ」と正当化する発言をした。こうした思想に影響を受けたと考えられる人物が過去に事件を起こした例もある。「2015年から2017年にかけて全国各地の寺社で、国宝や重要文化財を含む施設に油がまかれ汚損される事件が相次いだ。この事件の犯人として指名手配された米国在住の韓国系日本人男性はインターコープに属していたことがわかっている。神社や仏閣で油をまく同様の事件は、この男性が米国から帰国していない現在まで散発しており、同様の考え方に影響された模倣犯の可能性が疑われている。インターコープによる短期宣教の参加者募集は日本でも行われたことがある。クリスチャン新聞による報道」(本紙 2020年8月16日号

海外宣教に対する最近の崔氏の説教は以下のとおりだ。

「韓国教会は大変な状況だと言うが我々(インターコープ)が一番健全だ。この活動が停まればすべて終わりを迎える。だから邪魔する体制に徹底して抵抗しなければならない。社会を見よ、私たちを殺そうとしている。キリストがすぐ再臨するのだから全民族に福音を伝えなければならない。(中略)アフガンで我々は拉致事件の被害に遭った。韓国メディアと政府はなぜ危険地帯に行くのかと批判した。人間から見れば危険だろう。何も知らずただ危険だと批判するくだらない理屈で宣教を妨害するなら、あっという間にビル・ゲイツの作戦(国連発行のID)が実現され、彼らに世界は支配されてしまう。おかしな論理で韓国教会が宣教できない間に奴らは、UNID2020に取りかかるだろう。2030年までに世界はコントロールされる。今こそ霊的戦争だ。2030年、世界が国連に統制される前に世界福音を達成させよう。神の時が来た。」

インターコープは極端すぎる終末論と無謀な宣教活動で何度も議論を呼んできた(画像:ニュースアンドジョイ)

インターコープは歪曲された終末論や過激なディスペンセーション神学を特に強調する。また、排他的宣教方法は各国で批判を浴びている。主要教団の大韓イエス教長老会統合、合同、合神、高神派と基督教聖潔教会(韓国ホーリネス)はインターコープを警戒する「鋭意注視・参加自制」、「交流断絶」の決定を総会で決議している。神学的な問題点については下記の記事で詳しく報じている。

インターコープ宣教会 統合教団異端似非対策委員会「参加自制」から「参加禁止」へ規定引上げを決定

 

韓国で定評のあるカルト情報サイト「パルンメディア」代表のチョウ・ミドゥム氏は1月9日、ニュースアンドジョイのインタビューに次のように答えた。「崔パウロ氏についてかなり前から問題視する声が聞かれていた。問題を起こしてインターコープは改善通告を受けるたびに崔氏は謙虚な姿勢で対応してきた。しかし、それは演技だったようだ。指導を受けても何もせず、内部で改善する動きは確認できなかった。彼は裏で陰謀論をとなえ、また無謀な宣教を強行してトラブルを起こすつもりだろう」と指摘した。

健全で何も問題がないと強調し、指摘を受けると法的措置に出ると威圧的な態度を示すインターコープだが、皮肉にも法律に違反して大規模集会を強行した。そこでコロナの集団感染が起きた。正確な参加人数について未だ明らかにしていない。警察の捜査が進む中でも自治体による立ち入り検査を拒んだままだ。イベント参加者には事前に口止めまでしていた。証拠隠滅の可能性も指摘されている。パルンメディアのチョウ氏は「崔パウロ氏は随分前からヨハネの黙示録から引用して666の数字が現代版の監視システムだと空論を述べてきた」と語る。インターコープの関係者がコロナ感染にまるで他人事のような素振りを見せ、施設への調査を拒む理由は崔氏から学んだDNA統制説や国家による陰謀論を信じているからだという。

チョウ氏は「ただ、インターコープに関係するすべての人がこのような思想に傾倒しているとは言い切れない。純粋に宣教に取り組みたい人や崔氏の過激な説教を聞いたことがない人たちも多いはず。だから現実に目を留め、崔氏の思想に染まらず、健全な宣教団体でその使命を全うしてほしい」と述べ、インターコープではない宣教団体で活動することを勧めた。崔氏は関連施設でコロナ感染が発生すると、昨年の10月に国政監査機関から陰謀論について厳しい追及を受けた。

当時、民主党のイ・ヘシク議員は「とんでもないフェイクニュースだ。国内の新型ワクチン接種で人間を遠隔操作する遺伝子操作計画が進んでいるとか、国にとって不要な人間を計画的に抹殺する極秘計画が進んでおり、インターコープのメンバーは抵抗に備えるようにという教えに耳を傾けている。悪質な虚偽情報を拡散させているではないか。国民を混乱させるこれら陰謀論について具体的な措置を取るべきではないか」と発言した。

民放番組でもインターコープの極端な終末論などを取り上げた特集が報じられる予定だという。言葉に責任を持たず、思いつきで信者を惑わす陰謀論。一歩間違えれば、取り返しのつかない暴挙に発展する可能性すらある。聖書の話しと絡めた陰謀論で崔パウロ氏は個人(ビル・ゲイツ氏)を集中攻撃した。個人を組織が誹謗中傷し貶める行為は一般に「カルト宗教」として問題視される傾向がある。立派な人権侵害だ。

最近は、韓国系異端・カルト団体がさまざまな陰謀論を唱え始めている。一つの可能性として示し、様々な選択肢の中から取上げることは自由だ。しかし、断定的に不確かな情報を広め、個人を攻撃し、自分たちが犯した問題を正当化する。今後、このような情報操作は増えていくことだろう。十分な注意が必要だ。