キリスト教メディアを自称する株式会社クリスチャントゥデイ(CT)が、名誉を毀損されたとして本紙の根田祥一編集顧問を提訴した民事訴訟で、このほど東京高等裁判所が言い渡した判決について、日本基督教団、日本バプテスト連盟、在日大韓基督教会などで構成される「カルト問題連絡会」が、11月26日、都内で高裁判決報告会を開き、会場とオンライン合わせて約40人が参加した。
代理人の久保内浩嗣弁護士が、法的な観点から二審判決の変更点と裁判所の判断などを解説。被控訴人の根田氏が、一審・二審を通じて司法が認定した事実は何かについて判決文から解析した。また、2004年以来CT問題について警鐘を鳴らし続けてきた日本福音同盟(JEA)から、岩上敬人総主事がJEAの取り組みを報告した。
一審東京地裁判決(2024年4月22日)では、原告(CT)の構成員が、張牧師(ダビデ張こと張在亨=ジャン・ジェヒョン)を「再臨のキリスト」と信じていることを、峯野牧師に秘し、淀橋教会に通った(一部は所属した)ことを事実認定した。しかし二審東京高裁判決は、2人の脱会者の証言を「信用できる」としたものの、本訴訟で名誉毀損が争われた脱会者らの証言ブログ「ダビデ牧師と共同体を考える会」に記事が掲載された時期(2019年)や、記事中に明記された時期(2010年ないし2011年)は、証人らが脱会した後であることを理由に、真実性は証明されないとして一審の判断を退けた。久保内弁護士は、根田氏が負けた部分はこの「時期」の違いや個人の信仰の自由等に関わる事柄について慎重に判断すべきという裁判所の姿勢などが理由であるとされ、賠償額が一審の50万円から二審では66万円に増額されたことを解説した。
それに対して根田氏は、「この裁判で、私は最初から賠償額での勝ち負けを問題にしていない。目標はCTが隠してきた事実がどれだけ認定されるかにあったが、二審でも相当の事実認定が維持された」と評価。証人らが張牧師を「再臨のキリスト」と信じさせられていたこと、張氏から「どうして大きな教会に行かないのか」と示唆され淀橋教会に行ったこと、その際、ダビデ張牧師の創設した教団の傘下にある東京ソフィア教会に属していることは淀橋教会関係者に話さなかったことなど、二審でも一審の事実認定と同等の隠された事実が認定されていることを、両判決文の記述から説明した。
岩上氏は、JEAが2004年、2018年、2024年の3回にわたって、理事会決定に基づき、疑惑の解けないCTの取材をJEAは受けない旨を会員に表明してきたことを報告。また、ダビデ張氏が世界福音同盟(WEA)の総主事に取り入ってWEAの理事(北米理事)になり、WEA事務所を張氏が創設した米国のオリベット大学に置くなど影響を受けてきたが、JEA国際渉外局長でアジア福音同盟(AEA)議長を務めた植木英次氏の働きかけや、2020年にオリベット大学など張氏の組織がマネーロンダリング・詐欺罪などで有罪になったことから、2023年に関係を絶ったことを確認した、などと述べた。
フロアからの発言を求められ、日本キリスト教協議会(NCC)の吉高叶議長が、本判決の事実認定で明らかになったような人権侵害に対し、教会は対処していく必要があるとの認識を示した。
日本基督教団カルト問題連絡会世話人で報告会の司会をした豊田通信氏(小田原教会牧師)が「高裁判決報告会 声明」を読み上げ、参加者らの拍手で採択した。同声明は、「このような事実認定により、クリスチャントゥデイと東京ソフィア教会、張在亨(ダビデ張)牧師との関係や、その反社会的な活動の実態が明らかにされ、ダビデ『共同体』と称されるこの団体が『張牧師が再臨のキリストである』という『正統派のキリスト教の教義から外れる内容を講義』してきた事実が明らかにされた以上、私たちは、クリスチャントゥデイをキリスト教メディアとして認めることはできない。私たちは、クリスチャントゥデイを含むダビデ『共同体』の活動を憂慮し、それぞれがキリスト者として遣わされている現場において注意喚起を促し続ける」と表明。豊田氏は、「この声明や報告会の資料を拡散して、広く知らせてほしい」と促した。
裁判記録に真実の訴えを残すため上告
根田氏は最後に、最高裁に上告したことを報告した。「最高裁に受理される可能性は低いが、控訴審判決の誤りの部分について、異議を最後まで主張した内容を裁判記録に残すために。これまでも山谷訴訟の裁判記録を読んだ人が何人も、CTの隠していた真実に気づいた」とその意図を述べた。
声明の全文と添付された「別紙」資料(判決文の事実認定)は以下のとおり
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