コロナ禍で教会関係の集会やイベントがしにくいなか、大学ではオンラインを使った韓国系カルトの勧誘が活発化していることを5月に報じた。

詳細はこちら:コロナ禍 オンラインが命綱の学生に忍び寄るカルトの手口

8月には、やはり韓国系異端・カルトの偽装勧誘と見られる相談が、大学生以外からも寄せられている。ある女性は、若い女性層に人気のSNSインスタグラムで聖書について発信していたところ、同じく聖書について書き込みがある30代の女性からダイレクトメッセージで連絡を受けた。誘われるままに「教会関係者」という男性らを交えてLINE上で聖書の学びに参加したが、その内容に違和感を覚えたという。彼らは自分たちの教会について実在する正統教団の名を口にしたが、学びで扱われる聖書の箇所が「人の子が雲に乗ってくる」(マタイ24:30黙示録1:7)、「思いがけない時に人の子が来る」(ルカ12:40)、「飢饉や地震が起こる」(マタイ24:8黙示録6:12)、「稲妻がひらめいて人の子が現れる」(ルカ17:24)、「盗人のように来る」(黙示録3:3)など終末の苦難や再臨に関する教えに偏っていたのだ。

▲自称「再臨のメシア」たち。
写真は韓国の提携メディアまたは本紙が脱会者から入手した諸団体の資料より。

学びの指導役の男性は「受肉した神の働き」を繰り返し強調し、十字架を引き合いに出しつつ、「神は直接肉になり、人のための捧げ物となることができたが、人が直接天に昇り、神が人のために用意した罪の捧げ物を受け取ることはできなかった。そういうわけで、可能なのは天地を何度か行き来するよう神に求めることだけで、人間を天に昇らせ、その救いを受け取らせるのは不可能だろう。と言うのも、人はすでに転落しており、またそれ以上に、人が天に昇ることは到底できず、まして罪の捧げ物を得るなど不可能だからである。よって、イエスが人類のあいだに来て、人には到底成し遂げられない働きを自ら行なうことが必要だった。神が肉となるたび、絶対にそうする必要がある」と、イエスと同様に神が受肉することが「何度か」必要であるかのように示唆した。また、「イエスは普通の人間として生きたので、イエスが受肉した神であることに誰も気付かなかった」とも。つまり「再臨のメシア(受肉した神)」はそうとは気がつかない人間の姿で来られる、人が救われるには再臨主が必要というストーリーに布石を打っていることがうかがわれる。上記のうち下線を引いた部分は明らかに聖書の教えから逸脱しており、異端であることを露呈している。

さらに「受肉した神の働きで最もよい点は、神に従う人々に正確な言葉と勧告、人類へのみ旨を残せるため、受肉した神の働きと全人類に向けられた心とを、後に信者たちがこの道を受け入れる人々により正確に、具体的に伝えられる点にある。受肉した神の人間の間での働きだけが、神が人間と共に存在し、生きている事実を真に確立できる。この働きだけが、神の顔を見たい、神の働きに立会い、神の直接的な言葉を聞きたいという人間の欲求を満たす」など、思わず「そうだな」と受け取りやすい人間の合理性と心情に働きかける。そして、霊は見えないので明瞭ではなく漠然とした感動しかもたらせないが、受肉した神は言葉を用いて正確な導きができ、明確な意図、必要な目標を、ずっと現実的に人間に与えられる、と霊なる神と比較して受肉した神の優位性を説く。この論法の延長には、すでに再臨のメシアが肉体をとって来ていて私たちに真理の奥義を教えてくださるという、韓国系異端・カルトの典型的な結論に至ることは明白だろう。韓国ではそうした自称「再臨のメシア」の数が40人とも50人とも言われる。

聖書のことばが引用され、「神」「霊」「肉」「十字架」「キリスト」「救い」などの言葉で説明され、一見キリスト教のように思われる話でも、それらの用語がどういう文脈で使われ、そのことによって聖書本来の教えとは異なる方向へとそれてはいないか、どのような結論に誘導しようとしているのかを見分ける必要がある。このようにSNSをきっかけにコンタクトを持った場合、「聖書のことを発信しているから相手もクリスチャン」と思って油断しないことも、異端・カルトに惑わされないために肝心な注意点だ。このケースでは幸い、女性が所属教会の牧師に話したところ異端の可能性が高いことを指摘され、牧師から異端・カルト110番に相談するよう紹介されて確認できたので被害を未然に防ぐことができた。

ネット上には「聖書が学べる」サイトが数多くあるが、背景が確かな教会や団体のものであるかを確認することが大事だ。教祖を「再臨のメシア」と信じさせる韓国系また中国系の複数の教団がすでに日本国内で活動しており、日本人の信者や牧師(指導者)もいる。一見、正統なキリスト教の教会(教団)のような名前を使っていても、実際には異端の場合もあるので、当サイトの情報を参考にしてほしい。サイト内の「異端・カルト情報リスト」を開くと、韓国の主要教団の総会決議で「異端」「カルト」に規定された団体のうち、日本で活動が確認され、被害や問題が実際に起きているグループのリストがあり、日本でどのような名称を使って活動しているかなどを確認することができる。

また、上記の例のように、自分たちの教団名を偽ったりごまかしたりすることも少なくない。そうした異端・カルトの多くは「嘘をつくことも神の使命のため」を正当化することを刷り込まれているので、メンバーは平気で虚偽の話をする。少しでも話のつじつまが合わなかったり、何かを隠そうとしていたりするような素ぶりを感じたら、注意したほうがよい。

悪魔は、偽りを言うとき、自分の本性から話します。なぜなら彼は偽り者、また偽りの父だからです」(ヨハネの福音書844節)。神の使命のためには偽ってもよいなどという教えは、神からのものではない。