日本国内の大学の対策について韓国異端問題専門紙が特集

現代宗教 2021年5月31日号

「すみません。英語の勉強に興味ありませんか?」と突然、キャンパスで声をかけられた学生(当時21歳)は興味本位で徒歩8分のところにあったアパートの部屋に足を踏み入れた。部屋の中には楽しそうに語り合う若者たちが。スタイルのよい男女が笑顔でこう話しかけてきた。「私たちは国際交流をやっていますよ」。部屋には学生風の若者からアジア、海外からの留学生もいる。サラリーマンも座っていた。「ここはなんだろう?」。とても親切で英語を一生懸命教えてくれた。

次第に仲間意識が強くなるとプライベートな悩み事も自然と語り合える関係になった。居心地がよい。ところが、通い詰めたある日、一人の女性がこうささやいた。「私たちは英語を通じて世界的ベストセラーである聖書を勉強しています」。これは韓国で起きた話しではない。東京のとある有名大学で実際に起きた出来事だ。この学生は異変に気付き、このサークルと関係を断つことができた。この話しを語るのは、日本で霊感商法被害救済担当弁護士連絡会事務局長を務める田村町総合法律事務所所長、渡辺博弁護士だ。「この宗教も韓国から入り込んだカルトであることは間違いありませんでした」。

渡辺弁護士によると、これまでは一般書店で大学入試関連の書籍を選ぶ高校生に的を絞ってカルト側が声を掛けていたという。「私も同じ大学を志望している」などと言って連絡を取り合うという。しかし、大学がカルト宗教に対する警戒を強めると「声がけ」からインターネットを通じた勧誘に力を入れ始めた。「コロナの影響で大学に直接行けなくなった学生は、友達との交流が減り、孤立する。この心理状態をうまく利用して近づいてくる」と語る。「カルト宗教の布教方法はあきらかにここ数年で変化した」という。

新入生歓迎会が行なわれた今年の春、カルト宗教は今までと違う新しいスタイルで勧誘していた。日本は韓国とちがって4月から新しい生活が始まる。入社式、小中高、大学では入学式が開かれる。誰もが不安と期待が交差する“春”を迎えるのだ。入学式の様子もがらりと変わった。日本は2020年の春から非常事態宣言が発令され、大学は休校し、オンライン授業に切り替わった。なかには入学式もなく新学期をスタートしたり、オンラインの入学式も行なわれている。日本もコロナの感染は減少していない。オンライン授業を続ける学校も目立つ。学生たちは新しい環境で友達を作りたいと願っているはずだ。この「新しいこと」「友達がほしい」という心理をカルトは巧みに利用する。ここに注意しなければならない。生活に欠かせなくなったオンラインという命綱にカルトはさまざまな方法で関わってくるのだ。

「新入生の皆さんへ-学生部からの注意喚起」中央大学の公式サイト(出典:https://www.chuo-u.ac.jp/campuslife/news/2020/03/48553)

東京にある中央大学では4月を迎える前に公式ホームページで具体的なカルト対策を公表した。学生や家族に注意を喚起した。SNS上では「#春から中央大学」などとハッシュタグを利用した新入生向けの内容が増えた。なかには大学と無関係な団体が「中央大学」を名乗り、「新入生交流会」、「新入生歓迎会」と称して参加者から会費を集めイベントを開催するトラブルも起きたという。こうした団体に注意するよう大学側は2020年3月24日に公式サイトにアップした。

「新入生に対するソーシャルメディアを利用した不審な告知について」上智大学ホームページ(出典:https://www.sophia.ac.jp/jpn/news/PR)

また、2021年、東京にあるカトリック系の上智大学も「Twitter、LINE、インスタグラムなどソーシャルメディアを通じて、上智大学の新入生を狙った交流会(オンライン含む)や各種勧誘が行なわれていますが、これらの企画に本学は一切関わっておりません」と公式サイトで注意をうながした。「#春から上智大学」のハッシュタグが貼られたアカウントに対して、DM(ダイレクトメッセージ)を通じて宗教勧誘やわいせつな画像が送付される問題も指摘している。

「授業開始まで新入生の皆様は個人情報の管理に注意してください」という警告文を2021年3月1日に発表した。大学側は上記のような方法でさまざまな被害が確認されているが、「親しくなった人から宗教団体への加入を勧められ、断ると態度が急変した」、「(信者から)ストーカー被害に遭った」、「金が稼げるというマルチ商法に騙されて借金を負った」などその内容もさまざま。

全国霊感商法対策弁護士連絡会(出典:https://www.stopreikan.com)

ネットを通じた布教活動は相手の正体を見極めることがとても難しい。直接声をかけるときも「私は●●教の信者です」とまず語らない。正体を隠し近づいてくる。団体も頻繁に名称を変えるため大学も調査が追いつかないのが現状だ。だからこそ、その団体の設立経緯、活動状況、責任者の名前、運営母体、主旨を正確に把握することが求められる。学生に近づくサークルや団体について渡辺弁護士がこのように対応するべきだと語った。「変だなと思ったら二度と連絡しないでください。必要ないときっぱり断ること」。このきっぱり断ることが重要だという。

そして「カルトにハマると異変に気付くのは友達であることが多い。大学職員やその家族も一緒になって力を合わせれば抜け出すことは十分に可能だ」とアドバイスする。

また渡辺弁護士は「たとえ、相手が反社会的なカルト宗教であっても日本の憲法で信教の自由が認められている。信仰する自由がある。そこは重要だ。しかし、正体を隠して布教することは宗教の自由が保障する範囲を超え、反社会的な犯罪を起こす場合がある」と述べる。渡辺弁護士は、このカルトの反社会的な活動にフォーカスして今後も対策にあたると思いを述べた。

 

異端・カルト110番編集後記

渡辺博弁護士は本サイトの顧問弁護士で韓国系カルト宗教に精通したベテランです。田村町総合法律事務所所長、霊感商法被害救済担当弁護士連絡会事務局長(東京弁護士グループ団体)。