コロナ防疫妨害、横領の疑い…「宗教を装ったカルト集団だ、新天地を解体すべき」被害者家族会が訴える。
新天地(正式名称:新天地イエス教証拠〈あかしの〉幕屋聖殿)の李萬熙(イ・マニ 89)総会長が7月31日、水原(スウォン)地方裁判所に出廷した。午前10時30分から予定されていた拘束前の被疑者尋問に出席するためだ。イ氏は取材陣の目を避けて裁判所の裏門から入ったという。
新天地を捜査してきた水原地方検察庁刑事第6部は28日、イ・マニ総会長に対する逮捕状を請求した。△感染症予防および管理に関する法律違反△特定経済犯罪加重処罰などに関する法律違反(横領)△偽計による公務執行妨害などの容疑だ。令状実質審査の結果は遅くても8月1日午前には出る予定だ。令状が受理されればイ・マニ氏はその場で逮捕される。
検察の捜査は、全国新天地被害者連帯(被害者家族の会:チョン·ピヨン代表)の告発を受けて始まった。被害者連帯は2月27日、新天地が政府のコロナ防疫調査を妨害したという告発状を検察に提出した。 新天地側が偽装教会の一部と信者教育センター、受講クラスの修了者(入信した者)および主要幹部の名簿などを報告しなかったという理由からだ。
被害者連帯は3月5日、新村地区の幹部2人が献金で不正に不動産を取得し、裏金を作ったとの疑惑を提起し、さらに告発状を提出した。 信徒たちから集めた献金を教会名義の口座ではなく、イ・マニ氏と最高幹部級信者の個人口座に送金したという内容も含まれていた。検察は、新天地が2018年と19年、安山と水原(スウォン)にある競技場を許可なく無断占拠した事件も容疑に追加した。
イ・マニ総会長が令状実施審査に出席する中、被害者連帯の代表チョン・ピヨン氏をはじめ新天地に入信した子を持つ親たちが記者会見を開いた。親たちは「行方不明の子どもたちが一日も早く家族のもとに戻れるよう教祖(イ・マニ)を早く拘束してほしい」と訴えた。
忠清南道ケリョンから来たある父親は、震える声でマイクを握り新天地に入信して行方不明になった娘宛ての手紙を読み上げた。父親によると娘に最後にあったのは2年前だという。「●ちゃん。(娘の名前)あの時に怪我した足はもうよくなったかい?平和であるはずの宗教が大切な親子の仲を引き裂いていいのか。愛する私の娘●ちゃん。もう家に帰っておいで。家にはママが作ってくれる温かいご飯が用意してあるよ。一緒に食卓を囲んで前みたいに食べよう。お互いに和解し愛し合おう。」そう読みながら涙を流した。
2人の娘が新天地に入信した母親もマイクを握った。「私たちの大切な娘たちは2018年11月に突然自宅からいなくなりました。娘たちの顔ももう忘れてしまいそうなくらいです。いつまで私たち夫婦はこんな苦痛の中で生きなければならないのでしょうか。新天地は宗教詐欺です。イ・マニを早く捕まえて誤りを正してください」と判事に訴えた。
ある家族は「新天地はコロナ拡散問題で教団が批判されると、わざと信者を脱会したように装ったのです。辞めたという若者たちが異端相談所に駆けつけたが、実は演技でした。脱会したことにすれば教団は信者に自由を与えていることを印象づけることができます。私の娘も帰って来たのにまたいなくなってしまいました。」
参加した親たちはプレートを掲げ「新天地は宗教を装ったカルト集団だ」と声をあげた。「国民の皆さんにはもう一度この集団について関心を持って欲しい」。ある親は「新天地はキリスト教ではない。宗教なんて言えない。宗教を名目に脱税し、横領もしている。こうして沢山の家族が被害を受けている。新天地が解体されれば子どもたちを探しに行けます」。参加者は一様にイ・マニ総会長を拘束してほしいと訴えた。
被害者連帯の代表チョン氏は「イ・マニ総会長の逮捕は絶対に必要だ。同時に韓国中に広がる12支派長(教区)のリーダーなど幹部級信者も拘束しなければならない」と強く主張した。「今、明らかになった犯罪は氷山の一角にすぎない。指導部が組織に命じなければできないことばかりだ」。
【解説】異端・カルト110番編集部
イ・マニ総会長逮捕秒読みは日本の隠れ新天地にどのような影響を与えるのだろうか。日本で新天地は存在しないことになっている。海外支部に日本は含まれていないからだ。しかし、本紙は早稲田を中心に中部地方、九州地方でもイ・マニを救い主と内部で崇める新天地の偽装教会を確認している。日本では韓国のように信者が家出をしたり、社会的トラブルを起こしたりするケースはほとんど報告されていない。これは他の韓国系異端・カルト教団にもみられる特徴だ。
韓国で犯罪や非人道的な問題を起こすグループは日本で社会的な批判を受けないよう完璧なキリスト教会を装う。日本人の献金も目当てだ。入信した信者は何ヶ月も内部で教育され最終的に教団側の人間になる。日本の新天地はキリスト教会に身分を隠した信者を派遣して勧誘後、自分たち側に引き抜く行為や悪評をたてて中を混乱させる「破壊活動」を得意とする。被害を受けた教会は少なくない。
一方で一般人の獲得は主に大学キャンパスで行なわれ、在校生の新天地信者が「友人関係」を糸口に時間をかけて組織に引き込むパターンが確認されている。口が裂けても新天地だと認めず、イ・マニの存在も完全否定する。しかし、脱会者から提供される講義ノートの分析や出入りする韓国人信者のつながりを取材すると間違いなくイ・マニを救い主と信じる新天地の日本支部だとわかる。一部情報では信者から「コロナ拡散はデマ」「本部がなにか悪いことをしたというのは嘘だ」と聞かされた受講生がいるという。幹部級信者が海外逃亡する可能性も否めず、イマ・ニ逮捕後、偽装脱会した信者が日本に流入するなどさまざまな懸念がもたれている。
この記事は韓国のキリスト教社会派メディア「ニュースアンドジョイ」が配信した2020年7月31日号から日本人読者向けに内容を一部編集し、同社との業務提携に基づいて記事にしたものです。本紙取材記事も掲載しています。