祝福と訪韓(1)

私は五人家族の長女として育った。二つ離れた妹は病弱だった。母の苦労を知っていたので言われなくても親の願いを察するいわゆるいい子だった。教育熱心な母と仕事熱心な父のもと、、お正月の初詣に行ったりクリスマスや誕生日にケーキを囲んでお祝いしたりごくごく普通の家だった。私が小学生になった頃から母はパートに出かけ始めた。母が家に帰ってくるまではいつも一人だった。母と父はよくケンカもした。けんかをする声を聴くたびに布団にもぐって泣いた。原因は父のマージャンだった。友達と仲良くしろというくせにけんかをする両親の姿に人生の不可解さを感じた。友達と遊んでいたらこの子とは遊ぶなとも言われた。朝鮮人だからというのだ。私は次第に母の価値観に反発していった。私は本当のことが知りたかった。時代が変わっても国が変わっても人間として生きる価値を見つけたかった。少年少女文学全集とか本が好きで漫画も読んだが小説やエッセイなど読むことが好きだった。家に送られてくるPHPを愛読した。本の中にある心温まるフレーズや感動した言葉を書き留めるノートが宝物になった。母と何でも話したかったが多感な私は現実的な母と話が十分にできなかった。母は私がわからなかったのだと思う。

いったん霊的体験をした後はスポンジが水を吸い込むように教理を受け入れていった。疑うことをしらずにむさぶるように教理だけでなくそれに関する本を読み学び行動していった。学生部に所属し卒業と同時に献身生活を始めた。一点の疑いもなくそれができたのは親のような神様を悲しませてはいけないからと洗脳されていたからだ。疑うだけでもサタンが入るといわれ外部からの情報を制限され教会から教えられる情報だけで自分の頭で考え判断することができなくなっていた。短い睡眠時間も長い労働時間も全て霊肉捧げることで条件を積み神の子女として生まれ変わるため。先祖の罪がなくなり先祖が許され霊界で徳を積んで地上天国を作るため、、お金や人間的な価値では替えることができないとてつもない大きな価値を持っていると思わされていた。だからうれしかった。やりがいもあったし誰に何を言われようと天の秘密を知っている特権のような優越感に浸っていられた。この教理のハイライトはなんといっても祝福という結婚だ。サタンの血統から神の血統に生まれ替える儀式。それは完璧な従順を意味する。相手はどんな人でもよかった。文が選んだ人なら。私もこのレールに乗った。何の疑いもなく。義務と使命感で受けた。私の心の中にはただ相手を受け入れなければならない、断ってはいけない、そんな失敗をするとどんな災難が降ってくるかもしれない、わけのわからない恐怖が襲ってきた。理想相対は私の7代先祖の罪まであがなってくれる相手だと教え込まされていた。私がこの祝福を受けることで家族や先祖の罪まで贖い許されるなら受けなければならない。家族は霊界を知らないのだから。霊界でメシアを知らなければ大変なことになると思わされていた。

私の理想相対は韓国人だった。私には断るという選択はなかった。韓国に定住せよ。といわれて送り出された。特攻隊の飛行士のように覚悟と決意を促された。   

続く