日本人元受講生Aさん「抜けられてよかった」。異文化交流型アプリを通じて知り合った中国人たちが新天地信者だった。
新天地の教会に通うようになったきっかけを教えてください。
心理学に精通する評判のいい先生がいると言われて通い始めました。彼らは一言も新天地だとは言いませんでした。辞めるときまで新天地という名前は聞かされていません。
どのようにして新天地信者と出会ったのでしょうか?
中国語に興味があったので異文化交流型アプリ「ハロートーク」を通じて知り合いました。たまたまコンタクトを取った相手が新天地信者だったのです。もちろん何もわかりませんでした。それにカルトがこのようなアプリに潜んでいるなんて夢にも思いませんでした。私が親しくしたメンバーは主に中国人でした。
初めて会った時のエピソードを教えてください。
東京池袋で知り合った人たちと中華料理を食べました。彼らは中国人らしく陽気で社交的だなと思いました。この段階で彼らが新天地だとはわかっていません。目的も気付きませんでした。最初会うはずの人が来なくて、複数の中国人を連れてきました。本当はその時点で変だなと思うべきですが、とても良い人たちで自然と親しくなっていきました。
交流を続けて感じたこと、思い返すことはありますか?
新天地のメンバーは何かいつも焦っているような雰囲気がありました。しかし、何がそうさせているのかまでは当時はわかりませんでした。彼らも人間関係に悩んでいてこの世界に入ったことがわかりました(友人の自殺、イジメなど)。私も自分の悩みを打ち明けたので、何か絆のようなものが生まれました。
何と言われてビルに足を踏み入れたのでしょうか?
いい先生が講義していると言われ、ビルに足を運びました。とくに抵抗はありませんでした。場所は早稲田大学のすぐ近くにあるビルの3階と4階フロアです。
中の様子、人数など教えてください。
昼間の講義は主婦が中心でした。子ども連れのお母さんも来ていました。夜は早稲田大学の学生を含む若者中心です。多いときは1度の講義に2、30人は参加していました。たまにキリスト教関連の映画も観ました。休憩は5分か10分ととても短かったです。講義は大学の2コマくらいだったと思います。会場にはスナック菓子が置かれ和やかな雰囲気でした。ただ、不思議だなと思ったのは、参加している日本人同士でほとんど会話する機会がないことでした。心理学の授業がいつの間にか聖書の話になっていきました。それでもおかしいなと思いませんでした。
ビルの中には、韓国人だけではなく中国人や早稲田の留学生も大勢いました。日本人のリーダーのような人もいましたが、よく覚えていません。規模としては大きいように感じました。
聖書勉強に違和感はありませんでしたか?誰がどのように教えましたか?
比喩(ひゆ)という言葉がよく出てくるなという印象はありました。50代の韓国人男性講師と30代の中国人女性講師がホワイトボードに書きながら教えました。時々、生徒に質問してきました。講義が終わると自分の言葉で内容をまとめ、隣の席の人に教えなければなりませんでした。とても早いテンポで話が進みました。
キリスト教を学ぶのは初めてでしたか?教えの中で特に強調していたこと教えてください。
私にとってキリスト教は初めてでした。聖書も初めて読みました。気になったことは「終わりの時」という言葉をよく使うことです。旧約聖書のヨハネの黙示録を中心に勉強しました。比喩がとても多かったですね。講師が「この世の教会の教えに染まっている人間よりまっさらな人の方がまだ良い」と言っていたことを思い出しました。ここが特別(*)なのだと感じました。
*脱会者が提供した講義ノートの内容からも新天地の教会であることを確認した。
変だなと感じることはありましたか?
ありました。仕事やプライベートより講義を優先するように言われたことです。この時、変だなと思いました。
問題だと感じる行為、態度を受けたことはありますか?
韓国的な愛着表現のひとつだと言いながら講師が生徒に向かってスリッパを投げてきたことがありました。ふざけていると言いながら、さすがにおかしいだろうと思いました。
何がきっかけでそこを離れたのでしょうか?
そうですね。アルバイトを辞めてもっと近く(早稲田)でやるように言われたことです。仕事と宗教のどちらを優先すべきかと問われたのですが、私は個人の自由で決めたかったのです。
異端・カルト110番のサイトはどのようなきっかけで見つけましたか?相談をしたときの印象について教えてください。
新天地を辞めてから少し経っていろいろもどかしい気持ちの中、インターネットで「早稲田」「教会」などと検索していたら異端・カルト110番の新天地に関する記事を見つけました。そこは私がかつて通っていた場所そのものだったのでびっくりしたのです。それまで新天地とはまったく気付きませんでした。読んでみると日本だけではなく、韓国や中国のカルトについても扱っているんだとわかりました。
編集長と会って事情を話した時の印象を教えてください。
私が体験したことを話そうと異端・カルト110番の編集長と会いました。根気強く最後まで話を聞いてくれました。編集長が「カルトというものは教理だけではなく、人間関係に依存させる」という構造について話してくれました。なぜ人はカルトにハマってしまうのかについて、自身の体験から詳しく教えてくれました。安心できました。
新天地とわかってからの心境を教えてください。
当時、ショックで食欲がなく体調も優れませんでした。でも、次第に宗教ってなんだろう?カルトとはそもそも何だろうかという疑問と探究心が湧き起こってきました。でも、新天地だとわかったときは本当に驚きました。そこを抜けられて良かったです。
仲良くしていた彼らについて、思い返せばおかしいなと思うことがあれば教えて下さい。
とにかく話に矛盾する点が多いです。キリスト教の活動について仕事でやっていると言ったり、ボランティアだと説明したり。とても親しくなれたのに住んでいる場所も曖昧でした。よく考えればおかしなことが多かったです。あとから調べるとウソだとわかり傷つきました。演技がとても上手いので騙された気持ちです。
自分がそこに関わって学んだこと、今後どのように生かせそうですか?
人間はやはり社会的生き物であり、支えあって生きていかなければならないと思わされました。ただ、自分が入るコミュニティーは慎重に選ぶ必要があることを学びました。
彼らは不可解な点が多すぎてまだ消化できていません。それでも当時よりずっと体調もよくなり元気になりました。今も疑問に思うことがあります。信者たちは本当に自分から望んであの場所にいるのか、生活や何かやむをえない理由があって今も出ることができないのか。親しくしたからこそ、気になることがたくさんあります。
本紙に期待することを教えてください。
とてもリアルな情報がたくさん出ているので、いつも気になります。他のカルトからでも良いので脱会に成功した人の記録や、その人たちが何を思ってカルトから抜けたのか。またその後、自身の傷をどう癒やし、心を立て直すことができたのか、そういう記事を読んでみたいです。
ありがとうございました。