教祖イ・マニが新型コロナ感染拡大の責任について謝罪。同席した教団幹部らに「ずっとここにいたと言ってください」と耳打ちされる場面も。腕には前大統領から贈呈された金の時計?新型コロナ検診は旧統一教会の病院で・・・。知事強制執行で駆け付けるも教祖ら逃走

新天地の聖地「平和の聖殿」前で謝罪会見後に土下座した教祖イ・マニ氏。駆け付けた被害者家族らから激しく抗議を受けた。(3月2日 写真提供:ニュースアンドジョイ)

世界的に猛威をふるう新型コロナウイルス感染。韓国では感染者数6000人を超えた。驚異的な数だ。幼児を含む41人が死亡している。韓国の国会は一時休会となり経済的な打撃は計り知れない。韓国は過去経験したことがないウイルスパニックに陥っている。

まさか新天地のせいで感染が拡大するとは・・・。誰も想像していなかったことだろう。2月18日に国内感染者31番目の女性(60代)を中心に大邱(テグ)市で一気に感染が拡大した。市内には李萬煕(イ・マニ)氏をメシアと崇める宗教団体「新天地イエス教大邱教会」(正式名称:新天地イエス教証拠(あかしの)幕屋聖殿)があり、この女性はこの教会の信者であることが判明した。当初、この女性は検査を拒否し抵抗したという。密集する礼拝堂内で信者同士が濃厚接触したことで次々に感染。新天地は自分たちがこの教団の信者であることを身内にも隠し、偽装して学生を中心に勧誘するグループだ。さらに一般の教会に組織的に信者を派遣し、教会まるごと乗っ取る工作活動でも有名である。

大邱の教会で感染拡大後も多くの信者は活動を続けていた。彼らは真理を伝えることに命を懸けているという。しかし、結果的に真理どころか多くの死者を出し、国を混乱させるウイルスを伝染させてしまった。教祖は初動の段階で声明を出し、「この事態(ウイルス蔓延)はサタンの仕業だ」とコメントした。国民から批判が殺到する中、教団は「問題がない(感染源ではない)ことを示すために新天地の信者は一般の教会へ行き礼拝せよ」と指示をした。その報道は国内で本紙がスクープとして記事にした。教祖の神格化を優先する公式声明は結果的に反社会性を露わにしたかたちだ。国民の怒りはピークに達した。「協力する」と言いながら正確な資料提出を拒み続けた。

民間団体は教祖らを告発。ソウル市は殺人の容疑で刑事告発に踏み切った。教団内では「肉体が滅びない」「永遠に生きる」メシアとして信仰されている89歳の韓国人牧師。様々なカルト団体を行き来しながら自分の王国を築きあげた終焉の地は、彼にとって悪夢のような現実だろう。もう逃げられないと悟ったのだろう。ベールに包まれた教祖は2日、新天地の聖地「平和の聖殿」前に現れた。

イ・マニ総会長が政府と国民に謝罪した。しかし、突然怒り出す場面も(写真提供:教会と信仰)

教祖イ・マニ(89)が総会長として「政府と国民に謝罪する」と述べた。京畿道加平(キョンギドカピョン)にある「平和の聖殿」で記者会見を開き、31番目に感染が確認され、そこから感染拡大した事態に突然土下座して謝罪した。平和の聖殿は旧統一教会の聖地のすぐ近くに位置する。その距離は4キロとない。まるで対抗するかのように両教団は施設を構えている。この聖殿に足を運んだことのある韓国人某氏の情報によると「中は修練所として利用している。とても大きな施設で土地も広い」という。一般には教祖の別荘として紹介されているようだ。ここは「加平研修院」とも呼ばれ、2012年11月15日に統一教会側から31億5千万ウォンで買い入れたものだ。所有権は教祖イ・マニと後に追放された当時ナンバーツーの座を占めていた元愛人キム・ナミ氏にある。最近になりキム氏はこれら土地を巡り、資金提供は自分が行なったことを新天地脱会者が運営するネットメディアに登場して暴露した。教祖と元愛人は現在莫大な資産を巡り法廷闘争中だ。

教祖は元愛人のキム・ナミ(写真右)氏に新天地の全権を委ねようとしていた。彼女を追放した教祖は莫大な資産を巡る法廷闘争をキム氏と繰り広げている(写真提供:教会と信仰)

2日、突然の記者会見が決定し、平和の聖殿には100人を超える取材陣が集まった。新天地側は安全と防疫などを理由に一部の記者のみ出入りを許可すると説明。対応に不満を抱いた記者側と小競り合いが起きるシーンもみられた。予定より20分程遅れて開始された。教祖イ・マニ氏は89歳という高齢とは思えない足取りで小さく開かれた門から現れた。元愛人でナンバーツーだったキム・ナミ氏が車いす生活をする教祖を献身的に介護する様子が過去に何度も報じられていた。愛人を追放してからは本妻とよりを戻したという。

本紙提供メディア「ニュースアンドジョイ」会見の様子をまとめたYouTube番組(韓国語)

教祖が登場すると取材陣に交じって集まった信者の親たちが一斉に声を荒げた。「娘を返せ!」「私の子どもにきちんと検査(コロナ感染)させて!」「この詐欺師!」。入信後に家に戻らなくなった子どもたちや主婦は多くいる。教祖の会見中もその声が聞こえないほど激しく抗議が続いた。信者らは教団の指示を受け「反対勢力」には暴力的な報復活動もたびたび行ってきた。日本国内でも嫌がらせや精神的圧力を掛けるケースがたびたび報告されている。

「新天地OUT!」プラカードを掲げた抗議や記者から飛び交う厳しい質問に、イ・マニ氏も苛立ちを隠せない様子だった。「静かにしてください!静かに!」と話すシーンもあった。周囲を警戒する教団関係者は無表情で報道陣を直視していた。会場周辺は警察が出動し厳戒態勢だった。一部報道では、会見終了と同時に逮捕されるのではという情報も流れたが、今回は幹部らに退席を促され門内へと消えた。

「申し訳ない」「謝罪する」「協力する」という言葉を繰り返した。「感染拡大は意図的なものではなかった。どうしてこのように広がったのか原因がわからない。政府には協力を惜しまない。人的、物的支援は惜しまない」と強調した。連合ニュースは5日、新天地が事前に協議することなく社会福祉共同募金会に120億ウォン(約12億円)を送金したと報じた。

数年前に撮影された別荘内を散策する教祖イ・マニ氏。会見に臨んだ姿とはまるで似ても似つかない(写真提供:教会と信仰)

教祖はマスクをつけたまま会見に臨んだ。高齢ということもあり声は小さくほとんど聞き取れなかった。記者からの質問で「他の信者同様、施設内にいたのか?」と問われると「私は(指導者として)色々と移動しなければならない」と答えた。その様子に慌てた教団関係者が教祖の耳元で「移動していないと説明してください」と訂正を促した。すると「私は2月27日からここ(平和の聖殿)にいる」と語った。この説明も教団関係者が訂正を促し「2月17日から移動していない」と述べた。教団側は急いだ様子で「総会長はお戻りくださいませ」と退席させた。「質問に答えろ!」「なぜ退席するのですか!」。報道陣の声をあざ笑うかのようにガッツポーズを見せつけ去って行った。

イ・マニ氏は1月末から2月初旬にかけ大邱市南部の清道デナム病院の地下にある斎場で実兄の葬儀を幹部信者らと行ったことが確認されている。報道によると中国武漢市に渡航歴のある信者も参列したことが判明した。防疫当局は6000人を超えた大感染被害の原因は、新天地の教祖周辺の行動と31番目に感染確認された女性信者(60代)からだとみている。新天地からの被害を訴える被害者家族による団体「新天地被害者連帯」は、教団側と裁判の結果、新天地の勧誘は違法性があると認める判決を勝ち取ったばかりだった。同団体はイ・マニ氏と幹部らを感染症予防法違反などの疑いでソウル中央地検に告発した。それに追い打ちをかけるように韓国の首都であるソウル市は、イ・マニ氏と教団の12教区長(支派)を殺人罪などで刑事告訴した。今回の会見は、教団が感染拡大防止に向け政府に協力し誠実に対応していることを示す政治的パフォーマンスだといえる。イ・マニが一般の報道陣の前に登場することは極めて異例だ。

教団側は「未提出と疑われている信者名簿はすべて疾病管理本部に提出した」と主張した。存在を曖昧にしていた中国武漢(新天地の教会が昨年末建設された)の信者は全員中国人で357人だと発表した。また、海外伝道長は「海外の信者数は3万3千人だ。2010年に武漢で布教活動を開始し、2018年に中国当局から取締りを受けたため2018年6月15日に現地の教会を閉鎖し、インターネット礼拝に切り替えた。現地で信者が集まることはなかった」と説明した。

宗教専門誌「教会と信仰」の報道によると「新天地中国教会のビデオ会議資料には、昨年(2019年)の初め武漢には4つに構成された偽装センター(勧誘など多目的に利用する)と聖書勉強を行なう福音部屋の運営状況が記載されている。今回の会見で教団側が2018年6月15日から閉鎖したという主張は事実ではない」と紹介している。この記事は国民日報で2日に掲載された。この報道後、1月12日に新天地本部教会(果川)で行なわれた過越祭に武漢から帰国した現地責任者が参加していたことも判明している。国民日報は5日、チョン・ウンギョン疾病管理本部長のコメントとして「この期間(1月)、新天地信者で中国から韓国に帰国した人は38人。1人は武漢地域から入国したことを確認した。武漢から戻ったメンバーは新天地側のリストにはなかった」と報じた。

記者会見でイ・マニ氏は新型コロナの検査を受けたと説明。インフルエンザの予防接種もしていると述べた。会見を見た専門家からは「肉体永生(死なない)と信仰されているメシア(イ・マニ)がワクチン接種していると聞き、この教団の教えは詐欺的としか言いようがない」と批判の声が上がった。

教祖が終わりの日の審判をくだすメシアであることを示す教団内部の置物(キリスト教ポータルニュース提供)

平和の聖殿の内部映像を報じたキリスト教ポータルニュースは「読者(新天地関係者)が送ってくれた教祖の姿」という記事を掲載した。イ・マニ氏の人形は終末(地球の終わりの日)の審判をくだすメシアとして飾られていたという。右手には石、左手には秤(はかり)を持っている。秤(はかり)には「啓示」と書かれた書物と信者をイメージした人形が置かれている。同報道によれば「メシアであるイ・マニ氏が世を裁き、統治することを示すもので神格化されている証拠だ」という。また内部映像も報じられ、多くの信者が拍手と最敬礼する中、イ・マニ氏を「王の王」と崇める様子も確認できた。

会見の会場となった平和の聖殿のすぐ近くには旧統一教会の聖地「天宙清平修錬苑」の広大な土地と施設がある。つい先日、ここで故文鮮明の生誕100周年を祝う大規模イベントと合同結婚式が行われたばかりだ。世界を治める再臨のキリスト(メシア)主権争いで双方激しいライバル意識を持つ「旧統一教会」と「新天地」。ところが会見の最後にスポークスマンにより公開された1枚の検査証明書が物議をかもした。驚くことにイ・マニ氏はHJマグノリア国際病院(旧清心病院)で受診したのだ。同病院はすぐ近くの旧統一教会が経営する病院である。担当医は「ノリヒサ・ヨウコ」、日本人と思われる。自称メシアが自称メシアを標榜する教団の医療機関で受診したのだ。

前大統領朴槿恵(服役囚)から贈呈されたものと思われる腕時計。これは偽物ではないかという説が有力視されてきた。韓国の異端、カルト指導者は政治家との癒着が深刻な問題となっている(写真:Ohmynews)

さらにイ・マニ氏の左腕には金色に輝く腕時計がはめられていた。「朴槿恵」(パククネ)と刻まれていることもわかる。新天地は前大統領を含め、政治家との癒着も問題視されていた。本人は多くの報道陣の前でなぜ「統一教会」「朴槿恵」2つのワードを暴露したのだろうか。時計は「31日」の日付になっていた。準備に慌てたのか、いずれにせよ新天地は崩壊していく可能性が高まったといえる。この腕時計も3日の現地メディアは「偽物ではないか」と報じている。

会見直前、京畿道知事の李在明(イ・ジェミョン)氏はSNSを通じて「イ・マニ氏は会見に臨む前に保健所の検査に応じるべきだ」と指摘し、「検体採取に応じない場合は立ち入り検査など強制執行し、現行犯でイ・マニ氏らを逮捕する」と警告していた。イ知事は強制執行のため保健所長(加平郡)と警察関係者を同行させ平和の聖殿に向かったものの、入れ違いでイ・マニ氏を乗せた教団関係車両は果川へ移動したことがわかった。果川は新天地の本部がある。強制執行を恐れ、逃走を図ったものと思われる。知事らは2日21時過ぎにイ・マニ氏ら幹部がいなくなった平和の聖殿前で会見し、「教団関係者は我々が向かう途中にここを出たことを確認した。報告によればイ・マニ氏は到着した果川で検査を受けそうだ。一応必要な検査は済んだと理解している。このような騒ぎになる前に最初から検査を受けてほしかった」とコメントした。法にのっとって知事はイ・マニ氏の会見前に本人の検査を要求する手続きを踏んだという。それを無視した新天地側に不快感をあらわにした。

ソウルの地下鉄の様子。休日だが乗客は少ない。(撮影:2020年2月23日 本紙読者提供)

ソウルの街中は感染を恐れ車の往来も比較的少なく、特に地下鉄や食堂は閑散としているという。韓国には信者数数千人規模の大型教会(メガチャーチ)がいくつも軒を並べるが、ほとんどの教会は「礼拝休止」としオンライン礼拝に切り替えているようだ。人ごみを避け自然の中で時間を過ごす人も多い。町の至るところに「新天地お断り」「入室禁止」の張り紙がされている。国内の混乱ぶりがうかがえる。多くの企業が在宅勤務を推奨している。スーパーも客足は遠のいているようだ。近所の市場を利用している。感染拡大に歯止めが効かない中、韓国の小中高校は始業式がさらに2週間延期され3月23日(月)と通知されたという。これも変更される可能性が高い。

新天地の問題が新型コロナウイルスによって世界中で報じられるようになった。ニュースで「異端である」「キリスト教の異端とされる」という表現が目立つ。次号は本紙が約50時間にわたる取材で明らかにできた日本の新天地情報と共に韓国の異端規定についても詳しく報じる予定だ。(記事:中橋祐貴)