全国霊感商法対策弁護士連絡会は9月16日、「旧統一協会の被害実態について」をテーマに都内で全国集会を開き、安倍元首相銃撃事件に関わる状況などを発表。旧統一協会により発生した被害を救済し、また新たな被害を生み出さないためにはどうすべきかをめぐって声明を発表した。声明は、この問題の解決のために、旧統一協会に求めること、解散請求、カルト対策、二世問題、学校における対策及び教育、被害家族へのサポート体制を、それぞれ関係各所に対して次のように求めた。

集会後、記者会見に臨む全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士ら。発言は代表世話人の山口広弁護士

声明

2022年9月16日

全国霊感商法対策弁護士連絡会
代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌) 弁護士 中村周而(新潟)
弁護士 河田英正(岡山) 弁護士 平岩敬一(横浜)
弁護士 山口 広(東京)
事務局長 弁護士 川井康雄(東京)

 本年7月8日に発生した安倍元首相銃撃事件を契機として、世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会、以下「旧統一協会」という。)に関する諸問題について、政治家との関係に留まらず、その行ってきた違法行為の内容や被害の深刻さについても報道等を通じて社会に周知されつつある。今必要なのは、そうした実態を踏まえ、旧統一協会により発生した被害を救済し、また新たな被害を生み出さないためにどうすべきか、ということである。
旧統一協会の最大の問題点は、その伝道活動において、勧誘自体が宗教団体であることや当該活動の目的が宗教勧誘であること、入信後の宗教的実践活動を一切秘匿することによって、当初からそれらが明らかにされれば絶対に入信することのない者であっても信者にしてしまう、これにより被勧誘者の信教の自由や自己決定権を侵害する、という点にある。もちろん、全財産を投げ出すような献金をさせたり、ほぼ無報酬で苛酷な労働に従事させたり、その被害者に正体を隠した伝道活動をさせて新たな被害者を生み出させたりすることも重大な問題であるが、そもそもそうした活動を行う信者が生み出されるのは、上記のいわゆる「正体隠し伝道」がなされるからである。
当連絡会は、この最大の問題点、そしてそれにより発生する様々な問題を解決するための種々の方策について、関係各所に対し、この機を逃さずに実施されるよう、以下のとおり求める。

声明の趣旨
1 旧統一協会に求めること
旧統一協会は、
今後の伝道活動においては、被勧誘者に対し、予め、勧誘の主体が統一協会であること、及び、勧誘目的が宗教団体への伝道であることを明らかにし、また、文鮮明をメシアと信じさせるまでに、入信後の献金及び伝道など宗教的実践活動の中核部分を明らかにし、被勧誘者の信教の自由、信仰選択の自由を侵害しないようにせよ。
信者や信者であった者への勧誘経緯、従前の献金及び物品購入代金名下に支払わせた金額を全て調査し、当該信者を正体隠しの伝道により信者とした場合、及び先祖の因縁等で不安を殊更煽って献金をさせたり、当該信者の経済状態や生活状況からして過大な支出をさせたりしたことが明らかになった場合には、当該信者または信者であった者に真摯に謝罪し、損害の一切を賠償せよ。
今後、信者から献金その他名目を問わず金銭を受領する場合には、出捐者、及び、金員の受領主体、目的、金額を明記した領収書を交付し、併せて、その一切を記録して会計・財務資料として保管し、献金をした者からの要求があった場合にはその記録を開示せよ。
信者に対し、こどもへの信仰継承を行う際は、我が国が批准している子どもの権利条約第14条2項に基づき、「児童に対しその発達しつつある能力に適合する方法」によるよう指導せよ。

2 解散請求
文部科学大臣は、旧統一協会に対し、宗教法人法第78条の2に定める報告質問権を行使するとともに、同法第81条1項に基づき解散命令を請求されたい。

3 カルト対策
内閣総理大臣は、フランスなどカルト対策に先進的な諸外国の法制度・諸施策を参考に、基本法の制定も視野に入れた上で、被害抑止・救済のための法制度を整備し諸施策を講じられたい。
文部科学大臣は、旧統一協会による過去の諸々の被害(金銭被害、家庭破壊、労働力収奪、その他被害)に関し調査の上で、その結果を総括的な報告書をまとめられたい。

4 二世問題
厚生労働大臣、こども政策担当大臣及び各都道府県知事は、
いわゆる「二世」と呼ばれるこどもが抱える問題について児童虐待と位置づけて、適切なこども施策を策定・実施されたい。
その前提として、担当職員(特に児童相談所職員)に対し、専門家を招致して研修などを実施し、カルト団体の問題点及び「二世」が抱える問題点等についての知見を周知されたい。

5 学校における対策及び教育
文部科学大臣は、大学生、高校生、中学生がカルト団体から被害を受けることを防ぐため、また、学校等に在籍する二世について適切に対応するため、学校等の関係各所に対し、必要な措置を講じるよう通知されたい。
法務大臣は、こどもがカルト団体による被害を受けることを防ぐため、学校教育における法教育においてカルト団体及び二世問題を取り上げるよう関係各所に通知されたい。

6 サポート体制
内閣府特命担当大臣(消費者庁)は、カルト問題に苦しむ者やその家族へのサポートを行う宗教者や社会学者、心理学者ないしカウンセラーに対し、持続的、効果的な活動が可能となるようなあらゆる支援をされたい。