摂理は宗教的奴隷 鄭明析からの性的被害を訴える声 今年になってからも

摂理の元最高幹部、金敬天(キム・ギョンチョン)氏。現在は牧師になって救済活動に取り組んでいる。

摂理(せつり)。国内ではあまり聞き慣れない団体かもしれない。韓国発祥のキリスト教系の新興宗教で統一教会を脱会した鄭明析(チョン・ミョンソク)が1979年に設立し、学生を中心に拡大した新興宗教だ。韓国では「JMS」と呼ばれ、国内は「キリスト教福音宣教会」の名称で活動。内部では、密かに教祖を「再臨のキリスト」と教え、キリストである鄭氏を喜ばせるために若い女性信者を上納する悍(おぞ)ましい行為を長年にわたり行ってきた。被害者の告発によって実態が露わになった。

教祖は韓国での女性信者への強姦容疑で指名手配され、2007年5月に逃亡先の中国で身柄を拘束された。逃亡中も各国の女性信者を潜伏先に呼び寄せては性的暴行を繰り返したという。その後、韓国に身柄を送還され逮捕。2009年4月に懲役10年の刑が確定。2018年2月に刑期を終え出所した。

日本でも大きく取り上げられた。

鄭は1945年生まれ。1975年、30歳の時に統一教会(世界平和統一家庭連合)に入信し、2年後に脱会している。専門家によると「鄭の統一教会活動期間は短いが高いポジションに就いていたようだ」という。摂理の経典である30講論は統一教会で学んだ原理講論を基に作ったといわれる。鄭は多くの女性問題を起こしているが結婚はしていない。摂理では長年、信者の結婚を禁じていた。教祖が独身だからという理由だ。ところが、1990年、副総裁のアン・グヒョン氏が結婚したことをきっかけに信者同士の結婚を解禁している。ここでも統一教会同様の合同結婚式を行うがその規模は小さい。この鄭氏も韓国に40人いるという自称「再臨のキリスト」の一人として勢力を拡大している。このような事件を起こしながら依然、信者は増え続けている。日本国内に4千人いるとされる摂理は宗教法人格を取得し、表向きには正統なキリスト教会を装っている。外見から実態を判断しにくく、名称を頻繁に変える点も他の異端・カルトと類似している。韓国の主要教団は摂理(キリスト教福音宣教会)に対し教理上の異端、反キリスト教的異端(キリスト教ではない)と総会決議を下している。

未だ勢力が衰えない摂理につい韓国で鄭明析の右腕として29年間仕えた元最高幹部、金敬天(キム・ギョンチョン)氏が「これ以上、日本でも被害拡大してほしくない」と本紙の電話インタビューで思いを語ってくれた。金氏は摂理の元副総裁で神学校校長を務めた人物だ。21歳で入信し50歳を迎えた2009年に脱会した。脱会後は摂理の実態を一人でも多くの人に知らせるために各地で講演をし、入信した信者の救出や脱会した元信者のカウンセリングに取り組んでいる。以下は10月8日に行われた金氏とのインタビューである。

-摂理という宗教はなぜ危険なのでしょうか?

キム まず、この宗教は偽物だということです。教祖である鄭明析(チョン・ミョンソク)は自分が再臨のキリストになりすましてその栄光と権利を利用しています。彼はあらゆるものを手に入れ豪華な暮らしをしているのです。摂理に入信すると正常な社会生活が送れなくなります。まさに宗教的奴隷というのでしょうか。家庭が破壊され、個人の人格も壊されてしまいます。

-どのように勧誘(伝道)するのでしょうか?

キム キリスト教色を表に出さず若者が興味を持ちやすい「文化的なアプローチ」で勧誘するよう強化しています。スポーツサークルなど多様化を図っています。

-入信すると信者に対する経済的な搾取はあるのでしょうか?

キム もちろん、あります。「再臨のキリスト」鄭明析は女性信者に性的暴行を行った罪で指名手配され逃亡先の中国でも性欲を満たすために若い信者を中国入りさせていました。その後、逮捕され刑務所に送られたのです。彼は2018年2月に刑期を終え出所しました。自由の身となった鄭氏を喜ばせるために、また組織を一層強化するために組織は血眼になって不動産(土地、建物)購入を行っています。教祖の期待に応えるために地域ごとに競わせて多額の献金を強要しているのです。

-内部ではどのように鄭明析を再臨のキリストだと教えるのでしょうか?

まず、教祖である鄭明析の肉体にイエスの霊が入って来たと教えます。その教えを信じると「もう聖書は必要ない。鄭氏が(神から)直接啓示を受けているからだ」と教えられるのです。以前は30講論という聖書講義を学びましたが、今は20講論に変更しました。

-性犯罪で刑務所暮らしをした教祖は今も女性信者に性的暴行を加えているのでしょうか?

キム はい。今年に入っても鄭明析からの性的被害を訴える脱会者の証言が続いています。

-この組織は、脱会した元信者や教祖を批判する人間をどう扱うのでしょうか?

鄭明析の指示のもと組織は、報復攻撃を行うことがあります。名誉棄損などの法的訴訟をすぐに起こしてきます。

-日本でも活発に活動をしています。日本人に向けてメッセージをお願いします。

摂理の教祖である鄭明析は、韓国中に溢れている偽キリスト(メシヤ)の一人に過ぎないということです。日本においても鄭明析の実態をよく知り、これ以上、詐欺師、鄭明析に騙されないで下さい。健全な家庭、健全な社会を営むことを心から願います。

 

日本ではキリスト教福音宣教会という名で活動する摂理。指導者の性犯罪歴を一切報じていない。また団体として教祖は無実であるという立場を主張している。(摂理の公式サイト引用)