2020年9月14日 現代宗教

韓国主要教団から異端・カルト規定を受けている教団によるボランティア活動が活発化している。人材派遣、無料で物資配布、海外ボランティアまで幅広い。健全なキリスト教を標榜した善行をPRしているのだ。しかし、異端・カルトグループのボランティア活動についてその純粋性を考えると疑問に思える点がいくつもみられる。彼らは指導者のイメージアップを図り、存在そのものが健全で反社会的ではないことを社会に示そうとしている。例えば、新型コロナウイルス拡散事件を起こした新天地が突如、血漿を提供しようと集団献血キャンペーンを実施した。このようにカルト的体質を持つ内部の姿と、社会に貢献しようとする外部の姿の二面性をうかがわせた。異端・カルト教団のボランティア活動とその目的を団体別にまとめた。

真冬に除雪作業を行なう新天地信者によるボランティアチーム(出典:「チュンド日報」)

新天地

新天地は地域貢献型のボランティアに取り組み信頼を得て信者獲得を行なう。「新天地では地域別にボランティアチームを構成し、善良な人たちだというイメージ作りに徹しました。そして信者を獲得する伝道につなげるのです」。こう語るのは某脱会者。実際に無料理容サー-ビスや環境浄化など多岐にわたり取り組んでいる。

 

東亜日報で報道された神様の教会奉仕活動の記事

神様の教会

期限付きの終末信仰、教団による離婚指示、中絶指示など多くの問題を起こしている「神様の教会」もボランティア活動に取り組んでいる。反社会的な問題で厳しい批判の目に晒されている神様の教会にとって、健全性を誇示する最短の道は地域貢献しかなかったようだ。教団側が活動実績をPRして政府機関から顕彰され、メディアと取引して広告記事を掲載したことがある。昨年は神様の教会が12億ウォン(約1億2千万円)を投じて「東亜日報」に広告料を払ったことが明らかになった。

 

パク・オクス氏が講演するバイブル・クルセードをボランティア活動中にPRするグッドニュース海外奉仕団の学生信者たち

グッドニュース宣教会

グッドニュース宣教会は特に「海外」を意識した活動に取り組んでいる。海外医療ボランティアとして東南アジアを中心に進出中だ。他にも教団傘下の国際青少年連合(IYF)が「グッドニュース海外ボランティア団」を結成し、各大学の学生に参加を呼びかけている。公式には宗教とは関係ない一般のボランティア団体だと主張しているが、参加者の大半はパク・オクス氏が率いるグッドニュース宣教会の信者たちだ。それも若者が中心である。このプログラムにも問題がある。講習会で教団代表のパク・オクス氏の聖書セミナーも盛り込まれているからだ。グッドニュース海外ボランティア団に参加した学生から「宗教性がうかがえる」と問題提起された際、同宣教会が暴力的な対応をし、議論になったことがある。

壁画アートを体験できる地域貢献型の摂理のボランティア「ハヌル壁画奉仕団」

キリスト教福音宣教会(CGM)

キリスト教福音宣教会、通称摂理は「ハヌル(天)壁画奉仕団」を運営している。団体名からわかるように壁画を描くボランティアで町の景観をよくすることを目的だとしている。摂理脱会者は「この団体に多くの学生が出入りしています。ハヌル壁画奉仕団で壁画アートを習得することで美大生は特にメリットを感じるようです。レポート提出などで役立つからでしょう」。問題は摂理がボランティアを名目に交流を深めた学生たちに聖書勉強を実施している点だ。摂理の聖書勉強(バイブルスタディ)は教祖鄭明析(チョン・ミョンソク)氏を再臨のメシアだと導くものだ。脱会者も「この団体に関わって結果的に摂理に入信した学生は多いです」と注意を呼びかけている。

 

江原道横城(フェソン)で集団生活する全能神教会信徒たちが農作業を手伝う様子(出典:「KNSニュース通信」)

全能神教会

全能神教会は中国から入り込んだカルトだ。過去に強引な勧誘を拒否した女性を撲殺する事件を起こしている、危険な側面をもつグループだ。中国政府が社会治安を目的に邪教(カルト)撲滅運動を行なう中、全能神は韓国などに渡り勢力を拡大している。彼らは信教の自由が認められる国を好んで活動している。韓国では現在、ソウル九老(クノ)、江原道フェンソン、忠清北道報恩(チュンチョンブクド・ポウン)とクェサンなどの地域で信者の集団生活が確認されている。彼らも農村地域でボランティア活動を始めた。住民と交流を深めようとしている。しかし、全能神に対する社会的評価が低いせいかボランティア活動は停滞。主だった活動は確認できていない。

異端・カルト教団が行なうボランティア活動は大半が予めターゲットを絞って活動していることがわかる。社会的に評価を得やすいボランティア、社会貢献を最大限に利用して、彼らの指導者にまつわるスキャンダルを隠し、問題をあやふやにしようとする。なにより「異端性」を隠すことが目的だ。それらしい名前で活動する彼らだが、協力する側も十分に相手を確認し対応する必要が求められる。

これ以上、彼らに騙されてはいけない。

 

この記事は提携メディアである韓国「月刊現代宗教」日本語に訳したものです。記事、写真の無断使用を禁じます。