主要教団異端・カルト対策を強化、教団主題のセミナーを開く

現代宗教2021年6月1日号

韓国最大の保守プロテスタント教団「大韓イエス教長老会合同総会」(総会長=ソ・ガンソク牧師)がサラン(愛)第一教会チョン・グァンフン牧師の神学的異端性について再調査を開始したことがわかった。チョン牧師は韓国基督教総連合会(韓基総=CCK)代表会長任期中の2019年10月22日、保守系キリスト教集会で「動くなよ、神。私に反抗するなら神は私に殺されるぞ」と牧師とは思えない神聖冒涜発言をし、4月のイースター礼拝でも「文在寅(ムン・ジェイン)大統領を売りさばいてしまえ」と暴言を吐くなど問題ある言動の多さを指摘。改めて発言の深刻さを確認した上で再調査を決定したという。この問題発言は、チョン氏が自分こそ韓国教会に立てられた指導者だとし、反共を掲げる政治的パフォーマンスだったと自ら認めている。ただ、当時の参加者は極右系の政治団体やそれに強く影響される牧師たちで「自分は神さえ殺せる」と発言したことで大問題に発展した。主要教団から大反発を受けたものの、政治色の強い牧師はこの発言に意見しなかったことも問題視された。

サラン(愛)第一教会担任牧師、チョン・グァンフン氏(出典:CBSノーカットニュース)

合同総会理事会は最近になって会合を開き、韓国教会のイメージに傷をつけたチョン牧師に対して断固とした厳しい姿勢で調査にのぞむことを明らかにした。CBS「ノーカットニュース」によると、合同総会理事会は異端似非(カルト)対策委員会に対し、政治的な立場、感情を一切排除してチョン・グァンフン牧師の信仰と神学について徹底的に調査するよう要請したという。合同派は2020年に開かれた総会で「チョン・グァンフン牧師が公開の場で自身の言動を悔い改めるまでは、チョン牧師と関係のあるすべての集会に交流、参加自制を促す」教団の見解をまとめたばかり。委員会が調査報告をまとめるのは、今年の夏以降と思われ、臨時総会を経て秋の定期総会で見解が述べられる見通しだ。

基督教大韓聖潔教会(韓国ホーリネス)もセミナーを開催

基督教大韓聖潔教会(基聖(キソン)=韓国ホーリネス)異端似非対策委員会(委員長:イム・ソンウン牧師)が4月12日から13日まで釜山大連合教会(基聖所属)を会場に「異端・カルト予防のための対策セミナー」を開催した。2008年に創刊した「キリスト教ヘラルド紙」によると、対策セミナーは2部に分れて行なわれたという。

基督教大韓聖潔教会異端似非対策委員会が開催した「異端カルト予防のための対策セミナー」(提供:同教団教育局)

初日の午後には、同委員会のハン・ソンホ牧師が「聖潔教会が特に注目し警戒するのは新天地イエス教だ。その実態について語る」として、新天地の最新動向をまとめた内部資料を配付した。2日目の午前には釜山長老神学大学教授、卓チイル教授(現代宗教理事長兼編集長)が「新型コロナと異端、カルト問題、そして韓国教会の戦略的対応」について講義した。委員らは「コロナをきっかけに爆発的に増加したカルト宗教がオンラインで布教活動している。深刻に受け止める必要がある」とし、「カルト宗教特有の勧誘から次世代と教会関係者を守るためにさらに力を注ぐ時期にきている」と主張した。

大韓イエス教長老会高神総会による異端対策セミナー開催

大韓イエス教長老会高神(コシン)総会異端対策委員会(委員長=チョ・ワンチョル牧師)もセミナーを開催した。5月10日から11日にかけ「正しい教理と異端対策」というテーマで慶州(キョンジュ)コロンホテルを会場に行なわれた。また、異端相談専門家育成に向けたプログラムも始まった。

セミナーには李ソンホ教授(高麗神学大学院)やソ・ヨングク牧師(高神総会異端対策研究所所長・韓国基督教異端相談所カンブク相談所所長)、クォン・ギヒョン牧師(ロデム長老教会担任牧師)が出席した。特に米国から流入した新使徒運動の実態調査と問題が取上げられ、他にも正しい教理に対する再確認、コロナ時代の教会の在り方と教会秩序を乱す勢力について中心的に語られた。主要教団が異端などと警戒するグループについても「判断基準」とする概論を整理した上で、正しく理解されていない新使徒運動の問題は今後も教団内で情報共有する必要性があるとした。

大韓イエス教長老会高神異端対策セミナー「異端相談専門家教育」参加者たち(提供:同教団委員会)

異端対策委員長のチョ牧師は「異端に対する概論を改めて再確認できた。異端の歴史的ルーツ、つながり、また主要教団が規定するグループの内容を整理できた。コロナが終息してから韓国教会がどのように立ち上がり、本来の姿を取り戻せるか考えるよいきっかけになったと思う」とし、「他教団の異端相談所関係者、専門家が参加し今後、異端規定や再調査について見直せる機会となった」とコメントした。

大韓イエス教長老会統合総会 異端似非対策セミナーを開催

大韓イエス教長老会統合総会の異端似非委員会(委員長・シム・サンヒョ牧師)はカルト対策セミナーを5月25日に韓国教会100周年記念館1階小講堂(グレースホール)を会場に開催した。セミナーは他教団(大韓イエス教長老会所属)から担当者1名ずつの参加に制限し、著名な教授や専門家を招き行なわれた。現時点で内容については非公開とされている模様。

大韓イエス教長老会統合総会による異端似非対策セミナー(提供・統合総会 写真は2018年のもの)

シム牧師は「今回はコロナ対策で参加人数を大幅に制限した。内容は異端セミナーとイスラム問題だが、これは異なる問題として別々に開催する」とし、「今までは地域ごとにセミナーを開催したが今回は参加型を1度だけ開催し、内容は大韓イエス教長老会の公式サイトから誰でも視聴できるように準備するつもりだ」と述べた。委員会は、次回の会合で異端問題を専門的に扱うカウンセラー育成プログラムについて話し合うものとみられ、また異端規定や再調査に向けた具体的な議論も行なわれる予定だという。