株式会社クリスチャントゥデイ(CT)が本紙の根田祥一編集顧問に名誉毀損で110万円の損害賠償を求めた裁判の控訴審判決を受け、カトリック中央協議会と日本基督教団は12月20日、CTの矢田喬大社長に公開質問状を送付した。
11月13日に東京高裁が言い渡した判決では、一審を上回る66万円の賠償が命じられた一方、CTが否定していたダビデ張こと張在亨(ジャン・ジェヒョン)氏やその組織との関係、張牧師を「再臨のキリスト」と信じた元CTスタッフの証言などが事実認定された。正統キリスト教では異端とされる教義が教えられていたことや、無償労働及び借財の強要、韓国人宣教師の不法入国に加担したことなどの認定事実について、「キリスト教メディア」を標榜するのであれば見過ごしにできないとして、CT社の見解を説明するよう求めている。
カトリック中央協議会と日本基督教団は、ともに「カルト問題キリスト教連絡会」のメンバー。同連絡会は、CT・根田裁判の一審判決後の6月と、二審判決後の11月に報告会を開催した。11月の報告会参加者らで採択した「高裁判決報告会 声明」では、CTが「ダビデ『共同体』の一部であり、張在亨・ダビデ張牧師を再臨のキリストと信奉する団体の活動の一翼を担ってきたこと」を確認した。
クリスチャントゥデイvs根田裁判 東京高裁判決 認定を一部変更「峯野氏を騙し」不採用 「ダビデ牧師を再臨のキリストと教えられた」脱会者証言は維持
CT・根田裁判 高裁判決認定「一審と実質的に同等」報告会で確認 声明採択「『張牧師が再臨のキリスト』事実が明らかにされた以上、クリスチャントゥデイをキリスト教メディアと認められない」
これまでCTの疑惑をめぐっては、日本基督教団が2回の総会議長声明を、日本福音同盟(JEA)が3回の理事会見解を、また淀橋教会/峯野龍弘牧師が所属するウェスレアン・ホーリネス教団が特別調査委員会の調査報告に基づく教団委員会見解を発表し、それぞれ「CTなど張在亨牧師グループに対して、キリスト教として同一の線に立つことは出来ない」、「CTの取材を一切受けない」、「CT及び張在亨氏関連団体とは距離を置く」などの立場を明らかにしてきた。
https://www.kirishin.com/2018/01/27/10665/
https://www.kirishin.com/2018/12/18/21636/
https://www.kirishin.com/2020/07/08/43964/
このたびの公開質問状は7項目で、2025年1月8日までに文書で回答するよう求め、結果を公表するとしている。質問内容は以下のとおり。
公開質問状
*〈 〉内は判決文の引用
*原告/控訴人はクリスチャントゥデイ(CT)
1 貴社はこれまで、ダビデ張こと張在亨牧師との関係を否定する言動を繰り返してきました。高裁判決が認定した、張牧師及びその組織との関係についての次の事実について説明してください。
〈原告設立時の代表取締役であった高柳泉は、米国滞在中に、張牧師が学生らと聖書研究等を目的として設立した組織「アポストロス・キャンパス・ミニストリー」(ACM)に加わり、本邦に帰国した後は、東京都内に拠点を置く「東京ソフィア教会」において、伝道師として活動していた。東京ソフィア教会は、張牧師の活動を起源とする宗教組織「日本キリスト教長老教会」の下部組織であり、平成17年頃まで存続した。東京ソフィア教会の礼拝では、張牧師が、説教や按手(信奉者を牧師に任命する儀式)をしたことがあり、高柳のほか、原告が設立された当時の従業員には、東京ソフィア教会で張牧師の按手を受けた者がいた。〉(高裁判決6頁:地裁判決7頁を引用し一部加筆)
2 貴社はこれまで、東京ソフィア教会等において異端的な教義が教え込まれたことはないと主張してきました。高裁判決が、張牧師が再臨のキリストであると示唆されたとする証人らの供述は信用できるとして認定した、次の事実について説明してください。
〈B (注:証人、元CT記者)は、平成14年9月頃、北村と共に、同教会の宣教師から聖書講義を受けたところ、その講義においては、清められた者、従順な者が共同体(第3のイスラエル、新しいイスラエル)を作り、キリストの体となること、その共同体の完成はキリストの再臨であることが説かれ、その共同体の創始者がダビデ牧師と呼ばれていた張牧師であることが暗に示唆されていた。なお、北村は、上記の聖書講義等に関して、2002年9月付けノート及び2004年8月付けノートを作成していた。これらのノートには、「イスラエルの国=神の国」「新しいキリストの再臨」「神の国の再興」「新しいイスラエル」「第3のイスラエル」などの記載のほか、張牧師の誕生日に言及する部分がある。〉
〈他方、A(注:証人、元CT記者)は、平成15年頃、張牧師の関連組織である大阪府所在の教会を訪ね、伝道師等から、張牧師が再臨のキリストであることを示唆する講義を受けた。(略)上記で認定したノートの記載からうかがわれるとおり、東京ソフィア教会等の宣教師等は、正統派のキリスト教の教義から外れる内容を講義し、張牧師に関する言及もあったことを勘案すると、平成14年頃から平成15年頃にかけて、東京ソフィア教会等において宣教師等から講義を聞いた証人Bや証人Aが、張牧師が再臨のキリストであることが示唆されたとする供述は、信用できるというべきである。〉(高裁判決6~8頁)
3 地裁判決は〈原告の構成員は、その活動の便宜のため、峯野牧師に対し、張牧師が「再臨のキリスト」であるとの信仰を秘し、淀橋教会又はその所属団体の宗教上の理念に従順である態度を示して、峯野牧師にその旨信じさせていたということができ〉ると認定しました(地裁判決26頁)。それに対して高裁判決は、2人の証人が証言した事実の時期と、当該ブログ記事が記述した事実の時期が異なることから、後者の時期において〈張牧師の信奉者が淀橋教会に計画的に送り込まれていたことを認めるに足る的確な証拠はない〉として退けました。しかし高裁判決においても、次の事実認定は維持されていることについて説明してください。
- 平成14年頃から平成15年頃にかけて、東京ソフィア教会等の宣教師等の中には、BやAなど、のちに控訴人の活動に従事することになる者に対し、張牧師が再臨のキリストであると示唆する講義を行う者がいたこと、②B及びAは、平成16年ないし平成17年頃に東京ソフィア教会に通いつつ、異端信仰であることを疑われないように、淀橋教会の礼拝に通っていたこと、東京ソフィア教会の伝道師等であり、控訴人の代表者であった高柳は、控訴人の設立後、淀橋教会に通ったことがあること、控訴人の現在の代表者である矢田は、かつて東京ソフィア教会に属していたが、平成17年から淀橋教会に転籍し、同教会に通うようになったことが認められる。〉(高裁判決20~21頁)
4 上記3の高裁判決において〈控訴人の現在の代表者である矢田は、かつて東京ソフィア教会に属していたが、平成17年から淀橋教会に転籍し、同教会に通うようになったことが認められる〉と認定されていますが、次の質問にお答えください。
- 矢田氏は、現在まで淀橋教会の会員でありつつ、東京あいのひかり教会または東京ソフィア長老教会など日本オリベット・アッセンブリー教団関係の集会等の活動にも参加していますか?
- そうであれば、矢田氏は日本オリベット・アッセンブリー教団の信仰を今も堅持していると考えてよいですか?
5 貴社はこの訴訟において、従業員を無償で労働させたことはないと主張しました。高裁判決が、CTを含む関連組織は「使役」の名目の下に労働の対価を正当に支払わなかったなどと認定した、次の事実について説明してください。
〈控訴人が設立された平成15年から平成19年頃までの間、当時学生であった者を含む張牧師の信奉者が、宣教師らの要請に応じて「使役」の名目の下に控訴人を含む関連組織の活動に無償で従事し、活動の維持のため、寄付や借財を求められることがあり、控訴人を含む関連組織は、その資金調達を信奉者の寄付や借財に頼り、その事業活動に対して労働の対価を正当に支払わなかったものと認められる。そうすると、上記期間における控訴人を含む張牧師の「共同体」について、「法的なことはどうでもよい」とする点、「困れば借金をすればよい」との感覚であったとする点は、いずれも、その重要な部分において真実に合致するものというべきである。〉(高裁判決18頁)
6 貴社はこの訴訟において、上記5のような状況は事業が軌道に乗る前の設立当初の時期における事象であった旨を述べました。では、本邦キリスト教メディア随一とうたう月間ページビュー数にまで発展した現在、従業員に正当な労働の対価を支払っていることを、公租公課等の証拠をもって証明してください。
7 貴社は、韓国人宣教師の不正入国に便宜を図ったとの「ダビデ牧師と共同体を考える会」ブログの証言について、この訴訟において、「出入国管理法上、韓国人が会合を目的として入国する場合に控訴人が『嘘の保証書』を作る必要はなく、また、控訴人には国内外を含め支店や支社は存在しない」と主張しました。しかし高裁判決は、「原告は、平成19年6月、張牧師の宣教活動を行う宣教師に対し、開催場所を偽った会議の開催等を示す文書を交付し、本邦への入国及びその宣教活動の便宜を図った」事実を認定しました。このような出入国管理法に抵触する「キリスト教メディア」にあるまじき行為について、貴社の見解を求めます。
〈本件確認書上、「福岡支局」の連絡先が高柳とされていることをも勘案すると、平成19年6月当時、控訴人には福岡において事務所としての機能を有する場所はなく、「教会を即席のクリスチャントゥデイ支局に仕立て」たことが認められる。そして、本件確認書が会合の開催場所に関する偽りを記載するものである以上、仮にリ・ジヨンの入国が宣教活動を目的とするものでなかったとしても、出入国管理上、問題視され得るものといえる。〉(高裁判決12頁)
以上