本紙の根田祥一編集顧問が「ダビデ牧師と共同体を考える会」ブログに掲載された共同体の脱会者らの証言記事を、自身のフェイスブックなどSNS上で紹介した行為に対し、キリスト教メディアを自称する株式会社クリスチャントゥデイ(CT)が社会的評価を貶められたとして名誉毀損で損害賠償を求めた民事訴訟で126日、証人尋問が東京地方裁判所で行われた。共同体を脱会した2人の元CT記者と被告本人が証言した。2人ともブログに自分の体験を執筆していた。

12月6日東京地方裁判所で証人尋問に臨んだ被告の根田祥一本紙編集顧問

法廷では、この裁判で根田氏を支援する約30人の牧師・信徒、キリスト教メディア・出版関係者らが傍聴席で見守る中、ダビデ牧師こと張在亨氏から牧師に任じられCT記者としても使役したAさん、やはり張在亨氏から幹事(信徒リーダー)に任じられCT記者や共同体の内部メディア「ベレネット」、音楽宣教部門「ジュビリーミッション」で使役したBさんが、共同体の韓国人宣教師から伝道されて「ダビデ牧師が再臨のキリスト」と信じた体験などを証言した。共同体の脱会者が実名で証言するのは、韓国や米国などで前例があるが日本では初めて。

CTは、2004年に異端疑惑が提起されて以来、張在亨氏とも共同体とも関係ないとの主張を続けており、本訴訟でも張在亨氏および共同体と切り離してブログの当該箇所が名誉毀損表現に当たることだけを判断するよう求めている。それに対して被告側は、張氏が作った複数の企業、宣教団体、メディア、教会の集合を内部では「共同体」と呼んでおり、CTが共同体に連なる一つの機関であることを、山谷訴訟(後述)の事実認定などの証拠を挙げて主張している。

2人の証人はいずれも、それが事実であり共同体メンバーらの共通の認識であることを認めた。証人らによると、共同体の3つの部門(宣教使役、経済使役、文化使役)の中でCTは文化使役にあたる。その意味を問われると、「一般のキリスト教会と共同体をつなぐ働き」、「一般の教会から共同体が異端ではないかと疑われたときに共同体を守る役割と聞いた」と証言した。

被告は、原告が「名誉毀損」と指摘した箇所だけでなくブログ記事全体から、それらの内容はCTおよび共同体の中で行われてきた事実だと主張している。ブログ記事には「**幹事たちは新大久保にある淀橋教会にクリスチャントゥデイの運営を疑われないために籍を置いていた」「山谷牧師の弱点をいかに探し出し、ネット攻撃のメンバーと情報収集するメンバーの2体制でやり始めました」「山谷牧師と根田さんが共同体を中傷していることを世界中の共同体に共有して情報を撹乱させるための内部向けの資料です」などの記述がある。

救世軍の山谷真少佐は、ダビデ牧師を「再臨のキリスト」と信じるように誘導する共同体の教え「歴史講義」の講義録(通称Kノート)を入手したことからCTに異端の疑いを持つようになり、2006年ごろから自身のブログに疑惑を追及する記事を掲載するようになった。それに対してCT2008年、山谷氏に記事の削除と損害賠償を請求する民事訴訟を起こし、2013年に東京地裁で判決が出された。判決は原告が指摘したブログ記事の87か所中46か所は名誉毀損に当たるとして記事の削除を命じ、賠償請求額の約半額を認めた。しかし41か所は名誉毀損に当たらないか、真実・相当性が認められ阻却されるとして棄却された。それらの中に、「正統派ではない『キリストの来臨』に関する講義が平成14年当時、東京ソフィア教会で行われていた可能性がある」ことが事実認定されていた。

当時、根田氏が編集長を務めていたクリスチャン新聞は、この判決を「クリスチャントゥデイ裁判:名誉毀損引き分け」「東京地裁 謝罪請求は棄却」「『来臨キリスト』疑惑 真実・相当性を認定」の見出しで報じた。しかしCTは「クリスチャントゥデイの名誉を毀損 山谷真牧師に賠償命令」の見出しで、事実認定については何も報じなかった。

同訴訟で山谷氏側はCT関連団体の脱会者からのメール中に「再臨主がダビデ張であるとの教えがあった」旨が記載されていた書面を証拠として提出したが、判決は脱会者と名乗る人物が匿名で特定できないとして退けた。山谷氏は、この点を立証するには脱会者に実名で法廷証言をしてもらわなければならない、などと判断し控訴を断念した経緯がある。

今回の裁判で2人の脱会者が実名で証言したことで、共同体の隠された真実が明らかにされることに大きな意義がある、と根田氏は考えている。チチェ(肢体)と呼ばれるダビデ牧師を「来臨のキリスト」と信じさせられた信者らが、共同体の目的を隠すために「嘘も知恵」と教えられ、既成教会の牧師を騙して大きな教会に入り込んだこと、「神の国を建設するため」なら違法行為でもすること、CTほか使役では無給で働いたこと、本人の意思によらないダビデ牧師による「聖婚」など、「ダビデ牧師と共同体を考える会」ブログに記載されている内容が事実であることを、2人は証言した。

Aさんは尋問の最後に「(現役のチチェだった)当時はあたりまえと思っていたことを今ではあり得ないと思う。神の国のためだからと正当化して法を犯すようなことまでしてしまった。この裁判を通して振り返る機会が与えられ、悔い改めることができました」と語った。Bさんは「共同体の中にいる人たちを心配しています。本心では出たくても出られない人たちがいるのではないか。脱会を希望する人がいたら力になりたい」と語った。

被告本人尋問の反対尋問で「山谷訴訟で山谷さんは敗訴しましたね」と聞かれて根田氏は、「そうは思わない。C Tがそれまで隠し続けていた事実が認定されたことは大きな成果だった」と語った。主尋問の最後には「裁判に訴えれられたことを感謝している。司法の場で真実が明らかにされれば、半信半疑で迷っている人たちが本当のことを知ることができるから喜んでいます」と締め括った。

 

(証人は法廷では実名で証言しましたが、ネット上で中傷されることがあることを考慮して記事では匿名にしました。)
 
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