岡山で起きたタラッパン問題「タラッパンはまず心を奪っていく」

吉岡創牧師(異端カルト110番アドバイザー)

日本聖約キリスト教団 南輝・広江聖約キリスト教会牧師 吉岡創

1994年春、「タラッパンという韓国のキリスト教の団体について何か知っていますか」という相談を受けました。早速、韓国の異端問題に詳しい牧師に問い合わせてみると「異端です」との回答でした。すぐさま所属する団体の教職者会にて「危険な団体が岡山に入っている」との情報を共有しました。

初動はよかったと思います。しかし当時の聖約教団には「大したことはないだろう。大丈夫だ。」という雰囲気がありました。その存在を知りながら、十分な対応がおろそかになっておりました。タラッパンはその間に岡山の様々な教団教派の諸教会に対して秘密裏に行う集会を用い、静かにそして速やかに浸透していきました。聖約教団は岡山県内に15の教会があり、互いに親しく信徒間の交流も盛んでした。そのような横の関係を彼らは利用し、一時期には約10教会からタラッパンの集会に参加する人たちがいました。十数年後、結果として2人の牧師とその家族、そして1教会が分裂し20名を超す教会員が既存教会からタラッパンへと流れていきました。

これらの出来事を振り返り思うことは、聖約教団が静観している間にタラッパンはその影響力を着実に広げていったということです。信者となった牧師が言いました。「聖約の内4人の牧師がタラッパンになれば(教団が)ひっくり返る」と。彼らはそのような思いも抱きながら教団内外で活動を展開していったのです。

ではなぜ、正統な神学教育を受けた牧師でさえタラッパン信者となったのでしょうか。それはタラッパンがまず心を奪うからです。彼らは教会に潜入し、よき理解者、忠実な礼拝者そして献金者、熱心な信仰者そして奉仕者として近寄って来ます。何年もの時間を使って牧師と教会員の信頼を獲得します。教会内に確固たる足場を築いてから、徐々に集会やセミナーに人を招待します(交通費や参加費なども工面します)。牧師家族を支えます。精神的にも経済的にも支えます。牧師がセミナーに参加する頃には、すでに心を奪われているので、タラッパンの教えがすんなり入っていくのです。

信者となった牧師たちは人が変わったみたいに同じ主張を繰り返し、担当教会における礼拝や集会を軽視し、タラッパンの活動にすべてを注ぎます。あらゆることにルーズになり、本人は自覚していないようでしたが嘘が頻発します。またこれも自覚していないようでしたが、タラッパン以外の他の教会や信徒を見下すので、とても高慢になります。

熱心なことが正しいことではないという言葉は本当です。信者からこんな発言を聞きました。「タラッパンは愛が弱いが伝道に強い」「サタンが分かれば神様が分かる」、彼らは熱心にタラッパンがどんなに素晴らしい運動であるかを私に説明しようとしてそのように語りました。しかし聖書的には全く正反対です。「神様からいただくアガペーの愛が伝道の原動力です」「神様が分かれば内住してくださる聖霊によりサタンの働きが理解できるのです」、そう私が説明しても彼らには理解できないようでした。

「柳光洙牧師は正しく福音を語る人だ」「柳光洙牧師は現代の宗教改革者だ」と彼らは指導者を称賛し、他のキリスト教会を見下します。また自らをレムナント(残りの民)と自称し、自分たちは終末の時代に世界福音化のために残された特別な者であると位置づけます。その反面「私のタラッパンが正しい」と他の信者と競い合い、挙句の果ては内部で分裂しています。そういった出来事の背後に霊的に高慢な姿が見え隠れしています。

タラッパンを離れた被害者たちに教えの影響が残っていることがあります。被害者を受け入れる教会は根気強く正しい福音理解を語っていく必要があります。「罪(原罪)が理解できない」「聖霊がわからない」という教理上の問題や人間関係のゆえに傷ついた心を抱えている場合があります。そういった状況が、関係を絶った後の信仰生活に不信感や恐れといったものとして暗い影を投げかけることがあります。関わる人たちは時間をかけて対話し、ともに祈り、ともに聖書を読んで正しい理解を促すことが必要です。そのような中で被害者は癒され、回復していきます。かつて正統な教会において洗礼を受け、後にタラッパンに流れてしまった場合は聖書の教えを思い起こさせることによって早く立ち直るかもしれません。しかし、タラッパンの教理に基づいて洗礼を受けた人たちには、丁寧な福音理解の再提示が必要になるかもしれません。

私たちの経験が、この問題を理解する一助となれば幸いです。

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プロフィール

吉岡 創(よしおか・はじめ)

1970年、岡山県倉敷市生まれ

岡山操山高等学校(普通科)卒、東京基督教大学(神学部神学科)卒、岡山少年院教誨師、岡山鑑別所教誨師を歴任、現在は岡山刑務所教誨師

未来をあかるくする会おかやま 会長、YMCAせとうち 評議員、日本聖約キリスト教団 広江聖約キリスト教会、南輝聖約キリスト教会 主任牧師、同教団 責任役員、岡山市内キリスト教教職者連合会 顧問、岡山県宣教の集い 書記、岡山県宣教の集い・岡山キリスト災害支援室(岡キ災) 書記

家族は妻と子ども3人、趣味は釣りと包丁砥ぎ

日本聖約キリスト教団

スウェーデンの敬虔主義の中で生み出されたフリーチャーチ(国教会からの自由)です。聖書信仰とともに新生と聖化を重んじています。戦後、中国の文化大革命による宣教師追放により、スウェーデン宣教師が国外退去。次の宣教地として、帰路の船を横浜で降り、日本宣教へ。1年間東京で日本語を学び、その後、岡山へ。現在、岡山県内に15教会、現在に3教会を持ち、会員数は約1000人。また、岡山県瀬戸内市に「ユースセンターうしまど」というキャンプ場を持っています。また、信仰のルーツを同じくする日本聖契キリスト教団・同盟福音基督教会・日本福音自由教会協議会とともに日本自由福音教会連盟を形成、互いに交わりを保っています。