9月19日から4日間、岐阜市の長良川国際会議場で開かれた第7回日本伝道会議(JCE7)に、海外ゲストとして韓国福音主義協議会(KEF)からイム・ソクスン会長、イ・オッキ総務ら4人が出席、アジア歴訪中に日本に立ち寄ったトーマス・シルマッハー世界福音同盟(WEA)総主事を交えて日本福音同盟(JEA)関係者らと懇談した。
その中でシルマッハー総主事は、WEAはワールドオリベットアッセンブリー教団(WOA)創設者のダビデ張(張在亨=ジャン・ジェヒョン)氏と今年5月に断絶し、張氏が創設したオリベット大学ニューヨーク州ドーバーキャンパス内のエバンジェリカルセンターに置かれていた事務所を引き払ったことを明言した。WEAのIT委員会の要職に就いていたWOA関係者もすでに辞任したという。日本ではWOA日本支部である日本オリベットアッセンブリー教団のメンバーらがネットメディア「クリスチャントゥデイ」などを展開している。
ダビデ張氏は元統一協会幹部でありながら、そのことを隠して韓国基督教総連合会(CCK)に自らが総会長を務めていた大韓イエス教長老会合同福音を加入させ、CCKが加盟するWEAにオリベット大学の施設やスタッフを提供するなどしてWEAから感謝状を受け取り、シルマッハー氏の2代前の総主事ジェフ・タニクリフ氏のもとで2007年にWEA北米理事に就任した。しかし韓国、日本、香港、米国、オーストラリアなどで、張氏の統一協会前歴や、傘下組織「共同体」のメンバーらに自身をひそかに「来臨のキリスト」と信じさせているとの疑惑が報じられ、張氏が橋渡ししたWEA総会の韓国開催は中止となった。このためCCKは2012年に分裂、JEAは2013年にCCKとの宣教協力を解消した。
CCKを離脱した主要教団は韓国教会連合(CCIK)を設立。CCIKのソン・テソプ会長は当初、張在亨氏について批判的な姿勢を示していたが、その後擁護に転じた。このため主要教団はCCIKからも離脱し、新たに韓国教会総連合(UCCK)を結成した。韓国福音主義協議会(KEF)は韓国で最も歴史の長い福音派の組織で、CCKが設立される以前は韓国を代表するWEA加盟団体だった。しかしKEFは個人加盟のため、教団教派が加盟するCCKの結成に伴いCCKが韓国からのWEA加盟団体になった経緯がある。
JEAは2004年に張在亨氏の統一協会幹部前歴が発覚して以来、WEAに対して警鐘を鳴らし続けてきた。JEAはCCKとの宣教協力を解消した後、韓国との公式の交流が途絶えていたが、今回、CCK以前から交流がありJCE3に講師を迎えたこともあるKEFから代表団をJCE7に迎えた。KEF代表らは、張在亨氏との関係をはじめ異端・カルトとの断絶を明確にするかたちでUCCKへの統合を進めているという。
JEA国際渉外室長でアジア福音同盟(AEA)を代表してWEA国際理事を務めた植木英次氏は、2020年6月発行のJEAニュースで、2018年にオリベット大学などダビデ張氏関連組織が詐欺・資金洗浄などの罪でニューヨーク州マンハッタン検察に起訴されたことを受け(2020年4月ニューヨーク州最高裁で有罪判決が確定)、2019年WEAは張氏とのつながりを絶ったことを報告した。張氏が在籍した北米理事会は、WEAの規則に即して廃止されたという。オリベット大学内にあったWEAの事務所もその時点で外部に移転したが、その後2022年6月、再びオリベット大学ドーバーキャンパス内のエバンジェリカルセンターに戻っていた。
WEAは日本のプロテスタント初期宣教にも関わった英国のEvangelical Alliance(1846-1951)にルーツを持ち、1951年に各国の福音同盟が加盟する国際的福音派組織WEF(World Evangelical Fellowship)として発足した。WEAがオリベット(WOA)との関係を断絶すれば、現在143か国と9地域の福音同盟、100以上の準会員からなる世界最大の福音派組織が、その中枢に疑惑の人物と組織を受容していた事態は16年ぶりに正常化することになる。