統一協会(現・世界平和統一家庭連合)の田中富広会長が、1月11日夜、信者向けのオンライン式典で、「宗教迫害の絶頂を迎えていく2023年というふうに覚悟して挑戦していかないといけない」と発言していたことが、日テレNEWSが12日報じたニュースで分かった。5日には「被害者救済法」が施行されたばかり。にもかかわらず、被害解決へ向けて決意を示すこともなく、統一協会内部へ向けて「迫害への覚悟」を求めた会長の姿勢に、元信者や被害家族らは反発を強めている。
同報道によると、オンライン式典で田中会長は、「2023年は“2世圏”がこの家庭連合をけん引していくことができるかどうか、それを担っていく主役になれるかどうか、これを見極める大切な1年にならざるを得ないというふうに感じております」「48歳以下の“2世圏”を主軸とした大きなうねりを作っていきたい」と激励した。
さらに、教団が置かれている現状をふまえ、「この日本でキリスト教に対する宗教迫害、これが始まったとも言われる1623年、それからちょうど400年目です。そういう意味においては本当に、宗教迫害の絶頂を迎えていく2023年というふうに覚悟して挑戦していかないといけない」と述べ、「テレビで何か発言を聞いたり私たちを攻撃してくるような勢力と出会ったとしても、その向こうには必ず価値観があるし、思想があります」「価値観と価値観の闘いです」「人のために生きた方が、幸福感は深まる」とも発言したと伝えている。しかし、徳川家康がキリシタン禁教令を発令したのは1623年ではなく1612年。それにより翌1613年に江戸の鳥越で22人が殉教した。
田中会長の新年挨拶について、元2世信者らは日テレNEWSの取材に対し、「原因が自分たちにあることに対して、事実の確認など向き合う姿勢を見せず、一方的に『宗教迫害』と反発するばかりで、2世信者を盾にしたりという姿勢は残念」「こんなコメント出せるのか」と怒りの声を上げているという。
日テレNEWSの記事はこちら▼
反社会的な行動や偽装活動などの人権侵害、不法行為などへの批判に対し「宗教迫害だ」と訴えるのは、異端・カルトの常套句である。自分たちこそ迫害を受けている被害者であると問題をすり替え、批判されているカルト被害の事実から目をそらそうとする。統一協会をめぐっては長年、被害者家族らがキリスト教会の牧師などの助けを得て救出のために苦闘してきたが、それに対し統一協会は、「反牧(反対牧師)に拉致監禁されると鎖につながれて暴力を受ける」などと虚偽の脅しを交え、これは宗教迫害だという印象操作をするイメージ戦略をとってきた。
「自分たちは宗教迫害の被害者」という論法は、カルトが自分たちへの批判は不当であると世間にアピールするとともに、信者たちに対して、信仰に反対する家族や牧師、メディアはサタン側の敵だと思わせるマインドコントロールの一環でもある。牧師らの脱会カウンセリングによってマインドコントロールが解けた元統一協会信者は、「統一協会では、反牧がいかにひどいことをするかを教えられ、隙を見て逃げてくるように言われていました」と証言している。「宗教迫害」をキーワードにしたプロパガンダは、カルト宗団が内部向けに、信者たちに組織の外部を敵視するよう仕向け、結束を固めるための引き締め策でもあるのだ。