既成教会を巻き込みセミナーを企画。韓国では活動思わしくなく、日本でイベント売り込みが活発化、過去には創設者の運転手が殺人事件も

異端規定を受けている平康第一教会のイ・スンヒョン牧師。最近はフィリップという名前で救済史シリーズを率いている。(写真:韓国日報)

韓国主要キリスト教団が総会決議で異端規定した平康第一教会(代表牧師:イ・スンヒョン)が母体となって運営する“救済史シリーズ”のセミナーが既成教会を会場に依然実施されており、その実態を問題視する韓国メディアが「注意を促す」記事を掲載している。保守プロテスタントの教派で韓国で2番目に大きな教団、大韓イエス教長老会統合派は1991年に平康第一教会(旧声成教会)の創設者である故・朴潤植(パク・ユンシク)氏と大声(テソン)教会を異端規定した。同教会はその後、 “平康第一(ピョンガンチェイル)教会”に名称を変更、現在に至っている。

教祖の専属運転手が追及者を殺害

教会名変更の背後には下記の事件が大きく影響していると現代宗教は紹介している。その事件とは、1994年2月18日、韓国の老舗異端専門誌の創設者で異端カルト(新興宗教)研究者だった卓明煥(タク・ミョンファン)氏がパク氏(当時、大声教会)の運転手Bにより刺殺される事件が発生した。卓氏は、韓国を代表する新興宗教研究家で当時、パク氏の神学的異端性を厳しく調査し追及していた最中の出来事だった。この事件で卓氏を殺害したB氏は逮捕され懲役刑を言い渡されたが、パク氏や教会関係者は事件への関与を否定。今日まで一切の謝罪も行なわれていない。現代宗教側は、「パク氏を追及する過程でのテロとして運転手(当時容疑者)が殺害に及んだ。実行犯の背後に真の犯人はいる。責任追及を続ける」(キリスト教ポータルニュース2014年2月10日号)と述べている。事実、故卓氏は多くの異端カルト団体から暴力的な報復を受け続けていた。その後、大声教会は現在の平康第一教会に名称を変更した。

異端規定は、大韓イエス教長老会合同派が1996年第81回総会で「異端」、2005年第90回総会で「異端を再確認する」規定を下した。韓国メソジスト(基督教大韓監理会)は2014年第31回総会で鋭意注視(活動全般を監視する)と規定している。キリスト論(救い主としての)、堕落論、啓示論、創造論において明らかな異端性が認められている。今日まで異端解除された事実はない。

朴潤植(以下、パク氏)氏の異端的教理について統合派の研究資料(一部)は下記のとおりだ。

「パク・ユンシク氏はイエスが地上で死んだのは神の霊ではないからだと教える。エバとヘビが性的関係を結んで息子カインを生んだというパク氏の教理は、統一教会同様の性的モチーフを示している。パク氏は智異山(チリサン)で3年6ヵ月の間、祈って神から秘密の奥義を授かったという。パク氏の説教は主にこの山で受けたという啓示から成り、その奥義については明らかにしない。エデンの園は人間の心を示すという。パク氏が智異山で3年6ヵ月と7日間に受けた神の啓示は統一教会出身のピョン・チャンリン氏が書いた『聖書原理』から多くは盗用されたものである。」

このような研究結果を経て、異端規定を受けたことに対し、パク氏は生前に「名誉棄損である」とし、自分を異端、カルト決議した合同派の重鎮、教授らを訴えるために法的手段に出たことがある。法を通じて「異端性」を解除させようと考えたのだ。しかし、彼の思惑通りにはいかなかった。法廷においても敗訴したのだ。彼の思想は「統一教会の血分けの性的モチーフを掲げる人物である」とされ、法を介してもパク氏は「統一教会系異端、カルト」と事実認定された(事件番号 2007ナ57949 2006カ2320 2008モ6642、2007モ1220等、事実認定)。

この裁判所による認定は同教団を評価する上で非常に大きな指針となると言われている。韓国の異端カルト教団、人物は法的手段や実力行使で自分たちの正統性を誇示しようとする傾向が強い。

パク氏死去後、平康第一教会の後継者として任命されたイ・スンヒョン氏(堂会長、以下、イ氏)はすぐにパク氏の異端性と自分が率いる新しい教会形成を切り離し、異端解除を求める申請を2016年に統合派に提出した。翌年2017年10月には、韓国の名門神学校である総神大学(ソウル市)の買収疑惑が浮上。既成教会に神学的正統性を明白にする前に「財的」な力で自身の基盤を固めようとした姿勢に批判が殺到した。統合派の異端似非対策委員会がパク氏死去後のイ・スンヒョン体制を調査した結果、従来の“異端”規定を解除することは不可能とする報告書をまとめた。ただ、異端規定にはイ氏の名前は挙がっていない。それでも、異端規定された教会と活動の最高責任者であり、様々な面でその問題点を引き継いでいることは事実だ。

イ氏が問題視される根拠はいくつもある。2014年12月17日、パク氏が死去。教団の堂会長に就任した礼拝で次のように語っている。「我々はパク・ユンシク牧師の開かれた聖書の信仰とその言葉を中心に精神を継承し、神の救いを完成させるために、その日まで我々は礼拝と教え、宣教と奉仕に励む教会を目指す」と語った。この時点でパク氏の精神を引き継ぐことを宣言していた。その後、イ氏はパク氏の異端性と切り離すと公言しながら実質的には「引き継ぐ」姿勢を掲げ続けた。

イ氏は異端規定を受けたパク氏の著著『救済史』を手放すことはなかった。むしろ、教団が母体となり救済史シリーズを基盤として精力的に活動を続けている。イ氏は救済史シリーズの運営サイトで「我々は最後までパク・ユンシク牧師の言葉を忠実に守り抜かなければならない。我々は名誉(パク氏)を守らなければならない」と宣言している。この教団においてパク氏を超える思想はなく、その名誉を守るための活動“救済史シリーズ”は韓国にとどまらず、日本、アジアまで徐々に広がり始めているのだ。

最大の問題点は救済史シリーズの母体がどのような教団であるのか、その点を曖昧にしながら既成教会にイベント開催を売り込んでいることだ。日本キリスト教異端相談所所長(とねりキリスト教会)で本紙共同代表の張清益(チャン・チョンイク)牧師によれば、「平康第一教会や救済史のイベントは韓国では異端規定されていることが知られており、彼が主張するほど定着していない」とし、「だから、海外に進出して既成教会側の協力者(出版社、団体)を巻き込み実態を明かさずに活動しようとする」という。イ氏は本名を伏せ、最近はイ・フィリップ、または“フィリップ牧師”の名前で各国を巡回している。

日本では一般社団法人救済史宣教センター(埼玉県さいたま市)という団体を設立し、キリスト教出版社イーグレープが救済史シリーズの出版元として協力。各地のセミナーも後援している。同社は、救済史の著者パク氏の異端規定、問題点は把握した上で関係を続けており、一部から批判の声があがっている。

現代宗教は次のように注意を促している。「依然として、イ氏は『異端(パク氏)と関係を切る』と宣言しながら、結局は異端規定されたパク氏の「核」である著書“救済史シリーズ”を広めている。韓国の主要教団は同教団が正常化することを願っている。それは長期的に多くの変化と更生を経て最も素直なかたちで異端規定が解除されることが望ましい。彼らの活動は十分に警戒するとともにセミナーに協力しないよう注意するべきだ」。

 

この記事は本紙提携先の韓国、現代宗教6月29日号から日本の読者向けに一部編集して掲載しています。