教祖に性犯罪歴 日本国内でも警戒レベルが高まる摂理が韓国の事件を伏せて行政に食い込んでいく。抑止力となる地域教会に期待

摂理が2月29日(土曜)、清瀬けやきホール(東京都清瀬市)で演劇公演「愛と平和だ」を上演することがわかった。

摂理の教祖である鄭明析(以下、チョン・ミョンソク)氏は1979年頃に統一教会(世界平和統一家庭連合)の幹部信者だった。その後、組織を抜けてから設立した宗教団体である。韓国の主要キリスト教団はチョン・ミョンソク氏をキリスト教の教えから逸脱する“異端”であり、”反キリスト教”と総会で決議規定している。国内外でも引き起こした事件からカルトとして問題視されるグループだ。

チョン氏は統一教会を脱退後、1982年頃に同団体にそっくりな組織を掲載し、原理講論によく似た聖書講義を教え込ませ、信者に再臨のメシア(キリスト)と信じさせた。他の異端、カルト同様にキャンパス伝道に力を入れ、様々なサークルを立ち上げて精力的に勧誘を行なっている。入信後、組織に深入りした信者が自宅に戻らなくなり、所在不明になる問題は韓国では古くから取上げられていた。

チョン氏は「長身でモデル体型の女性を好む」とされ、常緑樹というセクションを秘密裏に立ち上げ女性信者を韓国本部で性的暴行を加えるなどの事件が発覚。韓国のマスコミが被害者証言に基づき大きく報じるとチョン氏は国外に逃亡した。その間も女性信者の選別を幹部に指揮していたことが後に明らかになった。チョン氏は逃亡先の中国北京で逮捕され、韓国に身柄が送検された。2009年に韓国最高裁で「強姦及び準強姦罪」の判決が下り懲役10年の実刑が確定した。2018年2月、チョン氏は韓国で刑期を終え出所。

団体は無罪を主張し、信者は熱心に「囚われの身」のチョン氏をキリストと崇め、祈りを捧げるなど有罪判決は迫害だと訴えかけていた。チョン氏は性的異常者として認定され「性犯罪者リスト」に登録。2025年まで居場所特定できるGPS機能付きの足輪が装着されることになった。現在も装着していると思われる。団体側はこのような状況も「キリストの十字架」「勝利の印」といって、むしろチョン氏の神格化につながっているようだ。このような報道は韓国の専門誌月刊現代宗教、教会と信仰、ニュースアンドジョイ、キリスト教ポータルニュースが今も取材を続けている。

韓国側の報道では、入信後に統一教会によく似た秘密の合同結婚式の参加や組織を守るために「嘘を付く」「金銭問題を起こす」、そこに没頭し社会から離脱していくなどの多くの問題が取上げられている。親はサタンだとして出家に似た行為を強要されているのではないかと信者の両親が戻らない子どもに涙するドキュメンタリー番組が韓国で大きく報じられた。

チョン氏出所後の摂理は国内ではキリスト教福音宣教会の団体名で活動している。本部は東京都千代田区のガリラヤ教会とされているが周辺には10教会が存在し八王子でも活発に活動していることが確認された。国内は約35教会が実在するが多くは所在地、看板まで伏せている。本紙はほとんどの教会を確認している。全体の3割が日本人牧師だ。彼らは決して「摂理」とは名乗らず、教会も単立のように装い、なかには一教会が宗教法人を取得しているケースもあることから表向きには性犯罪歴があるチョン氏の団体の一派だとわかりにくい。公式サイトをみても社会貢献やイベント活動に取り組む様子が取上げられ、韓国で起きた事件をにおわす情報がなにひとつ紹介されていない。

チョン氏(摂理)については、本紙顧問弁護士の渡辺博氏を中心とした全国霊感商法対策弁護士連絡会が2018年2月19日に声明を発表。日本脱カルト協会も声明と喚起を公表している。勧誘活動における人権侵害問題を広く呼びかけたかたちだ。韓国で摂理の最高幹部だった元信者の金敬天(キム・ギョンチョン)氏は、「出所後の摂理でも性的被害の情報が入っている」と講演会で述べている。

今回、摂理(キリスト教福音宣教会)が主催の演劇は戦争と平和を訴える内容だ。最近のカルトは行政とタイアップして「信頼」を得てそれを踏み台に次へ次へと彼らは勢力を拡大させていく傾向が強い。東京都清瀬市は周辺に多くのキリスト教会が存在し、地域活動などで高い評価を得ているという。行政側はその実績から今回の摂理も問題がないと判断した模様だ。ただ、社会的問題となり国内でも警戒が高まるグループ(異端、カルト規定されている)に会場を提供したとなると清瀬市に批判の目が向けられる可能性は否めない。今後、専門家やメディア、地域教会がそれぞれ「摂理」の実態と事件の詳細を市に示していく可能性がある。

来場者に勧誘活動が行なわれ、そこから組織拡大につながることは避けなければならない重要な課題だろう。