新興宗教“天上地天”(チョンサンジチョン)、家出する学生信者が多数 地元警察も注視。フリーメイソン・イルミナティ陰謀論を誇張、日本への進出にも警戒

横断幕には「終わりの時に最後の試練の時にあなたのそばにはイエス、メシア、神が肉体をもって来られていることを知っていますか」という文字が確認できる。脱会者から入手した貴重な内部写真だという。(写真:キリスト教ポータルニュース)

韓国キリスト教異端相談所協会(会長・陳用植牧師、以下、異端相談所)は2020年6月25日、YouTube上に配信する説教チャンネルを通じて急速に信者を獲得し始めている新興宗教「天上地天」(チョンサンジチョン)に関する注意報道資料を発表した。この発表を受け、韓国の主だったキリスト教諸教団、メディアは情報を共有し注意喚起を行なっている。

今回、異端相談所が指摘したのはまったく新しい形で宗教活動を行なう「ネットグループ」だ。「天上地天」と名乗り、自称30代の韓国人男性「kiery7」が代表と考えられている。本名はまだわかっていない。kiery7を名乗る人物は、みずからを「天上から地獄に対して最後の悔い改めの機会を与えるために来た」と主張し、「今日の牧師たち、神父(カトリック)は毒蛇のような輩で聖書がいうパリサイ人である」と極端な思想を発信している。教えには既成教会や家族への批判が目立つ。血縁を断つなど過激な発言も多い。

特に異端相談所は、「天上地天」の中心的説教について「聖書の教えを自分流に展開し説きながら自分が肉体をもって再臨した再臨主だと明かしている点。腐敗した世の中にあって自分は審判者であり、聖書に登場する人物(具体的にはキリストと言っている)として信じ、自分のところ(正確な場所は不明)に集まって従うように教えている点」を指摘。「この人物に影響を受けて女子大生が家出し戻っていないなど親たちによる通報が相次いでいる」も問題視した。

Kiery7という人物は、ネット上で危険な宗教的思想を広めていることは確実だ。釜山市海雲台区(プサンシ・ヘウンデグ)にあるマリンシティの高層マンションに女子学生を住まわせて合宿所として運営していることが分かった。大手メディア「News1」の報道によれば、「娘が戻らない、助けて欲しい」という相談が地元警察に多数寄せられているという。kiery7は親との血縁関係を否定する教えも強調しており、親を敵視する思想に傾倒し、信者が自宅に戻らなくなったとみている。

異端相談所は、「天上地天の教祖は30代とみられ、YouTubeやSNSを通じて教理を広め、若者を中心に影響力を持ち始めている」とし、「この人物はフリーメイソン・イルミナティ陰謀論と終末論を唱え、既成教会を強く批判しながら親との血縁を否定する奇妙な教理に立つ」と報じた。地元メディアは「本名はわかっていないが推定35才男性」と公表し、「実際に被害者が出ている。正しい情報を共有しなければならない」と述べている。一部メディアにはKiery7本人だという写真も公開されているが定かではない。

釜山のマンションには合宿と称して約20人の若者が出入りしており、天上地天の関係先と判明した模様だ。また、地元紙「釜山日報」も取材を進めているという。

異端相談所による注意喚起報告書が発表されると、キリスト教系メディア各紙が一斉にそれを報じ始めている。また汝矣島(ヨイド)純福音教会が運営するフルゴスペルニュースも異端相談所の報告書を受け、「注意喚起」として大きく記事を掲載している。

顔がみえない教祖は、これら報道にすぐに攻撃的な反応を示した。

6月24日付のYouTube「天上地天」は「親が意図的に(嫌がらせで)警察に自分の子を連れて行く」と「子どもが戻らない」などという通報に対し反論した。日本キリスト教異端相談所所長(とねりキリスト教会)で本紙共同代表の張清益(チャン・チョンイク)牧師は、「ネット上のグループに国境はない。影響を受けた者が日本語版の説教を配信すれば、日本人にも被害が及ぶ可能性がある」とコメントした。張清益牧師によれば「新天地の分派の可能性も疑われるが、どうやらそうではないようだ。まだはっきりしない」という。

異端カルトとして警戒されるグループはネットを通じた布教に精力的に取り組んでいる。注意しなければならない。